長時間の部活は大丈夫? 勉強との両立、部活の在り方を考えよう
inter-edu’s eye
教員の長時間労働や子どもたちへの負担などから、今、部活を巡ってさまざまな議論がなされています。
中学校、高校の学校生活に大きな影響を与える部活。親としても、部活の在り方について考えていきたいところです。そこで今回は、勉強と部活の両立の悩みや、部活に関する意識調査から見えてきたことをまとめました。
知りたいのは、勉強と部活を両立するコツ
中学に入ったら勉強も部活も両方頑張る!と宣言していたのに、疲れ果てて今日も勉強せずに寝てしまった…。何とかしてあげたいけど、反抗期で余計な口出しはできないし…。
このような声が親御さんからよく聞かれます。
実際、保護者、生徒、顧問の先生の部活に対する意識を調査した、スポーツ庁の平成29年度「運動部活動等に関する実態調査」集計状況結果においても
■ 運動部生徒の保護者が、部活動に関する悩み(複数回答)について、
・「学業との両立」と答えた割合は3~4割程度
という結果がでており、悩んでいる親御さんが多いことが分かります。
そして、勉強と部活の両立に関する悩みの中で一番多いのは、勉強時間の確保と効率の良い勉強の仕方でしょう。
公立校では、部活の活動日は週6日のところが多く、活動時間も長い傾向にあります。また私立校では、ハードな部活でなければ平日の休みもあり、活動時間も公立校よりも比較的短いですが、通学時間が長い傾向にあります。どちらの場合も、忙しい毎日の中でいかに効率の良い学習を行うかがカギとなります。
ではどのように考えたらよいのでしょうか。
掲示板「【4229370】部活と勉学を両立された先輩方へ」へ寄せられた投稿から、両立のコツをまとめました。
勉強と部活の両立のコツ
・授業をしっかり聞ける集中力を保つためにも睡眠時間をしっかり確保する。
・予習、復習を短時間でもいいので毎日行うこと、特に数学・英語は手を抜かない。
・特に運動部は早めに就寝して、疲れが取れた朝に勉強する。
・塾通いが難しいようなら、参考書や通信教材で学習を補い、継続する。
・隙間時間を有効活用、学校の空き時間は勉強の時間に充てる。
・やる時間、やることを決めて、毎日短時間でも学習を行う習慣を身につける。
公立校と私立校では学習環境が異なりますので、各ご家庭やお子さまの状況に合わせて一番良い方法を、一日のスケジューリングを含めて考えて行きましょう。
しかし、反抗期の子どもに「勉強しなさい」はほぼ通用しないので、朝食、夕食の時間を決めたいからと相談ベースで話を切り出すとよいのではないでしょうか。
また、掲示板「【1740896】中学生の帰宅から就寝までのスケジュール教えてください」に寄せられた一日のスケジュールを見ると、私立校・公立校問わず、かなりハードな毎日を送っていることが分かります。
このような環境下で努力することで、時間の使い方がうまくなる、部活で体力と忍耐力がついて勉強にも活かせる、それが将来に役立つと、プラスに考える親御さんは多いでしょう。
実際、文部科学省の平成29年度全国学力・学習状況調査の結果によると、
1日当たり、1時間以上2時間より少ない時間、部活をしている生徒の平均正答率が最も高く、2番目には2時間以上3時間より少ないが位置し、下から2番目には、3時間以上、部活を全くしないが最も正答率が低い
という結果が出ています。
適切な時間で部活を行うことは、勉強にもよい影響を与えていることが分かります。
親・子ども・教員が考える部活とは
では、部活に期待されていることは一体どんなことでしょうか。
同じくスポーツ庁の実態調査によると、
■ 中学校の運動部生徒の保護者が、学期中における休日の好ましい活動時間について、
「原則活動しない」と答えた割合は、
・土曜日では、公立が1割未満
・私立が約1割、日曜日では、公立が約3割、私立が5割弱
という結果が出ており、大多数が土曜日は部活があってもよいと答えながらも、学業との両立に悩む割合が比較的多いことから、部活も勉強も頑張ってほしいという親御さんの気持ちがうかがえます。
