作文を得意にして全科目の成績アップを目指す秘訣とは?
作文が苦手な子どもでも、「書くこと」を好きにさせるのは可能。今回ご紹介する『本物の学力は12歳までの作文量で決まる!』(すばる舎刊)は、そのためのノウハウがぎっしり詰まった本です。著者は、大学入試小論文指導の神様と言われる樋口裕一さん。著者によれば、「書く力が上がると全科目が得意になる」とのこと。しかも、それは家庭で十分に実行可能。「えっ、ほんと?」と疑っている人は、ぜひ読んでみてください。わが子と一緒に、すぐにでも実践したくなること請け合いです。
◆「書くこと」は、すべての学力の基本
中学受験でも大学入試でも、単なる知識や計算力だけではない、「本物の学力」が求められるようになっているのは、みなさんご存じのとおりでしょう。実際、ほとんどの公立中高一貫校の入試で小論文があり、採点の比重も重くなっているとのこと。自分で課題を見つけ、自分の頭で課題を解き、人を説得する力が重視されるようになってきたのです。
そのために最適なのが書くこと、すなわち作文だというのが、この本のテーマです。著者は、「まえがきで」次のように断言しています。
作文を書くことによって、言葉を操作する語彙力と論理力が身につき、コミュニケーション力が磨かれ、社会性が生まれ、自分の言いたいことを持つようになり、ほかの人の文章を読み取る力も増します
「書く」という作業は、かなりクリエイティブな作業なんですね。ですから、精神的な労力を、かなり使います。そのため、自分で文章を書くようになると、否応なく注意深く本を読むようになり、読解力向上につながります。自然と使える文字も、語彙も増えてきます。人を文章で説得するにはどうしたらいいのか、人におもしろく読ませる文章にするにはどうしたらいいのか、自分の頭で考えるようになります。
こうした、文章を「書く」という作業を繰り返すことで、論理的な思考力や自分だけの発想力、課題を発見する力などが鍛えられ、どんな問題を目の前にしても自分の頭で考え、対応する力が養える。つまり、「作文」によって、ただ多くの知識を覚えるだけではない、これから生きるために必要な、「本当の学力」「人間としての総合的な力」が身につくというのが、著者の主張なのです。
では、作文が上手になるためにはどうしたらいいのか。著者の主張はシンプルです。
「量を書くこと」
ただこれだけ。作文が上手な人と下手な人の違いは、書いた量だけ。作文はセンスではなく、書けば書くほど上達するのが作文だというのです。
◆「空想作文」で楽しく書く、作文量を増やす
特に大切なのが、小学生のとき。ここでたっぷり書いておくことが、その後の学力に影響するらしい。しかし、いきなり「量を書け」と言われても、文章は書けるものではありません。大人でも、慣れていない人はつらいのですから、小学生のお子さまでは、まず無理でしょう。
そこで、著者がおすすめしているのが「空想作文」です。第二章を使ってたっぷり説明してありますが、本書の中の白眉といってもいいでしょう。作文に慣れていない小学校低学年のうちから使えるメソッドとして考案されました。
要は、「おもしろければなんでもいい」作文です。しかも、親子で楽しく書いたり読んだりできるので、家庭で行うには最高の方法でしょう。
学校の作文では、いまだに「感じたこと、思ったことを書け」「ありのままに書け」と指導されているようですが、作文が苦手だった子は昔から、これがダメでした。書くのが面倒になると、つい、「何も感じなかった」「おもしろいことはなかった」と考えてしまうんですね。
「空想作文」では、こうした制約を一切取っ払ってしまいます。飼っている犬が言葉をしゃべった話でもいいし、空中を自分が飛んでいる話でもいい。友達と入れ替わった話でも、「自分が消しゴムになった」話でも、なんでもいい。子どもの思いつくまま、嘘でもなんでも、発想が豊かでさえあればいい。嘘やあり得ない空想を、まるで本当にあったかのように書くことが大切なのです。
友情や人の親切など、倫理的であったり道徳的であったりしなくても、別段、気にせず、子どもに楽しい空想を書いてもらう。著者は「ゲームと同じ」と言います。要は遊びのひとつにしてしまうんですね。
むろん、小学校低学年のうちは、意味不明な話を書く子もいるでしょう。それでもかまわないらしい。お母さんがちょっと疑問を言ったりアドバイスをしたりすると、子どもはなんとかつじつまを合わせようと考え始めるというのです。確かに、自分の作った話ですから、真剣になりますよね。
