子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!「自己肯定感」育成入門
inter-edu’s eye
子どもの「自己肯定感」の育成に特化した育児書が発刊されました。『子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!「自己肯定感」育成入門』です。人が成長するためには、自分自身の価値を認める「自己肯定感」が欠かせませんが、大切なこの感覚の弱い子どもが増えつつあるのではないか……。大勢の子どもに接してきてそう感じた著者が、自己肯定感を育むにはどうしたらよいか、その考え方と具体的な手法を解説した書籍です。
日本の子どもは自己肯定感が低い
著者の平岩国泰さんは、「放課後NPOアフタースクール」代表。15年間に5万人以上の小学生と接してきた経験から、「親が子どもの未来に対してできることは、究極的には自己肯定感を育てることだけ」と断言しています。
自己肯定感とは、自分で自分を認める心、自らの価値や存在意義を肯定する感情などを意味する言葉です。失敗にめげない心、と言ってもよいでしょう。著者は自己肯定感について、「『自分はここにいていい』という感覚」とも定義しています。
著者の経験では、自己肯定感の高い子ども、つまり「自分はここにいていい」という感覚を持っている子は、周囲の大人が何もしなくても、新たな事柄に挑戦しようとする。反対に、「自分はここにいていい」という感覚が乏しい子は、新しいことにチャレンジしない。失敗を恐れる不安が先だって、挑戦しないというのです。
これは、著者の経験だけではなく、各種の調査結果でも指摘されていることです。たとえば、平成25年(2013年)に、日本を含む世界7か国の13~29歳の若者を対象に実施された意識調査(『子ども・若者白書』)。本書でもこの調査のことが紹介されていますが、発表された当時、メディアでも取り上げられて話題になりました。
それによると、「自分自身に満足している」「自分には長所がある」「うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組む」という項目で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の割合は、7か国の中で日本が最低でした。その一方「つまらない,やる気が出ないと感じたことがある」「ゆううつだと感じた」と回答した若者の割合は、日本がいちばん高い。
著者が実施したアンケートでも、同様の結果が出ました。「放課後や夏休みにやってみたいことはなんですか?」と質問したところ、「1位=サッカー、2位=ドッジボール、3位=鬼ごっこ、4位=縄跳び」と続き、5位には「なし」が入ったのです。
大人たちは子どもは好奇心の塊だと思っていても、子どもたちはやりたいことがない、わからない。こうした現状に危機感を覚えた著者が、アフタースクールで実践したさまざまなプログラムを通じて得た知見をもとに「親や大人たちが、子どもの自己肯定感を支える方法」を開発、その具体的な手法を紹介したのが本書です。
ほんの少しの言い換えで自己肯定感は育つ
本書は下記の4ステップ(章)で構成されています。
STEP1:子どもの「やってみたい」を引き出す
STEP2:「自分自身で考える」機会を増やす
STEP3:子どもにとっての「安全基地」を作る
STEP4:勉強や習いごとを通して「壁」の乗り越え方を学ぶ
各ステップごとに、7~10程度の実践的なアドバイスが紹介され、それぞれのアドバイスごとに、子どもの自己肯定感を向上させる声かけの手法や言い換えの例が複数紹介されています。
各ステップ(章)の終わりには「実践のポイント」が記載されており、各STEPのエッセンスがとても理解しやすい。全章ともに同じ構成で、章(STEP)やトピックが完結しており、最初から順番に読まなくても、パラパラとページをめくりながら気になったところを読めば自然と著者の考え方がわかってきます。
どのアドバイスも、ありがちなシーンに基づいており、声かけの方法も、別に難しいことはない。ほんのちょっとした言葉の言い換えですむ話ばかりです。テストなどの結果ではなくそこに至るまでの努力の過程に気づいてあげる、失敗したときこそ子どもを本気でほめる、友だちと比べて評価をしない、叱るときはまず安心させる、といった具合です。
子どもに与える目標は、非常識なくらい低く設定する、というアドバイスもありました。ときには100%できるとわかっていることを目標にしてもよいそうです。なぜか。達成感が次のチャレンジへのモチベーションになるからです。
