麻布の先生が作った「本物の国語力をつけることばパズル」
inter-edu’s eye
国語は漢字と読解問題…、そんなお決まりの勉強スタイルを脱して、本当の国語力が身につく楽しい言葉の世界をお子さまに見せてあげませんか? 大学入試改革を契機に、求められる国語力の範囲はぐっと広がっています。麻布の国語の先生が、使える語彙が増えて中学受験にも役立つ、小学生向けのことばのパズルを作ってくれました。
◆◆国語力を軽視していると危険です!
お子さまの国語力について、みなさんはどのように判断されていますか? 国語力の判定はとても難しいものですね。しかも他の科目の習得に大きな影響を与え、学力の土台を形成するものでもあります。今まで以上に「考える力」「語彙力・表現力」「コミュニケーション力」が求められる時代、こうした能力には筆記テストだけではわからない総合的な国語力が必須です。より幅広く国語力を身につける必要があります。
そこでご紹介したいのが、麻布中学・高校の国語科教諭、中島克治先生が発表された『本物の国語力をつけることばパズル』です。3月に「入門編」と「初級編」が同時に発売されています。6月には「中級編」が発売予定とのこと。
左画像にあるようなシンプルな装丁で縦開き。以前ご紹介したカリスマ算数講師宮本哲也さんの『算数と国語を同時に伸ばすパズル』と同じスタイルです。本文のパズルも、文字が大きく余白たっぷり、子どもは遊び感覚で接することができます。「入門編」が10級から7級、「初級編」が6級から4級で、各級の最後には「認定証」のページがあります。レベルアップをお子さま自身が実感できるように作られています。
「入門編」「初級編」とも表紙に「小学校全学年用」とありましたが、だいたいどのあたりの学年を想定しているのか、担当編集の中西彩子さんにうかがってみました。
「『入門編』は小学校入学前後、『初級編』は低学年を想定していますが、この時期のお子さまは、個人差が大きいのであえて学年別にしませんでした。編集方針としては、遊び感覚でできることにこだわりました。確かに高学年だと簡単かもしれませんので、購入時に内容を見て選んでいただいてもいいですね。でも、簡単なパズルをスイスイ解いていくのも楽しいものです。それに、季節のことばなども数多く盛り込んでいるので、高学年のお子さまでも、知らない言葉に触れることができるかもしれません。」
◆「身についた語彙」が子どもの将来を豊かにする
それにしてもなぜ、麻布の国語の先生が小学生向けのパズルを作られたのでしょう? 中学受験生を持つ親御さんとしてはちょっと気になりますね。その答えが表紙裏の「おうちの方へ」にのっていました。
麻布の生徒は思考力と発信力に秀でていると筆者の中島先生。その源泉は、生徒たちに尋ねた結果、幼少期の豊かな読書体験と、読後感を共有する家庭内コミュニケーションで磨かれた言語感覚によるものと考えておられます。そして「ここに大事な要素が潜んでいます。」として、以下のような説明が。
それは、「身についた語彙」をどれだけ持っているかということです。ただ覚えただけで使いこなせない語彙は、自分を表現することを難しくしてしまうだけでしょう。言葉を真に身につけるには、ご家庭での会話、友だちとのコミュニケーションが非常に大事になります。それを心がけることによって、お子さまは様々な言葉を使うようになり、定着度も上がります。相手の言っていることへの理解が、より正確なものになっていきます。自分の使える言葉が増えれば、言葉やコミュニケーションの世界に、余裕を持って存在することができるようになります。
つまり、このパズルは、さまざまな言葉を真に身につけ、自分自身で使える語彙とするために作られたものなのです。そこには、「言葉の感覚や、言葉遊びを通じて感受性を育成する意図も含まれ」ていて、教科としての国語の範囲を超えて、人としての能力全体を豊かにするものといっていいでしょう。同じく表紙裏に掲載されている、このパズルの「特徴と使い方」には、「○語彙が増える、○自分の言葉で考えを表現する力がつく、○他者の気持ちを察し、言葉を通じて伝え合う力がつく」と記してありました。