また、そのように思う背景には、わが子の人としての成長への期待があるようです。
■ 公立学校の運動部生徒の保護者が、部活動に最も期待すること(複数回答)について、
・「チームワーク・協調性・共感を味わう」と答えた割合は、中学校・高等学校ともに7割強
・「社会性(挨拶・礼儀等)を身につける」と答えた割合は、中学校・高等学校ともに6割弱
・「大会等で良い成績を収める」と答えた割合は、中学校・高等学校ともに2割弱
私立校でもほぼ同様で、部活を通じて人としての成長を求めていることが分かります。
一方で生徒の調査結果では、
■ 公立学校の運動部生徒が、運動部に所属する最大の目的について、
・「大会等で良い成績を収める」と答えた割合は、中学校・高等学校ともに約3割
・「体力・技術を向上させる」と答えた割合は、中学校・高等学校ともに2割強
・「チームワーク・協調性・共感」と答えた割合は、中学校・高等学校ともに2割程度
私立中学校では、「体力・技術を向上させる」が「大会等で良い成績を収める」よりも若干高い数値になっていますが、高校では公立も私立も「大会等で良い成績を収める」が多くなっており、見える結果を重視していることが分かります。
結果を求めて努力することも大切ですが、お子さまが、まわりの評価を得たいという気持ちが強く、結果に囚われすぎているようでしたら、親として部活に何を期待しているのかを伝えることも大切です。
部活の活動時間においては、
■ 中学校の運動部生徒が、学期中における平日1日当たりの活動時間について、
・公立では「2~3時間程度」と答えた割合が5割弱、「3~4時間程度」と答えた割合が約2割
・私立では「1~2時間程度」と答えた割合が約4割、「3~4時間程度」と答えた割合が約2割
となっています。公立中学校では、下校時間がだいたい16時前後なので、例えば3時間だと19時終了、支度して家につく時間は19時半~20時頃。2時間であれば、帰宅は18時半~19時頃。 そう考えると、2時間と3時間ではずいぶんと家についてからの過ごし方が変わってきますね。
では、運動部顧問の先生は、部活への自身の取り組みについてどのように感じているのでしょうか。
■ 運動部の主担当顧問教員が、部活動に関する悩み(複数回答)について、
「校務が忙しくて思うように指導できない」、「自身の指導力不足」、「校務との両立に限界を感じる」、「自身の心身の疲労・休息不足」、「自身のワークライフバランス」 と回答した割合はいずれも4~5割程度
約半分近くの先生がこのように思っているのは、やはり問題視していくべきでしょう。
学校・部活・塾の毎日から一歩先へ
中高生の生活は部活なしには語れないほど、大きな影響力があります。しかし、その在り方について議論されるようになったのは、つい最近のことです。
2017年1月6日には、文部科学省から部活動休養日の設定について、各都道府県教育委員会などに向け休養日の適切な設定を呼びかけるよう通達が出されるなど、改善に向けて政府も動き出しています。
しかし、調査結果で明らかになった部活顧問の負担は、やる気ある生徒、応援する家族、それに応えることにやりがいを感じる教員という、一見好ましく思われる状況の中で表沙汰になりにくい現状があります。
また、子どもたちは学校という枠組みの中で、勉強で評価されないのなら部活で良い成績を残そうとのめり込んでいき、長時間やることで、自己肯定感を高めようとする傾向もあります。
親としても今一度、わが子がどのように部活動に取り組んでいるのかを把握し、どうあるべきか考えていきたいものです。
グローバル化が叫ばれ、多様性が求められる時代。さまざまなものの見方ができるように、学校・部活・塾だけの学生時代ではなく、いろいろなものを見たり、聞いたりして、もっと社会に目を向けたくなるような環境を子どもたちに用意してあげたいですね。
■参照サイト:スポーツ庁「平成29年度「運動部活動等に関する実態調査」集計状況結果」
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