学ぶことが楽しい親子になれる『ゼロヒャク教科書』
inter-edu’s eye
新しい年、新元号を迎える2019年を前に、ぜひおすすめしたい本が発売されました。書名がとても長く、『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』。出版社は、短く『ゼロヒャク教科書』と呼んでほしいと言っています。著者は、最近テレビにも登場する機会が増えてきた1987年生まれのメディアアーチスト、落合陽一氏です。
◆知の魔術師が語る、これからの学び方・生き方
“知の魔術師”と呼ばれる落合氏の著書は、エデュママブックでは2年前に『これからの世界をつくる仲間たちへ』をご紹介しています。その本では、デジタルネイティブである子どもと、そうでない時代に育った親の間に生じる齟齬と誤解を指摘し、近くホワイトカラー失業時代が訪れることを予言、そんな時代にどう考えるべきか、生きるべきかを力強く語っておられました。
今回の本も、これからの時代をどう生きるべきかという基本テーマは前著と同じですが、より広範囲に社会全体を見通し、かつ親子で一緒に読めるよう、とてもわかりやすく書いてあります。その前提となる現実認識は、30年前は「人生80年時代」だったが、近いうちに確実に「人生100年時代」が到来すること。もうひとつはIT化の急速な進化で、社会は今以上に目まぐるしく移り変わり、価値観も変わってくるだろうということです。
テーマは壮大ですが、わかりやすくスイスイと読んでいけました。最初は、今以上に変化が激しい未来なんてちょっとしんどいとため息をついていたのですが、読み終わったときには、なんだか自分の頭が柔らかくなったような気がしました。煩雑な日々を過ごすうちに肩だけでなく脳みそも凝っていたみたいで、本書はそんな脳を刺激的にマッサージしてくれたようです。いつもは使わない部分にも血が通ったような爽快感がありました。
◆未来を生きる子どものために知っておきたいこと
本書を手にとったら、何はともあれ第1章の『Q&A・幼児教育から生涯教育まで「なぜ学ばなければならないのか」』を読んでみてください。以下のような13の質問で構成されていて、それぞれに落合氏が明快に回答しています。
Q1 子供に「なぜ学校に行かないといけないの?」と言われたら?
Q2 ディスカッションが苦手。どうしたらいい?
Q3 プログラミングの早期教育は必要ですか?
Q4 幼児教育は何から始めればいい?
Q5 英語はいつから習えばよいですか?
Q6 2020年度の大学入試改革の攻略法は?
Q7 これから大学はどう選べばよいですか?
Q8 就職には文系より理系のほうが有利ですか?
Q9 20代前半までに身につけておくべきことは?
Q10 これからは、MBAよりリベラルアーツを学ぶべき?
Q11 突出した才能がない人はどう生きていけばいい?
Q12 人生100年時代を生き残るには何をしたらいい?
Q13 未来の学び方は変わってくるの?
感心したのは、将来を見据えた考え方のもと、今どうするべきかが具体的に語られていること。「プログラミングの早期教育は必要ですか?」では、“プログラミングは必須のスキルになるが、そのベースに必要なのは数学の能力”とズバリ。「英語はいつから習えばいいですか?」では、“自動翻訳が進化して英語力だけでは有利にならない。それより母語の論理的言語能力を鍛えるのが先決”と、はっきり語られています。
読んでいくうちに、自分が見落としていたことに気づいたり、うすうすと感じていたけれど、よくわかっていなかったことがリアルに理解できるようになったりしました。内容が盛りだくさんで、第1章だけでおなかいっぱい!という感じにさえなりました。
それと同時に頭をもたげてきたのが、“こんなふうに書ける著者って、いったいどんな育ち方をしたんだろう?”ということ。それも著者は予想していたのか、第2章は、『落合陽一はこう作られた・どんな教育を選び、どう進んで来たか、生成過程』です。幼少期から小・中・高・大・大学院と進み、起業、大学教員となり、父親となった現在までがていねいに語られています。
その中でやっぱり気になるのは、親御さんがどんな人なのかということですね。それも子の立場から書いてあって、なるほどと納得してしまいました。少なくとも周囲が気になる、テストの点にこだわるような親御さんではありません。詳細はぜひ本書を読んでみてください。
◆楽しく学び続けられる人こそ、未来の勝ち組
最後の第3章は、『学びの実践例・「STEAM教育」時代に身につけておくべき4つの要素』。この章は、1、2章を読んだ後でなければ頭に入ってこないかもしれません。本書の長いタイトルにある「100才まで学び続けなくてはならない時代」の基礎教養とは何かが書いてある章です。ご自身にとって、お子さまにとって、とても大事なアドバイスなので、1、2章を読んで頭を柔らかくしてから、熟読してみてください。
最後に、もしあなたが、100才まで学び続けなければならないなんてつらいなあと思ったとしたら、それは学び=苦行と思っているからではないでしょうか。落合氏が何よりも言いたいのはその反対で、「学ぶことが楽しい」と思える人生を作ろうということです。お子さまにそんな人生をプレゼントすることができたら、中学受験も大学受験も苦しいものではなくなります。落合氏のようにゲーム感覚で楽しめるようになるでしょう。結果、親御さんの願いも叶えばうれしいですね!
0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書
落合陽一著、小学館刊、1300円+税
「今のような学校教育はいらない」と語るのは、現代の論客といわれるメディアアーティストの落合陽一氏。「人生100年時代」に本当に必要な教育とは? デジタルネイチャーの時代に身につけておくべきことは? 学び方のヒントがわかる“教科書”です。「学び始めるのに適正年齢はない」ので、この“ゼロヒャク教科書”は、学生、社会人、子育て中の親、生涯教育について知りたい人、あらゆる世代や立場の方に響くものがあるはず。落合氏自身の幼児期から今に至る軌跡もたどり、時代を牽引する天才がどう形成されてきたかも探ります。読み解くのに思考体力を要するといわれる落合氏の本の中でも、平易に書かれているので、落合陽一を知る入門書としてもぜひ手に取ってほしい一冊です。
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著者の落合陽一(おちあい よういち)さん
1987年生まれ。メディアアーティスト、東京大学学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学/東京大学)、筑波大学准教授、筑波大学学長補佐、筑波大学デジタルネイチャー推進戦略研究基盤代表、Pixie Dust Technologies.inc CEO、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授、JST CREST xDiversity代表。オンラインサロン落合陽一塾主宰。専門はCG、HCI、VR、視・聴・触覚提示法、デジタルファブリケーション、自動運転や身体制御・多様化身体。「現代の魔法使い」の異名を取り、今最も期待される研究者として各界から注目を集める。著書に、『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)、『超AI時代の生存戦略』(大和書房)、『日本再興戦略』(幻冬舎)、『10年後の仕事図鑑』(SB Creative)『デジタルネイチャー』(PLANETS)ほか。
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