第17回 塾を決める前に読みたい「塾選びのバイブル」登場:エデュママブック
第17回 塾を決める前に読みたい「塾選びのバイブル」登場
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中学受験合格者の大半を占める大手塾の教え方ってだいたい同じ? いえ、そんなことはありません。わが子との相性を見極める「塾選び」のために、ジャーナリスト・おおたとしまささんの新著をおすすめします! 注:2017年1月の記事公開日は、1月8日(金)と22日(金)です。
今の「塾選び」に欠けているものは?
子どもにいい教育を受けさせたい、自動的に入れる公立中よりもっといい学校に通わせたい、そんな思いを抱く親たちが最初に考えることは「塾選び」。そこで、みなさんご存じの中学受験にもっとも詳しい教育ジャーナリスト、おおたとしまささんが、満を持して発表された新刊『親が後悔しない、子どもに失敗させない中学受験塾の選び方』をご紹介したいと思います。
この本は、抽象的な塾選びのノウハウ本でも、中学受験用の塾ガイドでもありません。これまで書かれたことのなかった「塾選び」の最重要ポイントを摘出し、そのポイントから首都圏と関西の大手塾を解説しています。最重要ポイントとは何か? おおたさんは、「はじめに」でこう語っています。
これから塾を選ぶのであれば、もしくは転塾を検討しているのであれば、合格実績や世間一般の評判やセールストークだけでなく、もう一歩踏み込んで、各塾がどのようなしくみで子どもの学力を伸ばそうとしているのかという意図までを気にしてみてください。
確かに「塾選び」では塾の評判と合格実績が気になります。でも、おおたさんが言う通り、塾が学力を伸ばすしくみについても、親としては事前に把握しておきたいものです。でも塾側の説明やセールストークはバラバラ。教育には素人の親が複数の塾を同じ条件で比較するのは、とても難しいと思います。そのために評判のよい塾、合格者を輩出している塾なら大丈夫、と思ってしまう面もありますよね。
そんな親たちのもどかしさを想定して、おおたさんは、塾が子どもの学力を伸ばすしくみの中でもっとも注目すべきポイントを教えてくれます(第1章)。それが、スモールステップ=一週間の学習サイクルです。なぜなら、そこにこそ、その塾の考え方や方針が色濃く反映されているからです。
しかし、実はもうひとつ大事な理由があります。それは、それが子どもの生活、ひいては家族全体の生活に大きな影響を及ぼすということです。子どもは入塾したら、塾のスモールステップ=一週間の学習サイクルを取り入れた生活を余儀なくされます。わが子の学習がスムーズに進むように願う親も、当然のごとく影響を受けます。もしそのサイクルが、他の日課とぶつかるようなことがあったら、親子、家族でとても困ってしまいますよね。ですからスモールステップは、ぜひ入塾前に知っておきたい大事なことでもあるのです。
大手塾をスモールステップで比較する
本書は、第2章で首都圏と関西圏の大手塾の現状を俯瞰し、第3章で首都圏の中学受験総合格者数の9割を占める7塾、第4章で関西圏で合格者数の大半を占める9塾のスモールステップを、具体的かつ詳細に解説しています。
首都圏の7塾は、日能研、四谷大塚、サピックス、早稲田アカデミー、栄光ゼミナール、市進学院、ena、関西圏の9塾は、浜学園、日能研関西・灘特進コース、馬渕教室、能開センター、成基学園、第一ゼミナール、進学館、希学園、京進。これらの塾の概要とスモールステップが、おおたさんというジャーナリストによって公平に記述されているので、そのまま比較対照することができます。そこがこの本の画期的なところです。
読んでいくと、同じように見えていた中学受験塾が、それぞれ違うスタイルの学力の伸ばすしくみを持っていることが、はっきりわかってくるでしょう。そして、“この塾はうちの子向きじゃない”“このスケジュールではうちにはあわない”といったことも判断できると思います。
もちろん、中学受験には中小塾という選択もあります。そこで第5章には、「大手塾の落とし穴」「中小塾が合っている子ども」「転塾のタイミング」とともに、中小塾を選ぶ際の5つのポイントが挙げられています。また個々の中小塾のスモールステップを確かめるために、どんな質問をしたらいいかについても書いてあります。さらに、私立中高一貫校の先生方や塾関係者が口を揃えて「あの塾なら安心」と言う、知る人ぞ知る中小塾が、ひとつだけ紹介されています。
