伝統教育と変革へのチャレンジ精神!聖心女子学院

inter-edu’s eye
第9回では、白金台にある聖心女子学院の大山江理子校長にインタビュー。初等科から高等科までの12年間、8年間を一緒に過ごす私立女子校の教育内容や、将来育ってほしい人物像などをうかがってきました。

生徒、保護者の未来を拓く変革

2008年からスタート「4-4-4制」とは?

聖心女子学院1
聖心女子学院 大山江理子校長

エデュ:まずは貴校の教育の特徴を教えてください。

大山校長:本校はカトリックミッションスクールとしての伝統に基づき、キリスト教の価値観を土台に一人ひとりの子どもを大切な存在として見守り、魂・知性・実行力のそれぞれを伸ばしていく教育を行っています。また世界や社会の変化に対応するために、常に変革へのチャレンジ精神を持ち、新しい教育を実践しているのも本校の大きな特徴です。

エデュ:具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

大山校長:たくさんありますが、とくに特色となっているものをお話しします。
1つ目は、「4-4-4制」です。これは学校創立100周年を迎えた2008年から取り入れた新しい体制で、1~4年生をファーストステージ、5~8年生をセカンドステージ、9~12年生をサードステージとして3つのステージに区切り、発達段階に合わせて成長を見守るというものです。とくにセカンドステージでは初等科5・6年生と中等科1・2年生が一緒に活動しますが、この区切りは他校にはない組み合わせだと思います。女子は4年生から5年生で発達の段階が顕著に区切れます。4年生までは子どもらしいですが、5年生からは思春期になります。この女子にとって発達段階の重要な区切りの時期を1つのチャンスとしてとらえ、女子の持つ力をより大きく伸ばす教育をするために取り入れました。各ステージに独自の行事を設け、異学年交流を深めています。

2つ目は2016年4月に開設した学童保育「ジョアニークラブ」です。これは初等科の1~6年生を対象に放課後利用できるもので、宿題をしたり違う学年と交流したりして、家庭的な雰囲気の中で過ごします。今年度は、「お弁当の注文制」も開始しました。本校はお弁当持参を原則としていますが、週2回、ご希望のご家庭はお弁当を注文できるようにしました。お母さまがお仕事をもたれるご家庭が増え、社会で貢献する女子を育てる学校として、お母さま方のサポートになればと取り入れました。

エデュ:共働きのご家庭は助かりますね。今後変えていきたいところはありますか?

大山校長:「ICT教育」です。これはすでに始めていて、5年生から1人1台のiPadを持つことにしています。今は授業で辞書として使ったり、社会科の調べ学習でインターネット検索をしたり、体育では友達の動作を動画として撮り、あとで見たりといった使い方をしていますが、今後はもっと活用して学びの幅を広げていきたいと考えています。

女子校の強みとは?

自分としっかり向き合える12年間

聖心女子学院2

エデュ:入学される方は、どのようなお子さまやご家庭が多いのでしょうか?

大山校長:外で元気に遊ぶのが好きな子ども、大人しい子どもと様々です。ただ、保護者は教育への関心が非常に高い方が多いと感じます。先を見通して、初等科からはじまり高等科を卒業するときにどういった女性になるのか、尋ねられることがあります。

エデュ:そういった声にはどのようにお答えしているのでしょうか?

大山校長:「女子教育に特化した場で、女子のための教育ができる点」をお話ししています。6歳から18歳までの12年間は長いようですが、その後の一生はもっと長いのです。18歳までに伸び伸びと楽しみながら、女子だけが持つ可能性に気が付いていくのは貴重な時期だと思います。

これはある高校3年の生徒が話していたことですが、共学校に通う友達の文化祭に参加したあとに、「友達はクラスメイトの男子の目が気になるようでしたが、私たちにはそれがない。その分自分に向き合う時間がたくさんあったのが良かった」と話していました。

学校生活で身につけるグローバルマインド

世界30か国147校の姉妹校とのネットワーク

聖心女子学院3

エデュ:毎日大勢の子どもたちを見ていて、これからの時代を生きていくうえで子どもたちに必要だと思う能力は何でしょうか?

