超難関校合格の家庭環境と「三種の神器」:第30回
inter-edu’s eye
勉強=丸暗記の子は伸びない……ではどうしたら? 中学受験専門の個別指導塾代表の小川大介さんが解決策をていねいに説明してくれます。鍵はリビング学習と図鑑・地図・辞書の活用。家庭の学習環境を整えれば地頭はどんどんよくなります!
◆超難関校を目指せる地頭を育む
『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』という長いタイトルの本が出版されました。著者は、中学受験専門の個別指導塾「SS-1」の代表、小川大介さん。「頭がいい子」とはまさしく中学受験で難関校・超難関校を目指せる子のことであり、つまりは地頭がいい子、幅広い知識を持つ子、考える力のある子という意味です。「はじめに」に書いてあった執筆の動機を紹介します。
私はこれまで有名私立中学を狙う子、その親御さんと、1万件以上の面談を重ねてきました。
そんななか、本当に残念だなと感じるのは多くのお子さんが知識を「勉強」として詰め込んでいるということです。
勉強しなければならないから、勉強する。そこに、知らなかったことを知る楽しさ、ワクワクはありません。
そのため、丸暗記では通用しなくなる高学年になると、とたんに息切れしてしまう子がとても多いのです。
もし、もっと小さい頃から指摘好奇心を育み、さまざまな知識を楽しみながら吸収できていたら、どんなにラクか……。
「勉強ツール」とされている辞書、地図、図鑑に幼いうちから慣れ親しみ、おもちゃのように遊んでいたら、どんなに今、心強い援軍になってくれるか……。
教育の現場にいる者として、10歳くらいまでのお子さんを子育て中のご家族に、辞書、地図、図鑑との橋渡しをしなければ。そう痛感したのが執筆の動機です。
◆丸暗記が身につくと成績が伸びなくなる
早いうちから受験を目指して勉強している子の中に、勉強=覚えること・丸暗記することという習慣が定着している子が一定数いることは、多くの塾や家庭教師の先生方の共通認識です。しかもその子たちはだいたいがとてもいい子で、コツコツ勉強するタイプ。それなのに難関校の入試問題に取り組む頃になると、とたんに成績が伸びなくなってしまう……。
このことをとても口惜しく思い、多くの塾講師がさまざまな指導の工夫をしています。でもいったん身についた勉強習慣を変えるのはとても大変で、時間もかかります。できることなら、勉強=丸暗記の習慣が定着していない状態で塾に来て欲しい…そんなふうに語る塾講師はとても多いのです。著者の小川さんも、そんなお一人なのだと思います。
でも、いつのまに勉強=丸暗記の習慣がつくのでしょう? それに勉強=丸暗記という習慣がつかないようにするにはどうしたら? 逆にどんな勉強習慣をつけたらいいのか?など、親御さんの中には、逆に不安が大きくなってしまう方もいるでしょう。
そんな親御さんの迷いに、真っ正面から答えてくれるのが本書です。丸暗記ではなく、子ども自身の関心から発した幅広い知識と、それら駆使して回答を出す思考力や表現力。今はやりの言葉でいえばアクティブラーニングの学習習慣こそ、塾に通う前から身につけたい生きた学力です。そしてそのための最良の処方箋がリビング学習と、そこに図鑑、地図、辞典が置いてあることだと本書ははっきりと語っています。
◆リビングに三種の神器を
本書の第1章「頭がいい子の家のリビングはこんなにも違う」には、プロ家庭教師が口を揃えて「できる子のお宅はリビングでわかる」と言っていることや、東大生の半数以上が子どもの頃リビング学習していたという調査結果が報告されています。そしてリビングが学習の場としていい理由は、「子どもの関心や意欲には、『親の関わりが最重要』だからです(P23)」とも著者は断言しています。
ここに親として、しっかり心に刻んでおきたいと思う言葉が2つありました。「子どもの関心が持続するのはたった30秒!(P27)」と「目覚めている時間はすべて学びの時間(P39)」です。
