第15回 茂木健一郎氏推薦!理系を目指す「数学脳」を育てる本:エデュママブック

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2015年11月20日

第15回 茂木健一郎氏推薦!理系を目指す「数学脳」を育てる本

inter-edu’s eye
大学受験は理系を目指してほしいと思っている親御さんへ。小学生のうちに「数学的センス」「数学脳」を育ててあげましょう。そこで脳科学者の茂木健一郎氏が推薦する新刊をご紹介!

算数好きにするためにすべきことは勉強じゃない?

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 この世は、数学で出来ている。
 そのことを「知る」だけでなく、「感じる」ことが、現代を生きるうえで欠かせない。
 数学は、単なる知識ではない。むしろ、それは、「センス」なのだ。数学の感覚をつかむこと。それが、「数学脳」をつくるために一番大切である。

これは、『世界一おもしろい数の本』の巻末にある脳科学者・茂木健一郎氏の解説文の冒頭です。
読んで、数学を「感じる」とか「センス」といった言葉に、意外な印象を抱く方もいらっしゃるかもしれませんね。また、“そうかもしれないけど…”と小さな違和感を感じる方もおられるでしょう。そういう方は、おそらく文系の出身ではないでしょうか。
でも、ちょっと待って。この続きももう少し読んでみていただきたいと思います。

 現代文明を支えるさまざまな機器、その部品の設計、製造から、インターネットなどの情報技術、さらには宇宙開発まで、すべてのことに数学が関わっている。
 それだけではない。人と人との関係、生きる上での効率的な時間の使い方、身の回りの整理整頓のあり方まで、すべて、「数学的センス」があれば、よいやり方が見つかる。
 苦手意識を持ちやすい数学だが、実は生きる上で役に立つ、大切な感覚だと考えれば、見方が変わってくるのではないか。その際に大切なのは、知ることと同時に、感じることである。

このメッセージには、ほとんどの方が同意されると思います。「知る」には「勉強」が必要でも、「感じる」のに「勉強」は不要。むしろ「勉強」と関係ないほうがいいですね。だとすると、数学=算数を好きになるには、「勉強」ではない、ほかの「何か」が必要みたい…と想像が広がっていきます。

実は、『世界一おもしろい数の本』は、そんな「勉強」ではない「何か」を子どもの心の中に芽生えさせるのにぴったりの本なのです。だからこそ、茂木先生も「『数学脳』を育むために、打ってつけの一冊」と推薦していらっしゃるのです。

数学=算数は、言葉の壁がないグローバルスタンダード

『世界一おもしろい数の本』はフランスで作られた本らしく、センスのいいイラストが散りばめられた高学年向けの児童書です。大人が読んでも興味深く、心をかきたてられる内容です。“こんなふうに数学に出会っていたら、私も理系に行っていたかも…”なんて思ってしまいました。

数学=算数が苦手になる背景には、数式の無味乾燥したイメージや将来役に立つとは思えないといった先入観がありますよね。でも小学生のうちに、この本を読んだ子は、そういった感覚とは無縁の人生を歩むことになるような気がします。

本書の第一部は、数学が、人々の営みを快適にすべく発達してきた歴史です。古代文明の数の数え方から、10進法、少数、分数といろいろな数が生まれ、それによって何がどう便利になったのかや、単位の話にちなんで、ワインボトルがなぜ750mlなのかなんて面白ネタも挿入されています。

第二部は現代。数学が生活の隅々にまで浸透し、もはや数学なしには社会が維持できないほど重要な役目を果たしていることが、子ども目線の具体例で解説されていきます。災害に強い安全な建物を建てるためにも、パティシエになってケーキ店を経営するためにも、大好きなゲームをクリエイトするためにも、コンピュータ技術者になるためにも、数学=算数がとても大きな役割を果たしていることが自然とわかってきます。子どもたちにとっては、なりたい職業や将来の夢と数学=算数とが、ワクワクする形でつながってくるはずです。

