子どもに合った生き方・進路を導く「キャリア教育」とは?
inter-edu’s eye
多くの親御さんは子どもに、将来は得意なことを活かした職業に就き、自己実現して幸せな人生を歩んでほしいと願います。そのために、子どもと将来について話し合い、進学先などを考えますが、ほかにも親ができることはあるのでしょうか? 現在公立・私立の学校で行われている「キャリア教育」を知ることで、そのヒントが見つかりそうです。
中学受験は、子どもが将来のことを考えるきっかけになる!?
子どもの将来を考えるに当たっては、今どんな夢を持ち、何がやりたいのかを聞き、一緒に考えることが大切ですが、小・中・高生のお子さまを持つ親御さんは、どのくらい話し合いの機会を持っているのでしょうか。
教育政策に関する総合的な研究機関である、国立教育政策研究所が行った、公立校対象の「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」の中に、「将来の生き方や進路について、お子さまと話し合いをしていますか?」という調査結果がありました。そこで同質問をエデュママにアンケートし、比較してみました。
【小学生のお子さまがいる親御さんへの質問】将来の生き方や進路について、お子さまと話し合いをしていますか?
国立教育政策研究所調査結果(以下:NIER)は、「ときどき話し合っている」…61.8%、「よく話し合っている」…12.4%、2つの合計は74.2%となりました。一方、インターエデュでの独自アンケート結果(以下:エデュママ)は、「ときどき話し合っている」…44.3%、「よく話し合っている」…39.3%、2つの合計は83.6%となりました。
エデュママは中学受験を目指すご家庭が多いため、進路や生き方について話し合う機会が多いと考えられます。
【中学生のお子さまがいる親御さんへの質問】将来の生き方や進路について、お子さまと話し合いをしていますか?
NIERでは、「よく話し合っている」…20.2%、「ときどき話し合っている」…65.1%、合計は85.3%となりました。エデュママでは、「よく話し合っている」…36.8%、「ときどき話し合っている」…34.2%、合計は71.0%という結果です。
公立中学に通うご家庭の多くは高校受験をすること、またエデュママ家庭は私立一貫校が多いことを踏まえ、上記小学校の結果とも照らし合わせてみると、「受験」が進路を話し合うきっかけになると考えられます。
【高校生のお子さまがいる親御さんへの質問】将来の生き方や進路について、お子さまと話し合いをしていますか?
NIERでは、「ときどき話し合っている」…60.1%、「よく話し合っている」…27.4%、合計は87.5%となり、エデュママでは、「ときどき話し合っている」…41.4%、「よく話し合っている」…31.5%、合計は72.9%となりました。
「ときどき話し合っている」と「よく話し合っている」の合計が、エデュママよりNIERの数値が高いこと、またエデュママの結果「ほとんど話し合っていない」が9.8%とNIERの結果よりも高い数値であることから、中学受験を経ることで、子どもは早い段階から自分自身で進路を考え、中学生、高校生ともなると自身で目標を定められるようになるのかもしれません。
さらに、エデュ独自アンケートに寄せられた、話し合いの内容については、次のようなコメントが寄せられました。
【小学生】
・内部進学、高学年での勉強方法、偏差値でなくやりたいことのために大学を世界から選ぶマインド。
・将来、今の職業はAI化するから自分しかできない仕事や資格などを手に付けないといけないと生きていけないからね、と伝えています。まだぴんときていないと思いますが。
・中学への意気込み など。
・将来どんな仕事に就きたいか、大学は何学部が希望かなど。
・大きくなったら何になりたいの?程度です。
【中学生】
・将来就きたい職業や、その職業に就くための大学選びについて。
・子どもの考えを尊重し、進路もお任せしています。もちろん、その内容について、たくさん話をしてくれますので、安心して見守っております。
【高校生】
・生き方 将来の夢。
以上のNIERの調査とエデュママの結果から、親は「将来の夢」・「やりたい仕事」・「進路」について子どもと話し合う機会が多いようですが、子どもの将来のために親ができることは、果たしてそれだけでしょうか?
