実体験を通し個性的で魅力的な子どもを育てる 成蹊小学校

inter-edu’s eye
第30回では東京都武蔵野市にある成蹊小学校校長の倉内祐子先生にインタビュー。同敷地内に中学・高等学校、大学などが併設された広々としたキャンパスでどのような教育が行われているのかをうかがってきました。

自然と人が集まってくる魅力的な人物を育てたい

桃李不言 下自成蹊

成蹊小学校1
成蹊小学校校長 倉内祐子先生。

エデュ:まずは貴校の教育の特徴を教えてください。

倉内先生:創立者、中村春二が掲げた建学の精神のもと、「不言実行・実践力」を重視する人物教育を行っているのが特徴です。「個性の尊重」、「品性の陶冶」、「勤労の実践」、「師弟の心の共鳴」、「自奮自発の精神の涵養」を5つの大きな柱とする教育理念に基づき「ゆとりある学校生活の中で個性的な子どもを育てる」という教育目標を掲げています。

エデュ:特色のあるカリキュラムを3つ教えてください。

倉内先生:1つ目は「こみち科」です。
このカリキュラムでは、自然に親しんだり、身の回りの事物や現象に興味・関心を持って探求したり、集団の中で協調しながら自分を表現したりと、個性的な子どもを育てることを目標としています。例えば低学年で行われる「栽培」という授業では、種まきから食べるまでの実体験を通し一つひとつの知識をつなげ知恵にしていきます。

2つ目は「英語」です。
本校には帰国子女の学級もありますが、通常のクラスでも全学年にネイティブスピーカーの教師が教え、さらに成蹊大学の学生がティーチングアシスタントに入り、環境を整えています。「読む」、「書く」、「話す」、「聞く」の4技能のスキルを身につけるだけでなく、主体的に英語を使っていく発表活動を大切にしています。

3つ目はカリキュラムとは少し異なりますが、「こころの教育」です。
授業の前に集中力を高める、精神集中法の黙想のような「凝念」。一人ひとりが持っている精神力=尊い心と、それを養うことによって得られる境地について歌った「心力歌」を授業開始時に唱えます。

エデュ:どのカリキュラムも特徴的ですね。貴校の教育を通し、将来どのような大人になってほしいとお考えですか?

倉内先生:本校には人格教育を象徴する「桃李不言 下自成蹊」という言葉があります。校名の由来でもあります。これは「桃や李(すもも)は何も言わないけれども、美しい花や美味しい実にひかれて人は集まり、樹木の下には自然と道ができる。桃や李は人格のある人のたとえで、徳のある人には、その徳を慕って人々が集まってくる」という意味があります。このような魅力的な人物に育ってほしいと思っています。

たくましさを育てる2kmの遠泳

自分たちは乗り越えられるという成功体験

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エデュ:子どもたちに人気のある行事を教えてください。

倉内先生:実際にアンケートをとったことがあるのですが、一番人気は「夏の学校」です。名前の通り夏に行われますが、「精神を修養し、身体を鍛えること」がコンセプトになっています。例えば6年生では5泊6日で南房総に行き、4日目に2kmの遠泳に挑戦します。もちろん日頃から訓練を重ねますが、それでも子どもたちにとっては厳しい経験です。

エデュ:確かに厳しい経験ですね。どういったことを学んでほしいのでしょうか?

倉内先生:難しい課題でも、共同することによって自分たちは乗り越えられるという「成功体験」です。遠泳でいえば、おそらく1人で最後まで成し遂げるのは難しいと思います。でも、そこに仲間がいればなんとか乗り越えることができる。そのことを、実体験を通して感じてほしいです。

エデュ:貴校が求めるご家庭の理想を教えてください。

倉内先生:これは本校だけでなく、小学校では「自学自修」の姿勢を身につけることが重要と言われています。この姿勢は親御さんが「これをやりなさい、あれをやりなさい」と言っているうちは身に付きません。適切なところで手を差し出し、あとは本人にやらせてみる。そのためには自分の子どもをしっかり見てあげる必要があります。ここを意識されているご家庭が理想です。

エデュ:受験前にとくに意識してほしいことはありますか?

倉内先生:食事や睡眠などの生活の基礎になる部分を大事にしてほしいです。体の土台にもなりますし、何事においても最後まで頑張れる力になります。あとは「聞く力」。やはり自学自修とはいえ、何事も始まる前に教師から説明があります。まずしっかり聞いて理解し、実行に移せることが大切です。

成蹊小学校の強みとは?

創立から続く伝統の「日記指導」

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エデュ:親御さんから見た貴校の強みとは何でしょうか?

倉内先生:創立当初から現在まで続けられている伝統の「日記指導」ではないでしょうか。本校の日記は何時に何をやりましたという形式ではなく、美術なら「美術」という題名のもと、それについて書く形式をとっています。卒業生は、会社の報告書を書くのに困らないと言っています。構成を考えて書く力はもちろんですが、文字にすることで伝える力、コミュニケーション力の基礎を身につけることができます。

エデュ:現在、共働きのご家庭が増えていますが、何かサポートとして行っていることはありますか?

倉内先生:最近始めたというわけではありませんが、本校には毎日給食があり、共働きのご家庭に選ばれる1つの理由になっています。給食についてですが、献立表では生産者の紹介をして「作ってくれた人に感謝し、残さず食べる」ことを目標に指導しています。あとは先ほどご紹介した「こみち科」の栽培学習と連携し、食育として食事のとり方、食生活や食文化、自然環境問題など、食を通して考える力を育む機会として給食を提供しています。

エデュ:最後にこれから行ってみたい取り組みを教えてください。

倉内先生:「桃李科」という授業を来年度から行う予定です。環境・共生・平和の3つをコンセプトにカリキュラムを作っている途中です。まだ完成に至っていませんが、なるべく実体験を伴った子どもたちの心が動く教科にしたいと思っています。

エデュ:倉内先生ありがとうございました。

成蹊小学校データ

学校名 成蹊小学校
URL: https://elementary.seikei.ac.jp/
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 〒180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1
JR中央線・総武線(東京メトロ東西線)・京王井の頭線「吉祥寺駅」より徒歩15分、「吉祥寺駅」よりバスで約5分「成蹊学園前」バス停下車
制服の有無
給食の有無

編集部から見たポイント

帰り際にバス停で元気よく話す生徒さんたちの姿を見て、「夏の学校」のお話にあったように元気でたくましい印象を受けました。実体験を通し、魅力的な子に育てたいご家庭は一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

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