数学×アートで理解が深まる!生徒も興味津々の女子美流授業

女子美術大学付属高等学校・中学校
女子美術大学付属高等学校・中学校(以下、女子美)では、すべての教科でアートを取り入れた授業を展開しています。今回は、一般的には苦手とする人が多い数学に注目。数学科教諭の髙城史子先生と山田大祐先生にインタビューを行い、「数学×アート」の授業に迫ります。

数学の“美しさ”を知る魅力的な授業の数々

まずは、数学を教える際に心がけていることや具体的な授業内容について、髙城先生と山田先生にうかがいました。

髙城史子先生
髙城史子先生。「私自身がウキウキしながら教えることで、数学の楽しさを伝えたいです」
山田大祐先生
山田大祐先生。「“美しさ”という点で、美術と数学は共通しています」

数学の授業を行ううえで、お二人が大切にされていることをお聞かせください。

髙城先生 「身近な形には、美しい数式が隠れている」ということを常に伝えています。たとえば、ものを投げたときの軌跡は放物線だったり、富士山の傾斜は対数関数だったり。よく知る形と数式の密接な関係を知ることで、数学をもっと身近に感じてもらいたいと考えています。

山田先生 女子美生は美しいものに興味津々なので、曲線や数式の美しさなど、視覚的な情報を意識的に見せています。授業のスライドにも、グラフができる過程に動きを付けるなど仕掛けをたくさん散りばめています。

具体的には、どのような授業を行っていますか。

髙城先生 数学の美しさを肌で感じてほしいと思っているため、五感を使って数学的な考え方を身につける授業を行っています。実際の授業例をいくつかご紹介します。

中学1年 ユニット折り紙で正多面体などを作ろう

平面図形・空間図形の準備体操として、たくさんの折り紙を同じ形に折り、それぞれを差し込んで一つの立体を作ります。作る過程では正多面体の特徴について理解が深まり、出来上がった作品は振り返りレポートと一緒に展示することで、友達の作品からも多くを学ぶことができます。

ユニット折り紙
「好きなものを作ってきて」と言われただけでも、生徒たちは想像以上の作品を作り上げてきます
スピーチ
授業では完成披露スピーチを開催。生徒たちが作るユニット折り紙は、こんなにも多くの折り紙で作られています
友達の作品を鑑賞
友達の作品をじっくり鑑賞する生徒たち。感想レポートには、工夫した点や苦労した点が書かれています

中学1年 条件6つclearせよ!点対称な模様のデザイン

点対称への理解をより深めるために、決められた条件を守りながら点対称の模様をデザインします。将来、仕事としてものづくりをする際はさまざまな条件を守る必要があるため、その練習としても有意義です。

難しい条件を考慮して作図
「同じ色の図形は重ならないように配置する」「3つの色が重なる部分があるように配置する」など、難しい条件を考慮して作図します
点対称な模様のデザイン
条件が合っておらずやり直しになった生徒もいたものの、それを含めて楽しんで取り組んでいたそうです

中学2年 対称図形の美を見つけよう

折りたたんだ紙を切って模様を作る「切り紙」は、完成図を想像しながら切ることで、数学的な考え方が養われます。今年は台紙に貼り付けて作品を作り、女子美祭のお土産として展示したところ、中2生全員分の作品を受験生や来場者にプレゼントできたそうです。

対称図形の美をみつけよう!
「今頃はきっと、受験生の部屋に飾ってあることでしょう」と髙城先生

中学3年 折り紙でピタゴラスの定理を導こう

「ピタゴラスツリー」と呼ばれる絵柄は、どの色も同じ面積であることがピタゴラスの定理によって証明できます。その理由を考え、ピタゴラスの定理をより深く理解してもらう授業です。直角三角形に切った折り紙を4枚ずつ生徒に渡し、上手く動かして作った正方形から、ピタゴラスの定理を導き出します。

ピタゴラスツリー
ピタゴラスツリーは、まさに数学的アート。「素敵でしょ!」と感動を伝える髙城先生
ピタゴラスツリー②
大小2枚の折り紙を持ち寄り、クラスメイトと協力してピタゴラスツリーを作ります。髙城先生もピタゴラスツリーの枝が繁っていくのを見守ります