第2章「図鑑、地図、辞書は学力を伸ばす『三種の神器』」では、この3種類の書籍と学力に関係が説明されます。科目横断的な問題が主流となりつつある中学入試でも、2020年の改革から大きく方向転換する大学入試でも、求められているのは単なる知識ではなく、知識の使いこなし方であり、そこから持論を展開していける能力です。「幅広い知識や思考力の下地作りに貢献するのが、図鑑、地図、辞書の知的ツールであり、これを介して親御さんと遊んできた日常体験です。そして、それは急ごしらえでできるものではなく、小さい頃からの積み重ねでできるものなのです。(P55)」と。そのうえで、「最初は親子で一緒に『ただ眺めている』のが正しい使い方(P58)」という一節も忘れられません。
続く第3~5章では、図鑑、地図、辞書の選び方・使い方が、合計117冊の書籍の紹介とともにていねいにアドバイスされています。こうした書籍に不慣れな親御さんでも安心して選ぶことができるでしょう。そして最後の第6章は、再度いちばん大事なことは「親のかかわりと声かけ」というメッセージで締めくくられていました。
最後に、著者の小川さんからいただいた皆さんへのメッセージをご紹介します。
こんにちは、小川大介です。
日頃は中学受験の世界でお子さんの点数を上げることに力を注いでいる私ですが、今回の本は、お子さんの健やかな成長を願うすべてのお母さん、お父さんに届けたくて書きました。
全ての子どもは自ら育つ力を持っています。知的好奇心を持ち、学びたいという気持ちを持っています。でも多くの子どもはまだ、自分が持つ力と気持ちをうまく表すことができません。だから、子どもが知的な刺激に「出会える環境」を大人が整えていくのです。この本には、皆さんの家のリビングが楽しみながら「知的刺激の基地」となっていく工夫をたくさん載せてあります。
肩の力をぬいてお子さんと遊ぶように過ごすだけで、好奇心も考える力も育ててあげられる事実と安心を、皆さんにお届けしたいと思っています。
お子さんの成長を楽しんでいきましょう。
頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある
小川大介著、すばる舎、本体 1,400円+税
頭がいい子の家のリビングは何が違う? 何が行われているか?から解きおこし、頭がいい子になる家庭環境の鍵を余すところなく解説。家族が一緒に過ごすリビングに「辞書」「地図」「図鑑」の知的アイテムを置き、ふだんから慣れ親しむことで後々の学力に大きな差がつく! どういう辞書・地図・図鑑を選べばいいのか、どうしたら効果的に使えるのか。「中学受験のプロ」として個別指導教室代表を務める著者が、学力向上につながる家庭環境のつくり方を具体的にアドバイス。◎生活のメインスペースを知的好奇心の“発信地”に/◎図鑑は知識を増やす最強のビジュアルツール/◎「ザ・図鑑タイプ」は「見比べる」楽しさ満載/◎遊ぶうちに日本地図が大好きになるアイテム/◎地球儀ほど頭のよくなるツールはない!/◎漢字辞典は語彙力アップの切り札……etc.楽しんでいるうちに全方向得意な子になる! 置くだけで賢くなる厳選本やアイテム117点も紹介。
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著者の小川大介(おがわ・だいすけ)さん
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大学受験予備校、大手進学塾で受験国語の看板講師として活躍。難関中学、国公立大学医学部などへ多数の合格者を送り出す。2000年、さらなる学習指導の理想を追究し、中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1[エスエスワン]を設立。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。 首都圏、関西圏に展開する同教室を代表として率いつつ、子育て、人材育成に関する講演、執筆活動に力を入れている。「プレジデントファミリー」「AERA with Kids」「日経DUAL」などの記事で度々登場。フジテレビ「ペケポンプラス」に「カリスマ先生」としてレギュラー出演し、当意即妙の受け答えが人気を博す。著書に、『小川式「声かけ」メソッド』(宝島社)、『中学受験 基本のキ! 』(共著:日経BP社)など。
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