「こうして、論理性が育っていく」と著者。もちろん、中学受験の小論文のように、本格的な論理性が身につくわけではありませんが、つじつま合わせをすることで論理的思考の基礎的な力がつく。近い将来、論理的な文章のトレーニングを受けるときにも、大いに役に立つことは、著者が代表をしている「白藍塾」での30年近い指導経験から、確かなのだそうです。
◆作文は「ほめる」ことが肝心
もちろん、「空想作文」がいくら効果的といっても、なかなか書けない子もいるでしょう。著者は、女の子はすぐに書くけれど、男の子はなかなか書けるようにならないと言っています。
そんなときの対応法や、書く楽しさに目覚めさせる習慣作りの方法なども、第4章以降で具体的かつ分かりやすく解説されています。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、日常のできごとでも、これまでに読んだ物語や絵本でも、動物園や水族館に行ったときの話でも何でも、文章を書く習慣作りに使えることが解説されています。
ポイントは、親子で会話をして、楽しかったこと、興味を持ったことなどについて、子どもに話してもらい、それを書いてもらうことだそうです。もちろん、絵はがきやカードでもかまいません。最初はたとえ1行でも、とにかく、書くことが楽しい習慣になるよう、小さな工夫を積み重ねるのです。このあたりのメソッドがきめ細かく具体的で、しかも誰にでもすぐに実践できるものばかりなのも、本書の特徴でしょう。
そして、著者が繰り返し述べているのが「ほめる」ということ。作文は正解のある問題ではありませんから、ほめることが励みになるのです。特に有効なのが「あなたらしい」と「ストーリーがおもしろい」ということ。確かに、こう言われれば、どんな子でも喜ぶのは当然でしょうね。
このほか、添削の方法や、「起承転結」の使い方、「白藍塾」では「ホップ、ステップ、ジャンプ、着地」と言っているそうですが、文章の型を使って作文を劇的に進化させる方法も紹介されています。
「白藍塾」で学ぶ子どもが書いた作文も掲載されており、たった数年でここまで文章が上手になるのかと感心させられます。
特に小学校低学年のお子さまがいらっしゃるお母さま方に、文句なくおすすめしたい本です。きっと、何度も読み返したくなると思います。
本物の学力は12歳までの「作文量」で決まる!
樋口裕一著、すばる舎刊、1400円+税
苦手とする子が多い作文。そんな子でも、必ず作文が好きになる方法があります。「小論文の神様」とも言われている著者が、長年の経験から編み出した「樋口メソッド」を使うと、あら不思議。誰でも上手になってしまうのです。その中核を成しているのが、「空想作文」。現実にあり得ないことでもいい。たとえ嘘でもいい。おもしろければ、何を書いても自由という、この作文メソッドで、大勢の小学生が短期間のうちに作文の名手となっているのです。本書には、作文が苦手な子に、作文のきっかけを作る方法や、作文習慣を家庭でつける方法、お子さまの発想力や論理能力のベースを作る方法など、小論文・作文通信指導の「白藍舎」で使われているメソッドが公開されています。作文は、書けば書くほど上手になるというのが著者の持論。また、作文が上手になれば、国語や英語、理科や社会、算数までも、成績が上がるケースが多いのだそうです。嘘だと思ったら、本書を読んでみてください。きっと、すぐに実践したくなることでしょう。
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著者の樋口裕一(ひぐち ゆういち)さん
「小論文の神様」と呼ばれる大学入試小論文指導の第一人者。小学生から社会人までを対象とした小論文・作文の通信指導塾「白藍塾」塾長。「書くことを楽しむ」をモットーに、手厚い指導を行う。小学生でも大人顔負けの作文スキルが身につくと評判になる。250万部の大ベストセラーとなった『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)のほか、『ホンモノの思考力』(集英社新書)、『頭のいい人は「短く」伝える』(だいわ文庫)など著書多数。
1951年大分県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士課程満期退学。多摩大学名誉教授。
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