その次の第三部は、算数好きな子が読めば、もっとワクワクして数学者を目指したくなりそうな数の不思議の世界。素数、フラクタル、フィボナッチ数など、本格数学の世界がやさしく紹介されています。

そして最後の第四部。最初の見出し「数学のことばは世界共通」には、目からウロコ! 確かに数学の世界に言葉の壁はない、グローバルスタンダードなんですね。数学者や科学者、コンピュータエンジニアは、他の職種よりずっと簡単に母語の違いを乗り越えている事実を思い出してしまいました。

数の世界のワクワク感が理系への第一歩

子どもの好きな科目・嫌いな科目を調べてみると、小学生の段階では、「好き」と「嫌い」が拮抗している算数ですが、中学、高校と長じるにしたがって「嫌い」が「好き」を圧倒していきます。数学への関心・好奇心が、受験勉強などの重圧の中で失われていっていると専門家は指摘しています。とすれば、数学=算数好きにできるかどうかは、小学校までにかかっていると言ってもいいのではないでしょうか。

理系・文系は決して生まれつきや遺伝ではありません。小さい頃に、どんな感性を育てていったかにかかっています。面倒な計算や難しい応用問題のせいで算数って面倒だなあと感じる前に、『世界一おもしろい数の本』で、ワクワクする数の世界をお子さまに見せてあげてはいかがでしょうか。ことに親御さんが、数学や理系的な面白さに親しんでこなかった場合、こういった本の助けを借りるととてもよいと思います。

理系を目指すならもちろん、文系でも情報技術の発展でロジカルな思考が必須の現代、お子さまに数を楽しむゆとりとセンスを、『世界一おもしろい数の本』のような本を活用してプレゼントしてあげてください。

世界一おもしろい数の本,ポプラ社

世界一おもしろい数の本
文/カリーナ・ルアール、フロランス・ピノー、絵/ジョシャン・ジェルネール/絵、翻訳/南條郁子、1800円+税
読むと算数、数学が好きになる! 数の始まりから現代の生活を支える数学まで、またむずかしい「算数・数学」の概念も、かわいいイラストでわかりやすく解説。「数」に関する様々な知識が身につく数の本決定版! 13 年、17年など素数の年ごとに地上に出てくるセミがいる! レオナルド・ダ・ビンチも数学に基づいて絵を描いていた! スマートフォンのアプリやゲームにも、たくさんの数学が使われている!など、数にまつわるおもしろい知識が自然に身につきます。 脳科学者・茂木健一郎氏も、「数学脳」を育むために、打ってつけの一冊! 数学的センスを養うには、「美しい、深い、ふしぎだ」という感覚への刺激が必要だということを、この本は改めて教えてくれる、と推薦しています。 …購入はこちらから

世界一おもしろい数の本,カリーナ・ルアール,フロランス・ピノー,エデュママブック

著者/●カリーナ・ルアール(写真左上):社会問題、生命科学を専門とするジャーナリスト。ライター。とくに、持続可能な開発、不平等の問題に関心がある。本書は、数学の得意な子どもと不得意な子どもの平等を願って書いた。本書を含め、子ども向けには6冊の著作がある。
●フロランス・ピノー(写真左下):社会、経済ジャーナリスト。ライター。週刊誌Espace Social Europeen(社会的保護の観点から時事問題を扱う雑誌)に記事を書き、動物保護をテーマにブログを執筆している。堅いテーマを楽しく書くのが得意で、子ども向けには本書を含めて4冊の著作がある。
●ジョシャン・ジェルネール:画家。イラストレーター。絵本作家。漫画のシナリオライター。フランスやアメリカの有名な新聞や雑誌に風刺漫画や挿絵を描き、現代美術の画家として多くのグループ展や個展に出品している。子ども向けの本や絵本の執筆および挿絵多数。
翻訳/ 南條郁子:翻訳者。お茶の水女子大学理学部数学科卒業。訳書に『数の歴史』(創元社)『ふたりの微積分-数学をめぐる文通からぼくが人生について学んだこと』(岩波書店)などがある。

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