「ここに通ったから今の自分があります」と言われるのが目標
inter-edu’s eye
第18回では、米国テキサス州立大学アーリントン校を卒業後、マーケティングコンサルなどを経て「英語塾エベレスト」を設立した齋藤孝夫さんにお話をうかがってきました。なぜ教育業界に入り英語塾を始めようと思ったのか、教育内容は、などインタビューしてきました。
真面目なだけの学生。自分の適性を知るために海外の大学へ
自分の可能性を試したい…
エデュ:齋藤さんは海外、米国の州立大学を卒業されていますが、なぜ海外の大学に行こうと思ったのでしょうか?
齋藤さん:高校2年生のときに、先生から「どの学部を受けるのか、そろそろ進路を決めなさい。」と言われて。「自分がどんな仕事に就きたいのかリアルに考えたことない。実際どんな職業が世の中にあって、何が自分に適しているのかわからない。」ということに気づきました。
そもそも小さな田舎町で、先生に言われた通り座学しかしてきませんでした。なので1.もっと広い視野を持ちたい。(田舎町→世界へ)2.自分の可能性を試したい。(5教科→より多くの学問にふれる)ということでアメリカマンモス大学に行くことを決意しました。
エデュ:日本の大学はまったく視野に入れていなかったのですか?
齋藤さん:日本の大学については、入学後遊んでいる人が多いということを周りからたくさん聞いていました。また、専攻を決めると変更できないということで、自分の将来もイメージできないまま、学部を決めてしまい、方向転換ができないのはやや窮屈だなと。その点、アメリカの大学は、2年生までは基礎学問を学びながら専攻を検討できるので、自由度が高い点も魅力的でした。
エデュ:向こうでの生活はいかがでしたか?
齋藤さん:留学前に英語の勉強はしっかりして行ったつもりでしたが、私がやっていた勉強というのは「文法と読解」のいわゆるテストのための勉強でした。なので、いざアメリカ人を目の前にすると、一言も言葉が出てきませんでした。
左手には「とっさの一言辞典」、右手には「電子辞書」をもって、用務員のおじさんに「May I sit here?」ここに座っていい? という一言だけが私のはじめての英会話でした。そのおじさんに毎日会いに行き、あなたの趣味は何ですか?など1行1行、「とっさの一言辞典」での文章を言えるようにしていったことで徐々に慣れていけたのだと思います。
まずは、やってみること、そして「話さないと身につかない」ということを身をもって学びました。
エデュ:大学卒業後はどのようなことをしていましたか?
齋藤さん:一貫してマーケティングのキャリアとして形成してきています。外資のコンサル、外資メーカーのブランド担当、外資言語学習のソフトウェアなど十年以上のキャリアです。ただ、ウェブベースで規模が大きく、毎日パソコンの前の数字を見ているばかり。お客様の顔を実際に見たいという想いがありました。
最後の会社で、英語に苦しんでいるビジネスマンの声をたくさん聞くことができました。そして、実際に日本の教育現場の情報も調べる中で、自分が受けていた20年前の使えない英語教育と何も変わってないという危機感を感じて、日本の英語教育を変えたいという想いで、今の「英語塾エベレスト」を設立しました。
「体験型授業」で自分の話をするから、身についていく
語学学習はお互いを知りたいという想いが大切
エデュ:「英語塾エベレスト」の学び方の特徴を教えてください。
齋藤さん:大きく分けると2つあります。
1つ目は、「体験型授業」。2つ目は「毎日のパーソナルトレーニング」です。体験型授業というのは、生徒をその状況下においてしまうということ。例えば、約束をするというテーマだった時には、ではあなたは先週、お母さんとどんな約束をしたの?来週お友達とどんな約束をする予定?ということで具体的に生徒の実生活のシーンを想像してもらいながら、レッスンを進めていきます。自分事にすることが大切なポイントです。もちろんレッスンはオールイングリッシュです。
毎日のパーソナルトレーニングでは、1.毎日英語で日記を書いてもらい、2.スカイプで授業の復習をしてもらっています。カナダでは英語をある程度理解できるようになるには英語だけの環境で2100時間必要だといわれています。毎日英語を使う環境をつくって、生活の中に取り入れてもらって習慣化する。これが私たちの2つ目の特長です。
エデュ:いきなりネイティブの英語教師と会話。ハードルが高いようにも感じますが…。
齋藤さん:ハードルは高いです。
でも実は大人しい子でもしゃべりますね。理由は3つあると思っています。1つ目は、話す内容が最終的には先ほど出ていた自分事に関することに繋げていくので、自分の話をするのがつまらない人はいないですよね。なので、伝えたいという気持ちが勝るのだと思います。
2つ目は失敗を推奨していることです。間違うことをNGとする学校教育ですが、ここではどんどん間違ってくださいと言っています。
そして3つ目として、教師の魅力が高いことですね。自画自賛で気持ち悪いですが、それが生徒たちのハードルを下げているのかもしれません。うちの講師はとにかく笑顔が絶えないんです。会ってもらうとわかると思いますが、生徒のハートを鷲掴みにしているのがわかります。生徒の目の色が違うんです。なので、私たちの講師の採用基準は、生徒を笑顔にできるかどうかにかかっています。言語学習の本質は相互を理解したいという想いです。この先生に伝えたい、この先生のことをもっと知りたい。そうなれば生徒たちの英語力は飛躍的に伸びていきます。
エデュ:それは実際に授業を受けてみたくなりますね。
英語学習を継続してもらうにはどうすれば?