数学×アートの授業を通して感じた生徒の成長をお聞かせください。

山田先生 卒業制作の際に、「絵画の中に美しい楕円を描きたいので、描き方を教えてほしい」「立体作品の構造計算に活かすため、サインやコサインの勉強をし直したい」と聞きに来る生徒がいて驚きました。美術にも数学を活かしてくれているのだと感動しました。

髙城先生 授業内で頻繁に小テストを行うのですが、生徒たち自身で毎回の小テストをファイルにまとめて得点表を作っています。満点が並ぶことを目標に取り組むことで、数学が苦手な生徒も次第に満点が取れるようになってきました。

折り紙同好会
中学1年次の多面体の授業がきっかけで誕生した「折り紙同好会」は、20年の歴史があります。女子美祭では、1000個のバラを折ってドレスにしました!

先生が語る!女子美で過ごす6年間で身につく力

続いて、お二人から見た女子美生の魅力や、6年間の成長についてうかがいました。

髙城先生と山田先生が感じる、女子美生の魅力を教えてください。

髙城先生 友達同士、お互いに尊敬し合っているところが最大の魅力です。女子美生にとって、自分の作品は命を削る想いで創った大事なもの。それは友達も同じだと分かっているので、自分とは異なる友達の作品や個性を認め合い、尊敬する気持ちを全員が持っているのです。

髙城先生
「机上の理論を、手を使ってすぐに形にして実感する、それが女子美生。たとえば、クルクル巻いた紙をカッターで斜めにカットして『先生! サインカーブできたよ!』と、ニコニコ話しかけてくるんです。そんな生徒たちのことをいつも尊敬しています」と髙城先生

山田先生 女子美生は皆、内に秘めた情熱を持っているなと感じます。一見もの静かな印象の生徒でも、授業内のプレゼンテーションでは情熱的に表現してくれることも。どの生徒も「表現したい」という思いが強く、私たち教員も日々圧倒されています。

山田先生
「分からないことがあっても、生徒たちは持ち前の好奇心でどんどん質問に来てくれます」と山田先生

女子美で過ごす6年間を通して、生徒にはどのような成長がみられますか。

髙城先生 自分のことが大好き、と胸を張って言える人に育っていると感じます。将来いきいきと働き、やりたいことに挑戦できる大人になるには、自分を好きでいることが何よりも大切です。生徒たちは女子美の6年間で好きなことに出会い、自分の軸を確立しているのだと思います。

山田先生 女子美生は、世の中にあるモチーフや友達の作品を普段からよく眺めているので、総じて観察力が高いです。自分のこともじっくりと観察しており、進路にしても自分の理想に近づく道筋を自ら描いて行動しているので、後悔をしません。それは、女子美で6年間頑張ったからこその姿勢ではないかと思います。

最後に、受験生の皆さんへメッセージをお願いします。

髙城先生 無我夢中で楽しみながら学ぶ毎日が、自分の将来に直接つながる学校です。一度学校にお越しいただき、「女子美好きかも」と思ったら、ここはあなたにぴったりの学校だと思います。ぜひ一緒に女子美生活を満喫しましょう!

山田先生 好きなことに夢中になれる人は、女子美での生活が合っていると思います。6年間は長いようであっという間なので、本当に好きなことを女子美で追求してください。人のことや自分のことを知って理想の自分を描けたら、どんな勉強だって楽しく取り組めるはず。あなたにとっての大切な“何か”に、必ず出会える学校です。

髙城先生と山田先生のインタビュー
髙城先生と山田先生の女子美愛があふれるインタビューでした
運動会
行事では生徒たちと一緒に目一杯楽しんでくれる先生方の存在も、女子美の大きな魅力です

編集後記

女子美では、ものづくりが大好きな生徒たちのために、先生方が考え抜いた独自の授業が展開されていました。数学を「美しい」と感じ、一つのアートとして向き合えたなら、数学が苦手な人も勉強を心から楽しめるでしょう。女子美では受験生向けの体験学習や入学体験会なども実施予定ですので、気になる人はぜひ一度訪れてみてください。

イベント名 日時
高等学校卒業制作展 (於 東京都美術館)  2024年2月29日(水)~3月5日(土) 9:30~17:30
入試報告会 2024年3月23日(土) 中学の部①10:00~ ②12:00~、高校の部14:00~ ※要予約