第3回 東大・京大に合格する子どもの育て方:エデュママブック
第3回 東大・京大に合格する条件は「考える力」
inter-edu’s eye
今話題の『東大・京大に合格する子どもの育て方』。そのものズバリのタイトルですが読んでみると奥が深い。『自分で考える習慣』が受験合格の条件。そのためには“教えない教育”が大事とは?
『自分で考える習慣』こそ難関合格の条件
タイトルにつられて、つい、「この本を読んだら子どもが東大に行けるの?」なんて思ってしまいそうですが、帯には、「暗記型から思考型へ」「考える力を身につければ子どもの学力は必ず伸びる」と書いてあります。
さらに裏表紙には、「東大や京大のようなトップ校に楽に合格する子どもは必ず『自分で考える習慣』を持っています。」と、「はじめに」からの抜粋がのっていました。
なるほど、東大や京大に合格するには、「自分で考える習慣」が身についている必要があり、そのためには暗記型ではなく、思考型の勉強をする必要がある――これが著者のメッセージなんだとわかりました。
確かに、「考える力」は、エデュまが監修者の西村則康先生をはじめ、難関校合格には必ず必要と、中学受験に詳しい方々が口を揃えて言っておられることでもあります。
「考える力」は長時間勉強しても育たない
でも、「考える力」ってむずかしいですよね。“考える力がついているかどうか、どうやったらわかるの”“考える力をつけるにはどうしたらいいの?”と思ってしまいます。そして“結局それって地頭がいいってことなんじゃないの?”とも。
そんな思いを抱いて読んでみました。そして読了後、この本は、まさに、そんな疑問を抱いている親御さんのための本だということがわかりました。なぜ考える力をつける必要があるのかの説明があり、そのうえで子どもに「考える力」をつける方法が、さまざまな角度から繰り返し書いてあるのです。
「考える力」をつける方法は、多くの知識や解き方を「覚える」方法とは全く違います。マニュアル化することができません。多くの問題を解いても長時間勉強しても、必ずしも考える力が身についているとは言えないのです。著者は、マジックワードは「なぜ?」「どうして?」だと言っています。
子どもはあらゆることに「なぜなの?」「どうしてこうなるの?」と疑問を抱きます。そんなとき、絶対にやってはいけない対応は、すぐに正解を教えること。なぜなら、正解がわかると、子どもは自分で答えを出そうとしなくなる。そうではなくて子どもに対して、「なんでだろうね」と問い返してみる。そうすると、子どもは自分で答えを考えるようになる、と著者。
以上は序章の一節の要約ですが、このような形で、「考える力の育て方」が、本書の中に多数散りばめられています。もちろん家庭で、親の立場でできることばかりです。親御さんなら、すぐにも実践したくなってくるでしょう。そして逆に親がやってはいけないことは、「教えること」「急がせること」「たくさんやらせること」「否定すること」、これもしっかり頭に入れておいた法がよさそうです。
「考える力」をつけてから受験を
さて、“考える力って、結局地頭の問題では?”という反論に対して、著者はこう語ります。確かに何もしなくても考える力が身についている子どもは1%ぐらいいるでしょう。でも、そうではない子どもたちも適切なタイミングで訓練すれば、ちゃんと考える力を身につけていくようになります、と。著者自身が教えてきた子どもたちの例を紹介してくれているので、とても説得力がありました。考える力がつくと、地頭そのものがよくなるのかもしれません。
また、“うちの子、考える力がついているのかしら”と不安に思っておられる方には、第一章にのっている、子どもの頭が柔らかいかどうかを見極める方法が助けになるかもしれません。著者は、考える力がついていることを「頭が柔らかい」と表現しているのですが、この見極め法で調べてみて、もしまだあまり頭が柔らかくないようなら、難関校への中学受験は無理にさせないほうが賢明かもしれないとも語っています。考える力がついていないと、トップレベルの学校の進度にはついていけない可能性があるからです。まずはしっかり考える力をつけ、それから高校受験しても十分難関大学は目指せるのだと。
ところで、「第一章 進学塾や進学校に入っても子どもの学力が伸びない理由」には、今の学校教育や計算塾やそろばん塾、進学塾の指導法などに潜む、考える力を阻害するリスクが語られています。親の立場としては認識しておきたいところです。ことに進学塾の授業や大量の解法を「覚える」指導に終始していたり、宿題が忙しすぎたりすると、子どもたちから「考える」学習時間を奪っていないとも限りません。
著者は言います。
「頭を使う訓練は、ある程度の時間をかけることが必要です。最低30分ぐらいは考え続けることが理想です」と。さらに、
「難しい問題を一問、30分考えさせよう」と。
東大・京大に合格する子どもの育て方
江藤 宏著、幻冬舎メディアコンサルティング(経営書新書)、本体800円+税
「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら――。40年にわたり教育の現場に立ってきた著者による、目からウロコの教育論。良かれと思ってしていたことが全くの逆効果かもしれないという事実、現代の学校教育が抱える問題、そして、どんな子どもでも人生を切り開く力をつけられる独自の「思考型」教育とは? わが子の将来について悩む保護者必読の子育ての手引きです。
序章:どんな子どもでも東大・京大に合格できる可能性を秘めている
第1章:進学塾や進学校に入っても子どもの学力が伸びない理由
第2章:子どもの学力を伸ばすのは「暗記」ではなく「思考」
第3章:わが子を東大・京大へ導く「思考教育」とは?
第4章:思考教育で身につけた「考える力」で「人生の勝ち組」になる
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江藤 宏さん
灘学習院学院長。昭和42年に神戸市灘区に学習塾「灘学習院」を開校。開校以来、思考教育に特化した教育を実践している。自分の頭で考える子どもを育てるため独自の「思考教育」を確立。40年以上に及ぶ指導経験と独自のノウハウを蓄積し、現在は教師の研修指導にあたっている。大手学習塾のように受験を目標とした「詰め込み型」「暗記型」ではなく、考える力自体を伸ばす「思考型」の教育法を実践。日本の教育を通じ、子どもたちの未来を変えたいと日々邁進している。同院は現在、阪神間内に9校を展開。
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