エデュ:2つ目の特長「毎日のパーソナルトレーニング」で習慣化させるについてもう少しお伺いさせてください。
齋藤さん:まずは、お子さんに今の生活を書き出してもらいます。こちらにあるのは1例ですが、1週間のタイムテーブルをまとめてもらい、どこで英語を使う時間を取れるのか、一緒に考えていきます。
これまでの英会話スクールは週1回50分がほとんどですよね。でもそれだと先ほどの指標2100時間には、年52週ですので、48週通っても実は52年もかかってしまうんです。絶対量からしても現状他社の仕組みだと話せるようにはならないんです。なので、毎日英語を使う習慣をつくるお手伝いをしています。
エデュ:毎日できない子も出てくるのではないですか?
齋藤さん:そうですね。もちろん、できない子もいます。だから私たちがサポートします。3日連絡が来ないと、こちらからメッセージを飛ばして、現状を確認しています。「今日はどんなことがありましたか?」「忙しそうだね。何に忙しいか書いてみない?」など、お子さんに寄り添う形で、モチベーションを維持するサポートをしています。英語学習はモチベーション維持がとても大切なので、お子さんと密にコミュニケーションをとっています。常に誰かが見てくれているというのは、お子さんにとっても嬉しいことだと思っています。
エデュ:親御さんの協力も必要ですか?
齋藤さん:お子さんの年齢にもよります。中学生ぐらいになればほうっておいても大丈夫です。ただ小学5年生ぐらいはサポートいただけるといいですね。家でも英語をちょっと話すことができると学習と現実がつながるので良いかと思います。3,4語ぐらいの簡単な英語で構いません。「Have a nice day!」「How was your school?」など一言日常に英語が入ると、生徒も英語で返すようになってきますよ。生活習慣を変えるので、お母さんも一緒に楽しんでもらえたらいいですね!
教育の在り方を再定義する必要がある
“自分の道を歩んでいける力”を身につけられる学校をつくりたい
エデュ:最後に齋藤さんご自身の教育観についておうかがいしたいのですが、ずばり齋藤さんにとって教育とは何でしょうか?
齋藤さん:教育とは本来、「生き方を見出すお手伝い」をすることなのだと思っています。これまでの学校教育は5教科でテストの問題の解き方を教えることがメインでした。それで測っているのは生徒の記憶力。それを教育というのであれば、それは間違いです。まず、一つの物差し(偏差値)だけでお子さんの魅力は測れません。人間の能力はもっと多面的であると思っています。なので知性の在り方の再定義が必要だと思っています。事実、インドのカリキュラムでは9つの知性を定義しています。
そして私は、生徒一人一人が自分の生き方の軸を見出せるために、色んな大人の生き方を見せることが必要だと思っています。そしてその大人がどういう想いでその仕事についているのか、またどういったプロセスや意思決定を過去にしてきたのかを参考にして、自分はどうしたいのか、それを考えさせる時間が教育の時間なのだと思っています。
エデュ:教育の再定義というのはとても大胆ですね。今後の目標はありますか?
齋藤さん:将来は学校を創ります。お金の話や、会社の仕組み、プログラミング、演劇、リーダーシップ、キャリア、意思決定、コミュニケーションなど、お子さんの可能性を広げる学校です。海外ではすでに進んでいますが、今の時代に即した学びを提供していければと思っています。
編集者から見たポイント
齋藤さんは取材が始まってすぐに、「つたないですができる限りわかってもらえるように伝えます。」と。ぽつりぽつりと語られる言葉には熱い思いがこもっていました。とくに子どもたちの教育について語っているときの目の輝きは、本当に子どもたちのことを真剣に考えているなと感じました。
ここでは紹介しきれなかった、詳しいカリキュラムについて知りたい方は、「英語塾エベレストhttp://everestenglish.jp/」のサイトをご覧ください。
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