「キャリア教育」とは「生きる力」を身につける教育!?
「キャリア教育」というと何を思い浮かべますか?
世の中にはこんな職業があって、その職業につくためにはこんな勉強をして…というように、「自分のやりたいことを見つけ、叶えるための教育」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
ところが、文部科学省の「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」によると、
「キャリア教育」とは、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育である。(中略)「職業教育」とは、「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」である。
と説明し、「職業教育」との違いを明確にしています。
また、「キャリア教育」の説明にある「キャリア発達」を、
「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」
と示しています。
つまり、社会的に自立した、自分らしい生き方を実現するために、社会との関わりの中で、個々に必要な力を身につけさせることが「キャリア教育」なのです。
「キャリア教育」を「職業教育」の意味で捉えていた方はイメージが変わったのではないでしょうか。
では、具体的例として、私立中高一貫校で行われている「キャリア教育」をご紹介します。
【日本工業大学駒場中学校の場合】
・キャリア教育のねらいを、「将来を描き、働く上で大切にしたい価値観を形成し、変化の激しい社会で必要な素養を育む」とし、その素養を身につけるための土台は「自己肯定感」であると考え、まず自分を好きになってもらう。その上でコミュニケーション能力や問題解決能力を身につけて、人の役に立つことに幸せを感じられる人材育成に取り組む。
・中学一年生では、生徒たちが即興で行う演劇の中でのコミュニケーションを通じ、考え方の多様性に気づき、互いに演技のよいところを共有して、自己肯定感を再確認する「演劇コミュニケーション教育」が行われる。
・高校一年生では、ペアワークやグループワークで答えのない問題について考え、ゼロからアイディアを生み出し、世界によりよい影響を与えていくための発想力・想像力を鍛える「デザインシンキング教育」が行われる。
自分を知り、他者との良好な関係を構築できるようなコミュニケーション能力を身につけた上で、問題解決能力を育てるという段階を踏んで教育するところが魅力的ですね。
【安田学園中学校・高等学校の場合】
・生徒の自立に向け、社会的・自我的両面のバランスの取れた成長を促し、将来の生き方を考えることにより大きく強い志を育て、進路実現を図る。
・中学一年生では、小学生までの自分を振り返って自分史を作り、また地元企業への訪問・取材を行いPR映像の作成を行うなど、自分について考え、企業研究や先端技術の学習を通じて、社会との関りを考えていく。
・中学三年生では、さまざまな職種の方の講演を聴講し、職業観や人生観を学ぶ。そしてこれまで学んだことや考えたことから未来史を作成し、職業と学問の関係を考え、社会貢献を視野に入れた自らの将来像を明確にしていく。
自分史や未来史を作成することで、キャリア教育が一方的なものではなく自分事として捉えることができますし、社会貢献の意識と職業観を育てることで、実現への強い気持ちが生まれそうですね。
このような、独自の教育目標や建学の精神に基づいて作られたカリキュラムは、文部科学省が提唱する「キャリア教育(一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てる)」ことにも通じています。
中学受験を目指すご家庭は、各学校でどのような「キャリア教育」が行われているかを知ることで、よりお子さまに合った学校選びができるでしょう。
家庭でできる「キャリア教育」もある!
そして、これらの能力を身につけるための「根幹」となる力は、日々の生活で養われるものです。
料理、掃除、洗濯といったお手伝いから、家族とのあいさつ、他者との関係、ものごとの良し悪しなど、大人になったときの「生きる力」は、何気ない日常生活の積み重ねで培われます。
親御さんがその場面、場面で意識的に「思い」や「考え」を伝え、子どもがそれについて考えることが、家庭でできる「キャリア教育」ではないでしょうか。
■参照
国立教育政策研究所キャリア教育:進路指導に関する総合的実態調査第一次報告書
文部科学省:今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について 第1章キャリア教育・職業教育の課題と基本的方向性
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