第17回 中学受験に有利な子どもってどんな子?
第17回 やる気を引き出す「子どものほめ方・叱り方」(2013年7月26日)
うちの子が通っていた公立の小学校に、ほぼオール5という成績の女の子がいました。家は商店街で家族経営のお店を営む庶民的なご家庭。とくに教育熱心というわけでもなく、その子は5年生まで塾に通っていませんでした。
6年生になってさすがの親御さんも、クラスでいつも一番の娘のことを考えたのでしょう。「私学に行かせる余裕はないけれど、都立の中高一貫校なら」と、塾に通わせることにしました。端から見ていた私は、「6年生からの塾通いでも受かるのかなあ?」と思っていたのですが…やっぱりダメでした。「今の中学受験は、学校の成績がどんなによくても、それだけで受かることはないのだなあ」と実感したのです。
都立の試験は分析力や文章力をみたりするもので、詰め込んだ知識を問う私立とはだいぶ違います。問題を作る側にいくら受検が過熱しないようにという意識があったとしても、受検する人が多くなれば、その人たちに有力な情報を提供しようと塾ががんばります。結果、都立特有の受検対策ができるわけです。この流れは、もう、誰かひとりの力ではどうしようもありません。
そして、このことは、もうひとつの事実を教えてくれます。つまり今の中学受験、難関校に限って言えば、どんなにその子が生まれつき頭がよくても、先天的な才能だけで合格できるようなしろものではないということ。難関校にすんなり入るためには、頭がいいことに加えて受験勉強が必要なのです。
今は、両親とも中学受験を経験し、難関校から名門大学へ行ってエリートとして働いているという家庭も多く、そういう家庭で、「わが子も同じ道を」と望まれるのは当然のことだと思います。そんなお母さんのひとりが言っておられました。
「私のころは、今に比べると本当に牧歌的だった。私は塾で学校とは違う友達ができるのが楽しかったし、親だって塾の成績順位でいつも1番から10番までに入っている名前を見て、『すごい子がいるもんだねえ』と感心していただけ。でも今はそんなんじゃダメ! 塾がアドバイスしてくる勉強の量はハンパじゃないから、親としてもそれなりの環境を整える必要があるし、情報収集だって必要。親子で受験する覚悟みたいなのがないとダメよね」
先に書いた女の子も20~30年前だったら、難関校に受かっていたのかもしれません。ただ、そのお母さんが言っていた次の言葉は、今も昔も変わらないようです。
「小学生時代って、その子によって成長の程度にずいぶん差があるでしょ。うちの場合、上の子はおませさんだったから受験するって気持ちもしっかりしていたけど、下の子はなんだかまだ幼くて親が受験させてる感じがしたの。案の定、上は受かって下は落ちた。ふたりとも高校生になったけど、今は下の子のほうが成績もよくて、地頭がいいような気がしているの。中学受験って、結論、成長の早い子が有利なんだと思うの」
<<プロフィール>>高木 潤子(たかぎ じゅんこ)
若いころから週刊誌・女性誌で、子育て・インテリア・料理など幅広い分野の記事を取材執筆。仕事量を減らして二児を育て、インターエデュはお受験ママとして活用。現在も取材・編集・執筆と幅広く活躍中。
やる気を引き出す「子どものほめ方・叱り方」 アーカイブ
- 2013年4月5日 第1回 テストで、どうしていい点とれないの?
- 2013年4月12日 第2回 「勉強しなさい」で、子どもが勉強したら、誰も苦労しない
- 2013年4月19日 第3回 子どもを比べて叱るのはNG。でも大丈夫な方法も!
- 2013年4月26日 第4回 ほめる子育てだって、よくないときも
- 2013年5月2日 第5回 子どもに「バカ!」と言っていいとき悪いとき
- 2013年5月10日 第6回 中学受験が、反抗期に重なったら
- 2013年5月17日 第7回 成績がふるわないから受験をやめる…。それでいいの?
- 2013年5月24日 第8回 叱られ慣れた子は、成績が伸びないかも
- 2013年5月31日 第9回 子どもに協力して得意科目を作りましょう
- 2013年6月7日 第10回 『頑張ってるね!』結果ではなく経過をほめよう
- 2013年6月14日 第11回 お父さんが間に入ってなぐさめる
- 2013年6月21日 第12回 子どもは、過酷な受験生活にも順応する能力を持っている
- 2013年6月28日 第13回 「入塾テスト」は、中学受験を目指す親子の最初の関門
- 2013年7月5日 第14回 わが子をほめることができないお母さんたちへ
- 2013年7月12日 第15回 受験塾の前に並ぶ外車の列、あなたは何を思う?
- 2013年7月19日 第16回 いろんな親御さんがいます。でもお母さんはブレないで!
- 2013年7月26日 第17回 中学受験に有利な子どもってどんな子?
- 2013年8月2日 第18回 「どうして」という叱り方、やめませんか?
- 2013年8月9日 第19回 「なんで解けなかったの?」もNGワードに
- 2013年8月16日 第20回 わが子だからこそ言ってしまう「どこも受からないよ」
- 2013年8月23日 第21回 テストは点数だけを見て叱ってはいけない
- 2013年8月30日 第22回 学校のレベルをバカにしていませんか?
- 2013年9月6日 第23回 親の器が試される中学受験、つらさはまず親が克服して!
- 2013年9月13日 第24回 親の一言が、子どもの“やる気スイッチ”を切ることがある!
- 2013年9月20日 第25回 言ってはダメ! 子どものやる気を削ぐ親の一言
- 2013年9月27日 第26回 受験前の6年生は叱らないで! 親の仕事はほめて励ます
このページが役に立ったと思ったら「いいね」や「ツイート」をお願いします