第13回 あの社会問題に対応する学校って?

inter-edu’s eye
「教育最前線に行ってみた!」では、普段何気なく目にするけど、なかなか行けていない教育現場へ、皆さまの代わりに行って取材をしてまいります。第13回では、子どもが納得できるやり方で学ぶことができる、「東京インターハイスクール」の渡辺克彦学院長にお話をうかがってきました。

学びたいときに自分のやり方で学べる

社会に出るとチャレンジの連続

学院長と卒業生
東京インターハイスクールの卒業式に出席しました。左が渡辺学院長。

エデュ:まず、東京インターハイスクールはどのような学校なのでしょうか?

渡辺学院長:一言でいうと「自分流に学習して卒業する高校」です。東京インターハイスクールは米国ワシントン州認可校Alger Independence High Schoolの日本校(東京渋谷)です。渋谷キャンパスに通学するスクールコースと世界中から入学できるオンラインコースがあります。オンライン環境を利用するので、いつでも、どこからでも入学して米ワシントン州が定める履修単位を修了した時点でAlger校を卒業します。

英語または日本語で学習して単位履修できるので、米国の高卒資格を目指す中で日本の高卒認定資格を同時に取得できます。24単位を修了すると卒業なので生徒は毎月入学して毎月卒業します。現在120〜130名の生徒が在籍していますが、ほとんどの卒業生は日本の大学に進学しています。

エデュ:実際にはどのような方が入学されているのでしょうか?

渡辺学院長:大きく分けると、留学や親の仕事で海外の学校で学んでいた帰国生と、いじめやその他様々な理由で日本の普通校(小中高)に行かない選択をした生徒(不登校生)です。

エデュ:不登校生というと、どうしてもマイナスなイメージがありますが…

渡辺学院長:学校のルールや先生に言われた事ではなく、新しい学びに自分で挑戦したいポジティブな生徒が多いということです。今の学校教育は、どちらかというと勉強以外にチャレンジさせない傾向が見られますが、これからは大学でも仕事でも新しいことにチャレンジし続けないと成功できません。そんな社会に活きていくために、自分で学ぶ力「学習力」を持った卒業生を輩出するのが東京インターハイスクールの使命だと思っています。

「学習力」とは、学習指導要領に沿ったカリキュラムをこなすのでなく、自分で目標を立て、計画し、自分流の学習方法を実践する「力」のことです。この「力」は新しい社会環境で活躍するために重要な鍵です。

エデュ:なるほど。その学習力を持った子を育てるには、どのようなカリキュラムを行っているのでしょうか?

渡辺学院長:当校には決められたカリキュラムというものはありません。入学から卒業するまで一人の担任学習コーチ(定期的に交代)が生徒と一緒に目標を探し、計画を立て、生徒の学習方法の実践をサポートします。対面やスカイプなどのインターネット媒体を通して、生徒と学習コーチはコミュニケーションをして相互に繋がっている「学びの空間」があります。

スクール生は毎日グループ学習クラスや体験学習を目的としたフィールドワークに参加して生徒間の交流を盛んにします。安心して自由に学ぶことができる環境があるので才能を伸ばす生徒が沢山います。

今の学校教育に一言もの申す

こんな学び方もあるよと親に知ってほしい

教育問題

エデュ:通われていた生徒で、印象に残っている方はいらっしゃいますか?

渡辺学院長:そうですね色々な生徒がいますが、小中と不登校の女の子が入学してきた当初インターネットが嫌だからと、1年間学習コーチと手紙でやり取りしました。

時間をかけて信頼関係を構築するうちに彼女は裁縫やデザインにしたいことを見つけ、自分のデザインがファッション雑誌に掲載されたり、実際に服になったりすることで自信を高めて大学を目指すようになりました。目標がハッキリしたら基礎学力復習のために高認(旧大検)を受験したりして自分流に学習して18歳で成蹊大学に合格進学しました。「自信を持てば、子供はすご~く成長するな」と、とても感銘しました。

エデュ:すごいですね。では、「学校に行きたくない」とお子さまが言ったとき、お母さまは、どう接するのが良いでしょうか?

渡辺学院長:相手を一人の人間としてとらえ、「待ち」と「傾聴」が重要だと思います。「これをやりなさい」「これをやった方がいいよ」は、本人にとってプレッシャーになるだけで、本音のコミュニケーションができません。

気の長い話ですが、本人がやりたいことが出てくるまで待つことです。簡単のようで、なかなか実践できないと思われる保護者は、当校が定期的に開催している「Learning Success」セミナーにご参加ください。2000年創立以来当校で収集したデータ、培ったノウハウ、実践しているプラクティスをワークショップセミナーで体験すれば理解は深まると思います。

エデュ:今、日本の教育が抱えている問題についてどのようにお考えですか?

渡辺学院長:閉鎖的な学校環境で学ぶだけでは、今の中高生たちに無理が生じてきているように感じます。情報があふれ、多様性を受け入れる社会には、新しいことにチャレンジしたいと思っている子供たちが相当いるのではないでしょうか。

実際に不登校生数は20万人に達して増え続けているといわれています。今の学校が校内に全ての教材と学びの機会を揃えて教師の指導を中心にした「Closed Education」だとすると、東京インターハイスクールは学校の外にあるベストの教材や学習機会を生徒の学習計画に沿って取り入れる「Open Education」です。

これからは子供たちが自分に合った学び方を自由に選べる「多様な学び」を許容する開かれた教育が広がればよいと思います。

エデュ:やりたいことはあるけど、学校に合わず悩んでいるお子さまを持つお母さまに向けてアドバイスをお願いします。

渡辺学院長:まず親御さんが情報を集め、我が子の資質に合った学習方法について熟慮することですね。進学先をブランドで選んだり、塾や先生に任せるのではなく、ご家族で楽しみながら子供に合った「多様な学び」を模索してもらいたいです。

編集者から見たポイント

社会的な問題になっている、不登校生問題。その数は年々増え続けています。渡辺学院長が話していた通り、自分のやり方で学べる学校に行くという選択肢も、今後はスタンダードになってくるかもしれません。興味のある方はぜひ「東京インターハイスクールhttp://www.inter-highschool.ne.jp/」をご覧ください。


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