第14回 面白くてやる気になる、子ども向け中学受験マンガ:エデュママブック

エデュママブック
2015年11月6日

第14回 面白くてやる気になる、子ども向け中学受験マンガ

inter-edu’s eye
中学受験を題材にしたマンガが人気です。名門中の入試に挑戦する小学生が主人公の『ゼロからの中学受験 ザ・コミック』。中学受験をわかりやすく解説するページもあり、子ども向けの中学受験ガイドにもなっています。

4年生が夢中になって読んでいる!

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「“ちょっと出遅れ”の親子にピッタリの読み物」と、amazonのレビューで推薦されていたこのマンガは、“小学館学習まんがシリーズ”のひとつ。面白さだけでなく教育的視点をしっかりおさえてあるのが、このシリーズの特徴です。

ページをめくると、まず、「なぜ中学受験するの?」「私立中高一貫校とは?」「これが進学塾だ」という見開きごとのカラーページがあります。総ルビ付きですが内容は大人向けと遜色ない、今の中学受験の状況を紹介する記事になっています。

そしてメインのマンガは、石川県から東京に引っ越してきた小学5年生が主人公。東京の公立小学校に転校し、多くの生徒が中学受験に挑戦することを知ることから物語が始まります。主人公の家族、友だち、塾の先生、学校の先生たちが織りなすチャレンジもののマンガで、ワクワクしながら最後まで一気に読むことができました。

でも大人を対象にしたマンガではありません。子どもはどんなふうに読んでいるのでしょう? そこで、この本を購入した知人のパパに聞いてみました。

「本屋で見つけて、4年の息子にどうかなと思って購入しました。私同様、勉強よりマンガが好きな子ですが、一応進学塾に通っています。これ読むか?と言って渡したら、夢中になって読んでいましたよ。よけいなことを聞いてへそを曲げられても困るので、感想は聞いていません。でも、それからも何度か読んでいるところを見かけたので、案外効果あったのかな?」

“中学受験ってこんなものだよ”と直接子どもに伝えたい

大人目線で感心したのは、きれいごとではすまない中学受験の世界を子ども向けに上手に描いていること。ストーリー展開にはずいぶん苦労したのではないかと想像して、担当編集者の藤田健一さんに伺ってみました。

「はい、小学生対象にどのように中学受験をとらえるか、どんなストーリーにするか、たっぷり時間をかけて打ち合わせや取材を行い、漫画家さんに描いてもらいました。子どもたちに、ただ点とるだけが受験じゃないよ、でも、やってみるだけの価値はあるよ、といったメッセージを伝えたいと思っていました。だから結末もずいぶん悩みました。でも最終的に、漫画家さんがとてもよい方向性を選んでくれて、本当によかったと思っています」(藤田さん)

ここで結末を明かすことはしませんが、第三者的に見ても“技あり!”の終わり方。それにしても、そもそもなぜ、中学受験を題材にしたコミックが作られたのでしょう?

「今、首都圏では5人にひとりの小学生が中学受験をします。地方でも公立の中高一貫校が増えてきて中学受験が一般化しています。小学生の友だち間の会話でも、中学受験がごく普通の話題になっています。親御さんの時代の中学受験は、人数も少なく、親がそれとなく子どもに促して…という感じだったと思いますが、今は、友達が受験するなら僕もと言い出す子も増えていますよね。

でも中学受験のガイド本は、ほとんどが親向けです。そこで子どもに直接“中学受験ってこんなものだよ”と伝えたいと考えたのです。思春期にさしかかりつつある小学生なら、親の口からでも友達からでもない、自分で読んで知る中学受験情報を欲しているだろうな、と思いました。

それに、以前は中学受験というと、高偏差値の学校を受けるといったイメージが強かったけれど、今は必ずしもそれだけではありません。偏差値より校風や建学精神などに惹かれて学校を選ぶ、文化祭に行って検討するといったスタイルも一般化しています。また試験問題にしても知識の詰め込みだけでは対処できない、思考力や洞察力を問う問題が増えてきています。親が経験者だとしても、その経験則だけではわからない部分も多々あります。

そんな今の中学受験のお約束的なものも、当事者である小学生にきちんと伝えたいと考え、記事ページも充実させました。これにもずいぶん時間をかけたんですよ。記事の監修をしていただいた日能研さんはもちろん、さまざまな塾や経験者の親子に取材し、巻頭のカラーページのほか、志望校選びや模試、過去問、健康管理などのガイド記事を作りました」(藤田さん)

子どもが自分自身を鍛える中学受験に

マンガだから面白くなければ読んでもらえない、でもこのマンガは面白さだけではいけない、中学受験がその子にとっていいチャレンジとなってくれなければ…そんな思いが藤田さんはもちろん、漫画家さんにも、その他の制作スタッフ皆の心にもあったのだと言います。その熱意は、確かに前述のパパにも伝わっていました。

「よくできたマンガですよ。そっか、中学受験ってスポ根マンガの一ジャンルになるんだなあとか思ったりして。うちの子は、友だちの影響で受験したいと言い出したのですが、かといって受験がどういうものかわかっていたわけではありません。子どもが言い出したことで、妻と私でいろいろ調べ始めたのですが、当の本人がわかっていないというのはよくないでしょ。それに親の話だと身近すぎて真に受けなかったりするじゃないですか。そういう意味でも、マンガでひと通りのことを子ども自身が知るというのはいいことですよね。これから、いろんな中学受験マンガが出てきてもおかしくないと思いますよ」

小学生が一生懸命になる中学受験。一生懸命であればあるほど、そこには必ずドラマが生まれます。そして心も鍛えられていきます。スポーツで育つ心もあれば中学受験で育つ心もある。多くの受験生にとって中学受験がそんな自分を育てるチャレンジになってくれれば、親御さんだけでなく社会全体にとっても幸せです。そんなことを教えてくれた『ゼロからの中学受験 ザ・コミック』でした。大人が読んでも楽しめますよ!

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ゼロからの中学受験 ザ・コミック
まんが:松浦聡彦、協力:元山浩二、記事監修:日能研、750円+税
首都圏では5人に1人が中学受験をするというほど身近になってきた中学受験を、小学生に向けてわかりやすく紹介します。地方都市から東京に転校してきた主人公が、ひょんなことから進学塾に入り、名門中学の入試に挑戦するストーリーまんがを読むことで、いまの中学受験のありかたが楽しみながらわかる構成になっています。また大手進学塾・日能研の監修による「自分に合った学校の選び方」「入試本番残り3か月の健康管理」といった読み物記事も充実しており、受験する人もしない人も必読の一冊です。「受験」というととかく「競争」「偏差値至上主義」といったイメージで見られがちですが、読めばそうではない一面がわかります!
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