ようやくスタートした学校。お子さまの体調管理で気をつけたいこととは?
inter-edu’s eye
長かった休校期間がようやく終わりました。
でも、せっかく学校が再開したものの、子どもが以前より疲れやすくなったり、登校を渋ったりしているという保護者からの不安の声が多く寄せられています。
そこでエデュナビでは、養護教諭養成・学校保健の専門家である、国士舘大学の鈴木裕子教授に、子どもたちへのケアについて教えていただきました。
子どもたちの運動不足・体力低下に心配の声
6月3日に掲載した座談会「学校休校中の家庭学習ママたちの本音座談会!」では、「休校中朝起きるのが遅くなった」「家にいることが多く運動不足気味」といった声がありました。
毎日の登校で保たれていた生活リズムが崩れ、また日常の生活の中での運動量も激減。子どもたちが時間も体も持て余してしまっている様子が伺えました。
学校が再開してからは「子どもがすごく疲れて帰ってくる」「学校の登校日、子どもが体を動かしていたら突然背中の痛みを訴えた。運動不足だから?」「マスクをしていると子どもたちが暑くてフゥフゥ言いながら帰ってくる。6月でこれなら8月どうなるの?」と、子どもたちの疲れや運動不足を心配する声や、暑さの中、マスクをつけて登校することについての不安の声が寄せられました。SNSなどでも同様の意見が多く見られました。
国の専門機関である「国立成育医療研究センター」が行った全国アンケートの結果からも、学校休校が子どもたちに与えた影響を知ることができます。夜寝る時間、朝起きる時間は、去年と比べてどうかという質問に対して、「ずれた」と答えた小学生が全体の61%を占めることがわかりました。
(参照元:国立成育医療センター「コロナ×こどもアンケート」第1回調査報告書)
子どもたちの不調に気づけるのは保護者
では、家庭ではこれからどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。鈴木教授にお聞きしました。
インターエデュ(以下:エデュ): 学校が再開してから、疲れやすい、学校に行きたくないと訴えたり、口には出せずとも「こころの不安」を感じたりしている子どもが多いようです。その理由はなんでしょうか。
鈴木教授: 約3か月間も続いた休校期間。その生活になじんでいればいるほど、環境の変化で疲れやすくなったり、心身に何らかの症状が表れたりするのは普通のことです。大人だって慣れないことをすると疲れますよね。原因は、小さなお子さまなら体力的な問題もあるかもしれません。ですが、多くはストレスによる自律神経のバランスの崩れです。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり緊張とリラックスのバランスをとっています。ストレスがかかると交感神経が優位になって体は緊張し、血圧が上昇したり心拍数が増加したりして疲れを感じやすくなります。子どもたち自身も楽しみにしていた学校再開ですが、いざ始まってみるとやはり、家庭で過ごすのとは異なる緊張感やストレスもあることでしょう。
また、学校生活そのものも、感染防止のためにいろいろな約束ごとがあり、以前とはかなり様子が違っています。さらに分散登校も生活リズムを乱しています。クラス替えがあった場合、新しいクラスの友だちや担任の先生との学校生活に慣れるのにも、通常より時間がかかります。新1年生ならなおさらでしょう。
一般に子どもはこころの不調や不安をうまく言葉で表すことができずに、それが身体症状となって表れることが多いものです。私が小中学校で養護教諭をしていた当時も、「お腹が痛い」と言って保健室に来る子どもは多くいました。その腹痛の原因が、心理的な要因からくるものだと考えられるケースがとてもたくさんありました。ですから、心因性の腹痛自体は誰にでも起こりうることなので、あまり心配しないでください。
普段から、子どもの様子をよく見ていれば、「あれっ、何かいつもと違う?」と感じる場面があるのではないでしょうか。ちょっと元気がないみたい、ご飯が進まない、無口になっている、今日はなんかグズグズしているなぁ…など、そういったサインは、毎日お子さまと接している保護者の方だからこそ気づけること。その直感はだいたい当たるものです。自分の直感を信じて、お子さまを気づかってあげてください。
またそのようなときに、すぐに、「何かつらいことがあったのでは?」「こころの問題?」などとあわてないでください。まずは熱や顔色などを確認し、体調に問題ないかどうか確かめてください。お子さまの額に手を当てたり、肩や背中に触れたりしてみると、実は発熱していた、という場合もよくあります。保護者の方がお子さまに触れることは、スキンシップにもなります。それだけで安心感を得られるお子さまも多いので、嫌がられない限り、どんどん触ってあげてください。「おなかを触ったらくすぐったがって、それで元気になっちゃった」ということもあります。
まずは体調面での問題がないことを確認するのが先決。その上で次に心理的な問題の可能性を考えましょう。
とはいっても、子どものストレスは多くの場合一過性のものです。保護者の方とのふれあいで安心して、ゆっくりよく休めば、早ければ1日、長くても数週間のうちには回復するでしょう。ご家庭でリラックスして過ごせるよう、穏やかに接するように心がけたり、一緒に楽しく過ごしたりしてください。心配な気持ちはわかりますが、学校での出来事をあれこれと問いただしたりするのはNGです。
エデュ: 子どもの学年によってこういったときの接し方は変わりますか?