パズルには、オノマトペ(擬態語、擬声語)を取り上げたものが多数ありました。水の流れや人の表情を表す言葉にも、さまざまな表現があります。大人にとっては当たり前でも人生経験の少ない子どもにとっては新しい発見がありそうです。また文字を並べ替えてことばを作るアナグラムの問題など、言葉に親しむにはとてもいいものだなあと感心しました。
◆言葉に接するのが楽しいと思えることが出発点
このように幅広く、しかも本質的な国語力の習得を目的として作られたパズルですが、中学受験生にとっても価値があるのでしょうか。前述の担当編集・中西さんは、母親として二人のお子さまを育て中学受験も経験した方、“実際のところ、どうなんでしょう?”と聞いてみました。
「確かに、このドリルは、中学受験を前提としたドリルではありません。友達や家族との会話や生活を送る上で、ぜひ知ってほしい言葉を取り上げたものです。特に、感情を表す言葉、自然や物を表す言葉など、心が豊かになるような語彙を中心に構成してあります。
でも、麻布中学など今の中学入試では、登場人物の心情を深く読み取ることも大切です。それには机上の勉強だけでなく、普段から人との心の交流を大切にし、感情を豊かに表現できることが条件です。そういう意味では、このパズルには中学入試の読解問題を読み解くために必要なものが詰まっていると思います。」
最近は麻布だけでなく多くの難関校が、塾で教える範囲を超えるような新しいタイプの出題をするようになっています。それは、中島先生が書いておられるように、受験のために「ただ覚えただけで使いこなせない語彙は、自分を表現することを難しくしてしまうだけ」で、少しも子どものためにならないからでしょう。難関校のほうでも、“そんな生徒はいらないよ”と入試を通じて言っているような気がします。
中西さんによると、著者の中島先生は、“子育てに最も大切なことは、自己肯定感を持たせること”とおっしゃっているそうです。「自分もできる!」と自信を持つことが、学びに向かう力となります。国語の場合、それは言葉に接するのが楽しいと思えることから始まります。
もし、お子さまが国語に苦手意識を持っているなら、高学年でも「入門編」から始めて、どんどんレベルアップしていく楽しさを実感してもらうといいと思います。またお子さまの国語力について、よくわからないという方は、勉強時間ではない親子のひとときに、一緒にこのパズルをやってみてください。お子さまの国語力について新しい発見があると思います!
本物の国語力をつけることばパズル 入門編(写真上)初級編(写真下)
中島克治著、小学館刊、各650円+税
国語教育で定評のある麻布中学校・高等学校の国語科教諭による小学生のための国語ドリルです。特徴は、○語彙が増える、○自分の言葉で考えを表現できる力がつく、○他者の気持ちを察し、言葉を通じて伝え合う力がつく。
小学生のうちに身につけてほしい語彙・表現を、楽しく学べるようにパズル形式にしました。この年齢のお子さまは、月齢や生活環境などで個人差が大きいため、あえて学年別にしていませんが、言葉の力が自然につくように、取り組みやすい問題から順に並べています。入学前後から学べるように、全ての漢字にふりがな付き、シンプルなデザイン、かわいいイラスト、級ごとの認定証など、難しい「お勉強」ではなく、お子さまが楽しく学べるような工夫が随所に。語彙力だけでなく、言葉の感覚や、言葉遊びを通じて、感受性を育成する意図も含んであり、お子さまの豊かな言葉と可能性を伸ばすために、最適な一冊です。…購入はこちらから
著者の中島克治(なかじま かつじ)先生
1962年生まれ。麻布中学・高校を経て、東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進んだ後、麻布中学・高校国語教諭となる。著書に、『小学生のための読解力をつける魔法の本棚』『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(以上小学館)、『20歳からの<現代文>入門ノートをつけながら深く読む』(NHK新書)などがある。一女の父。
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