第15回 受験塾の前に並ぶ外車の列、あなたは何を思う?

子どもの能力を引き出す、やる気にさせる上手なほめ方・叱り方

第15回 やる気を引き出す「子どものほめ方・叱り方」(2013年7月12日)

塾の送迎車

先日、若い友人に私がインターエデュで連載をしていると話したら、彼女、こんなことを言っていました。
「うちのそばに有名な受験塾の教室があって、毎晩ベンツとかBMWとかがズラ~ッと並んでてすごいですよ。あれ、お迎えの車なんですよね。私も結婚して子ども作ったら、あんなふうになるのかなあ? いや、とてもとても、私なんてなれっこないですよね(笑)」

塾の前の道路に高級車が並んでいるというのは、東京ではもうありふれた光景です。私も最初はびっくりしたけれど、「親が子どもを迎えに行くのは当たり前だし、その親が高級車を持つ経済力のある人なら当然そうなるわけだ」と思い直した記憶があります。とはいえ、片方に暗い道を地下鉄の駅に向かう小学生がいて、もう片方に外車に乗り込む小学生が見えると、「ああ、小さいうちから厳しい現実を見せつけられるのだなあ」と思ったものです。

でも、もっと家庭の経済状態による違いを見せつけられたのは、受験が終わってからのことでした。塾での成績がそれほどでもなかった女の子が意外なほど偏差値の高い名門校に受かったので、「おめでとう」とお祝いを言ったときのこと。そのお母さん、満面の笑みで、
「実はここだけの話だけど、最後の半年間は家庭教師もつけてたの」
なるほど、いつも親子でブランドものを身につけているご家庭ならでは勝ちパターン。

そうなんです。塾の前の外車などより、もっとはっきりお金の力を見せつけられるのが、実は家庭教師。塾に加えて家庭教師ともなると、相当余裕のある家庭だけの特権です。それに定評のある家庭教師だと、東京ではお金持ち同士の争奪戦になっているらしく、早めに手をつけておかないとダメという話も聞きました。

お金がかかる中学受験には、家庭の経済状態の差をあからさまに子どもに見せてしまう残酷な面が確かにあります。でも、そのことをお伝えしたくて書いているのではありません。その逆です。実は、塾に通う子どもたちを観察していて、「子どもって、大人ほどそういうことを気にしていないんだな」と私は感じたのです。

「かっこいい外車だ」とか「家庭教師もやってんだ。あいつ大変だな」とか、子どもが言ったとしても、子どもは単純な感想を言っているだけのこと。親が、「外車ばっかり。お金持ちが多いってことよ」とか、「あそこのうちはお金があるから、高い月謝の家庭教師頼んでいるの」とわざわざ説明しない限り、自分と友だちをお金の面で比べるという発想は、子ども自身からはあまり出てこないと思います。
だとしたら、わざわざ大人の世知辛い発想を、子どもにうっかり話すようなことはしないほうがいい、そんなふうに思うのです。

<<プロフィール>>高木 潤子(たかぎ じゅんこ)
若いころから週刊誌・女性誌で、子育て・インテリア・料理など幅広い分野の記事を取材執筆。仕事量を減らして二児を育て、インターエデュはお受験ママとして活用。現在も取材・編集・執筆と幅広く活躍中。

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