失敗を恐れて一歩を踏み出せなければ、自分に自信を持つこと、すなわち自己肯定感の育成にはつながりません。自己肯定感を持つために何よりも重要なことは、トライ&エラーの場数を踏ませ、子どもが自分で考える機会を増やすことなのです。
また、「短所は克服させようとしない」というアドバイスもじっくり読んでいただきたい部分です。「消極的」「落ち着きがない」「おしゃべり」「優柔不断」と言ったように、短所と思われている性格も、「慎重」「好奇心旺盛」「表現力が豊か」「協調性が高い」というふうに捉えなおせば長所に変わります。
「短所は長所の裏返し」と著者は言います。短所と思えた部分を矯正しようとすれば、その子の個性そのものを台無しにする可能性もあるわけです。著者の経験では、「子どもの個性を、長所と短所に大人の物差しで選別した上で、短所を克服しようとしても、課題は解決しない」そうです。心しておきたいアドバイスです。
注目の学校
親の「先回り」はやめよう
著者は、こんなアドバイスもしています。
「気が利く親」ではなく「ものわかりの悪い親になる」
どういうことか。自己肯定感の醸成には、自己主張も大きな役割を担っています。主張が認められてはじめて、達成感を覚えることがあるからです。
ところが子どもの性格はさまざま。「あれがしたい」「これがしたい」と自己主張が強い子もいれば、おとなしい子もいます。ときには自己主張が強すぎて周囲とトラブルを引き起こすことがある。自己主張がある子の場合は問題がわかりやすいのですが、自己主張が弱いと、良い子に見えて、問題が表面化しにくい。自己主張できずにストレスを抱えていることもあるのです。
そんなときは、「あえて物わかりの悪い親になる」ことが効果的だというのです。なぜなら、「言葉にしないと何も伝わらないよ」というメッセージを子どもに送ることになるからです。
むろん、子どもが要求を言葉で伝えても、親として実現できないこともあります。その場合は、できない理由を告げて代案を提案すればいい。こうした経験を積み重ねることで、葛藤を乗り越えたという自信につなげられるのです。
反対によく気が利く親御さんの場合、先回りして子どもの要求を言葉にしたり行動に移したりしてしまいがち。そうなると、子どもはいつまでたっても、受け身のまま。自己主張のトレーニングをするチャンスを失ってしまいます。
「子どもの気持ちがわかっても、わかっていないフリ」を、あえてすることも大切になると著者は語っています。子どもを幼子扱いせず、ときには対等な存在として突き放すことも必要だということでしょう。
全体を読み終わって、「子どもの自己肯定感を育てるには、ほめるだけでも叱るだけでも、物わかりがよいだけでもダメ」というのがよくわかりました。教育熱心になりすぎても失敗する可能性がありそうです。この本を読んで、ご自身の親子関係を検証してみてはいかがでしょうか。きっと、今悩んでいることへのヒントが見つかると思います。
『子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!「自己肯定感」育成入門』
平岩国泰著、夜間飛行刊、1600円+税
「自己肯定感」とは、自らの価値や存在意義を肯定する感情のこと。この力があるからこそ、人間は、失敗してもめげずにまた挑戦することができます。反対に、自己肯定感が弱いと、失敗を恐れてチャレンジしたくなくなってしまう。このパワーが子どもたちから失われてきたのではないか。危機感を覚えた著者が、「放課後NPOアフタースクール」の活動を通じて5万人以上の小学生に向き合ってきた経験から編み出した手法を、4つのステップに分類して紹介した本です。どの手法も、実践的で、今すぐ実行できるものばかり。特に教育熱心な親御さんに読んでいただきたい本です。…購入はこちらから
著者の平岩国泰(ひらいわ・くにやす)さん
30歳のとき、長女の誕生をきっかけに放課後NPOアフタースクールの活動を開始。2011年会社を退職し、日本の子どもたちの「社会を巻き込んだ教育改革」に挑む。「アフタースクール」は、活動開始以降、5万人以上の子どもが参加。グッドデザイン賞を過去4度受賞、他各賞を受賞。2013年より文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年より渋谷区教育委員、学校法人新渡戸文化学園理事を務める。1974年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
いつもエデュナビをご覧いただきありがとうございます。
この度「エデュナビ」は、リニューアルいたしました。
URLが変更になっているので、ブックマークやお気に入りの変更をお願いいたします。
これからも、皆さまの受験や子育てをサポートできるよう、コンテンツの充実とサービスの向上に努めてまいります。