最後の第6章は「塾を徹底的に利用するコツ」。小学生が通う塾では、親と塾の関係が成績にまで影響することがあります。親のコミュニケーション力に関する先輩ママのアドバイスや、プロによる塾別の上手な付き合い方、個別指導塾や家庭教師との併用のしかたなども細かく紹介されています。
塾選びのバイブル
「おわりに」に『「塾選びのバイブル」にしたいと思って本書を書きました』と書いているおおたさん。この言葉に偽りはなく、この本はまさに「塾選びのバイブル」です。そして今、この本を読む方はとてもラッキーだと思います。なぜなら、これも「おわりに」に書いてありますが、塾の指導法は年々進化を続け来年度には何か変更があるかもしれないからです。だから、今、この本を読んだ人だけが、おおたさんの取材の成果を100%そのまま活用できるのです。もちろん大枠については大きな変化はなく、また「塾選び」の根幹をなす部分のアドバイスは何年たっても参考になるでしょう。
「わが子を塾に預けるということは、医者に自分の命を預けるようなものです」と、自らも子の親であるおおたさんは書いています。だからこそ、塾もインフォームドコンセント(事前の説明と同意)が必要なのだと(「はじめに」の冒頭)。この気持ちに賛同する方は、ぜひこの本を読んでください! それが中学受験を目指してわが子を塾に送り出す親の務めであると考えていただいてもいいと思います!
親が後悔しない、子供に失敗させない中学受験塾の選び方
おおたとしまさ著、ダイヤモンド社刊、1200円+税
●塾の違いは「スモールステップ(1週間の学習サイクル)」に表れる!●大手中学受験塾を徹底比較!●優れた中小塾を見分ける5つのポイントも大公開!
中学受験の成否を左右する鍵は、わが子に合った「塾選び」。しかし現実には、子どもとの相性よりも合格実績や世間一般の評判などを重視する傾向が強く、通塾後、塾とのミスマッチに悩む家庭も少なくありません。本書では塾選びの新しい基準として、受験生を育て上げていく“仕組み”や“考え方”などが反映された各塾ごとの「スモールステップ(1週間の学習サイクル)」に着目することを提唱。この観点から、「大手中学受験塾の違い」や「玉石混淆の中小塾を鑑定する方法」「転塾のベストタイミング」など、失敗しない塾選びのためのノウハウを多数紹介します。
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著者のおおたとしまささん
育児・教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布高校卒業。東京外国語大学中退。上智大学卒業。リクルートを退社後、ジャーナリストに転身。育児・教育に関する執筆・講演活動を行う。各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演も多数。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許、私立小学校での教員経験もある。著書『名門校とは何か?』(朝日新聞出版)、『中学受験という選択』『進学塾という選択』(いずれも日本経済新聞出版社)、『進路で迷ったら中高一貫校を選びなさい』(ダイヤモンド社)など多数。
エデュママブック これまでの記事
- 2020年11月19日 発達障害・グレーゾーンの子だからこそ、中学受験で子どもの未来を切り開く!
- 2020年10月29日 中学受験生を悩ます、アノ単元が理解できる!人気塾の授業を再現した 中学受験 「だから、そうなのか!」とガツンとわかる 合格する授業シリーズ
- 2020年10月22日 安易な「ほめて伸ばす」は逆効果!?大人のエゴのためではない、子どものためのほめ方・叱り方とは?
- 2020年10月15日 麻布OBたちが赤裸々に語る名門・麻布の実態
- 2020年9月24日 中学受験、必ず成績が上がる「受験勉強のノウハウ」とは?
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