鈴木教授: 低学年のお子さまの場合は、まだ自分がどんなことに困っているかなど不調の原因を上手に言語化できません。子どものとりとめない話にただうなずいてあげたり、ぎゅっと抱きしめてあげたりするだけでよいです。それだけで、子どもはホッとして落ち着きます。逆に保護者の方が不安になったりイライラしたりすると、それをお子さまは敏感に察知します。そしてお子さまもますます不安定になってしまうでしょう。
高学年になると、思春期にさしかかり、親とあまり話をしなくなるお子さまもいます。でも、ご家庭に安心して話せる雰囲気さえあれば、気がかりなことや、悩みが出てきたときには、きっとお子さまの方から話してくれるのではないでしょうか。また「これから話をするぞ!」というように改まって話をするのではなく、おやつを一緒に食べる、家事や何かの手作業などをしながら、何気ない会話の中からぽろりとお子さまの本音が出てくるというのもよくあることです。
話の内容にもよりますが、お子さまにとって重要そうな話になりそうだったら、一度、その時にしていたことの手を止めて、「私は大切なあなたの話を真剣に受け止める準備ができている」という姿勢を示しましょう。
お子さまの学年を問わず、どうしても心配な様子が続くようなときは、担任の先生や養護教諭(保健室の先生)に相談してみるのもよいでしょう。ご家庭では見られない学校でのお子さまの様子を知る先生と、一緒になって考えていけるような協力体制を築きましょう。家での様子については、推測を交えず事実のみを伝えるようにすることが大切です。
エデュ: これから本格的に暑くなりますが、気をつけることはなんでしょうか。
鈴木教授: 暑さに体が慣れていないこの時期は、急に暑くなる日が要注意です。熱中症予防には水分と塩分の補給が大事なのはもちろんですが、私は日ごろからの体づくり、特に食べ物が大事だと思っています。大勢の子どもを見ていると、やはり、好き嫌いをせず何でも食べる子は暑くても元気です。ビタミンB1がよいなどと言われていますが、特定の食材というより、いろいろなものを少しずつ食べれば、自ずとビタミンやミネラルのバランスは取れます。
好き嫌いについては、食わず嫌いの子も意外と多いように思います。家族や周りの人が「おいしいね」と言って食べていると、つられて食べられるようになったりします。
マスクについては、一定の効果があるのは確かなようですから、原則はマスクをしたほうがよいのでしょう。ですが、本当に暑くて息苦しいときもあります。そんなときは、周りの状況に注意しつつ、少しの間、マスクを外して深呼吸してもよいかもしれませんね。混雑した車内や店内など人ごみの中にいるときや、不特定多数の人と対面するような場面以外では、あまり神経質にならなくてよいのではないでしょうか。
特に屋外で運動したり遊んだりするときには、一時的に外してもよいと思います。ただ、お子さまの場合、一度マスクを外してしまうとそのまま忘れてしまうことも多いので、その点は、要注意かもしれません。
鈴木 裕子 氏
国士舘大学文学部教育学科教授。小・中・養護学校(特別)支援学校で養護教諭として勤務。その後、教育委員会健康教育課指導主事を経て2018年より現職。
国立成育医療研究センターでは、先に述べた第1回のアンケートに続いて、第2回の調査をただいま実施中です。Web上で入力するアンケートで、所要時間は15~25分程度。7月19日が締め切りです。ご興味のある方はぜひ参加してみてください!
※詳しくは、「『コロナ×こどもアンケートその2』協力者募集のお知らせ」をご覧ください。
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