大山校長:2つあると思っています。
1つ目は「コミュニケーション能力」です。答えのない課題に直面して、何とか解決しなくてはいけない。それには周りの人との協力が必要になりますが、その時に重要になるのがコミュニケーション能力だと思っています。

2つ目は「人との関わりを作っていく力」です。せっかく良い考えを持っていても、自分の中に閉じこもっていては意味がありません。人と考えを分け合い、行動を作り出していく場に飛び込んでいけるような力が必要だと思っています。

エデュ:貴校ではどのようにしてこの2つの能力を身につけていくのでしょうか?

大山校長:本校では「グローバルマインド(共生の姿勢と広い視野を持ち交流を深めながら、世界の人々と関わり活躍する力)」をキーワードにカリキュラム展開をしています。

エデュ:具体的な内容を教えてください。

大山校長:まずは海外で活躍するために必要になる「語学力」。英語の授業は一切日本語を使用しないで行い、ネイティブスピーカーも指導に加わります。お互いに何とか相手に伝わるように、身振り手振りを交えながら学んでいます。今年度から6年生でも中等科で使っている教科書を使うようになりました。本校では1年生から週2回の英語学習の時間があり、英語に慣れ親しんでいるので、戸惑うことなく楽しく学べていると思っています。来年の1月に行われる英検は、今まで受けていなかった6年生も校内で中・高等科生と一緒に受けられるようにしましたので、結果がどうなるか楽しみにしています。

もう1つは総合的学習として行っている「みこころの時間」です。これは初等科の3~6年生を対象に、「人・自然・世界」に関わる1つのテーマを追求していくものです。3~4年生ではグループでまとめたものを展示発表と舞台でのパフォーマンスによる発表を隔年で実施しています。5年生では個人で研究したものを模造紙で表現するポスターセッション。そして6年生では5年生よりさらに詳しく、1年間個々のテーマに沿って研究した内容をプレゼンテーションします。自分で興味を持った内容を調べる探求の学び方を学年ごとに身につけていけるのはもちろんですが、同時に自立心も身につけることができます。

これら以外にも世界30か国147校の姉妹校がありますので、そのネットワークを活かし、姉妹校交流や留学制度なども設けています。語学力はもちろん大切ですが、私たちが育てたいのは中身=心です。世界の姉妹校と協力し、聖心という1つの教育の価値観を共有している仲間と交流する中で、「日本人の私には何ができるのか」を実体験の中から学び、子どもたち自身に実感させたいと思っています。

聖心女子学院データ

学校名 聖心女子学院
男子・女子・共学 女子
所在地・アクセス 〒108-0072 東京都港区白金4-11-1
東京メトロ南北線・都営三田線「白金台駅」2番出口徒歩10分
教育理念 聖心女子学院は、一人ひとりが神の愛を受けたかけがえのない存在であることを知り、 世界の一員としての連帯感と使命感を持って、より良い社会を築くことに貢献する賢明な女性の育成をめざします。
制服の有無
給食の有無 なし

編集部から見たポイント

都心でありながら緑があふれる落ち着いた環境で、12年間じっくり行われる女子のための教育カリキュラム。「まだまだやりたいことがたくさんあります」と、大山校長は話します。この熱意が今後どのような形になっていくのか、期待の高まる取材となりました。

中学受験・子育てをよりわかりやすくサポート!エデュナビはリニューアルいたしました!

エデュナビから皆さまへ

いつもエデュナビをご覧いただきありがとうございます。
この度「エデュナビ」は、リニューアルいたしました。

URLが変更になっているので、ブックマークやお気に入りの変更をお願いいたします。
これからも、皆さまの受験や子育てをサポートできるよう、コンテンツの充実とサービスの向上に努めてまいります。