超難関中学が求める人物とは?入試問題から垣間見えるメッセージ
inter-edu’s eye
超難関中学の入試問題といえば、小学生はもちろん、大人でさえも解くことが難しい問題がギッシリ詰まっているのだろうと考える人は多いでしょう。
しかし、実際に超難関中学の入試問題を見てみると、これが意外と面白いから驚きです。まるでクイズ番組に出てくる問題のようなものばかりで、大人も思わず夢中になってしまいます。
そんな超難関中学の入試問題の中でも特に面白い問題を紹介しつつ、名門中学が求める人物像とは何かを解説してくれるのが、中学受験専門個人塾ジーニアスを経営する松本亘正先生の著書『超難関中学のおもしろすぎる入試問題』です。
松本先生は「はじめに」において、次のように話しています。
本書を通じて、中学入試が単に詰め込み式の苦行ではなく、社会に関する感度を高め、教養を身につけることができ、小学生を成長させるきっかけになることを感じていただければ幸いです。
ぜひ、大人の皆様も問題に挑戦してみてください。
今回は、大人としての自分の力量に一喜一憂しつつ、松本先生の慧眼を通して超難関中学の入試問題を読み解くことができる中学受験の必読書『超難関中学のおもしろすぎる入試問題』の見どころを、ほんの少しだけ紹介します。
入試問題から読み解く超難関中学が求める人物像
まずは、『超難関中学のおもしろすぎる入試問題』の目次を見てみましょう。
第1章 開成・灘が求める「知識」
第2章 麻布・渋幕が求める「思考力」
第3章 慶應が求める「教養」
第4章 時事問題が求める「大人の常識」〈桜蔭・早稲田・洛南etc.〉
第5章 戦争問題が求める「読み取る力」〈筑駒・駒場東邦etc.〉
目次を見るだけで名だたる超難関中学の入試問題が網羅されていることがわかりますが、注目すべきは学校の名前ではありません。
「知識」「思考力」「教養」「大人の常識」「読み取る力」といった、超難関中学が求めているという力こそが、何よりの注目ポイントです。たとえば、「第3章 慶應が求める『教養』」では、慶應義塾中等部の入試で出題された「フレンチのフルコースの順番とマナー」が紹介されています。
松本先生は「プレジデントオンライン」のコラムでこの問題を紹介したことがあるそうですが、そのとき「普通の家庭ではなくて所得が高い家を選別している」という批判が寄せられたそうです。しかし、松本先生はこの問題の出題意図はそのようなものではなかったと考えています。では、慶應義塾中等部は、どのような意図を持って「フレンチのフルコースの順番とマナー」について出題したのか。
そこには、「社会常識とされていることは小学生でも知っておいてほしいというメッセージ」が込められていたのだと、松本先生は分析しています。
たしかに、大人ともなれば、「フレンチのフルコースの順番とマナー」は常識と言って差し支えないもの。むしろ、知っていなければ、恥ずかしいこととされています。
慶應義塾中等部は、ただ、その大人の常識を小学生のうちから身に付けていてほしいと考えている、すなわち、小学生であっても、子どもの立場に甘んじていてはいけないと考えているだけなのです。
このように、松本先生は、一見意地の悪そうな問題についても丁寧に読み解き、超難関中学の出題意図を的確に読み解いています。松本先生の慧眼をもってあらゆる入試問題を読み解けば、きっと目から鱗が落ちる思いがすることでしょう。
注目の学校
超難関中学入試突破のヒントは「生きる力」にあり
あと2つ、松本先生が解説している面白い入試問題を紹介しましょう。
まず1つ目は、「第4章 時事問題が求める「大人の常識」〈桜蔭・早稲田・洛南etc.〉」で取り上げられている「メディアと表現の自由」の問題です。
松本さんは筑波大付属駒場中学校で出題されたヘイトスピーチに関する問題を取り上げ、その出題意図について「差別意識や排外思想を持つことなく、意見を異にする他者とも協調できる子に入学してほしい」のだと分析しています。
すなわち、超難関中学の入試では、学力のみならず、人間性の豊かさも求められていると言うのです。
そして、もう1つ、同じく「第4章 時事問題が求める「大人の常識」〈桜蔭・早稲田・洛南etc.〉」で取り上げられている「自然災害」の問題。
これについて、松本さんは洛南高等学校附属中学校・豊島岡女子学園中学校・慶應義塾普通部で出題されたハザードマップを読み解く問題を取り上げ、今後もハザードマップに関する問題は取り上げられ続けるだろうと推測しています。
しかし、なぜ、ハザードマップに関する問題が今後も取り上げられると予測できるのか。災害大国である日本は、今後も多くの自然災害に見舞われるでしょう。そのようなとき、自分で自分の身を守ることができなければ、最悪の場合、命を落としてしまいます。
しかし、身を守る術を知っていれば、生き延びることができるはず。すなわち、超難関中学は、いざという時でも自分で自分の身を守り、生き延びることができる力を持つ人物を望んでいるのです。
豊かな人間性も、自分の身を守る力も、生きていく上で大切なこと。松本先生が本書の所々に散りばめているように、中学入試問題は「現代社会を映し出す鏡」。超難関中学入試突破のヒントは、現代社会を生き抜くために必要な「生きる力」にあると考えて良いでしょう。
「超難関中学のおもしろすぎる入試問題」
松本亘正、平凡社新書、940円+税
東京でタクシー運転手になるコツ(開成)や、フレンチのフルコースの順番とマナー(慶應)など、大人も驚きの珍問・名問に挑戦してみよう。超有名講師による予想問題&対策つき。
~編集者からのメッセージ~
超難関中学の問題からは、授業の質の高さと幅の広さが伝わってきます。教科書にはのっていない「自由な発想」は、家庭でどう培っていけばよいのか。大人もクイズ感覚で解いてみることで、生活のなかでの合格対策法も見えてきます。ぜひ、お子さんと一緒に挑戦してみてください!
松本 亘正(まつもと ひろまさ)
1982年、福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。
大学在学中の2004年に中学受験専門塾ジーニアスを設立。東京、神奈川に7校舎を展開し、首都圏の中学を中心に高い合格実績を誇っている。著書に『合格する親子のすごい勉強』(かんき出版)、『合格する歴史の授業』上・下巻(実務教育出版)などがある。トライグループの映像授業「TryIT(トライイット)」社会科担当。
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