中学受験、6年生の春から夏までにやるべきこと【4教科ガイド】
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中学受験を目指す6年生のご家庭は、入試本番まで約10か月となりました。大手塾では土曜特訓や日曜特訓が始まり、模試やテストの回数がますます増えていきます。配布された塾のスケジュールとにらめっこしながら、どのような学習スケジュールを立てたらよいのかと悩んでいるご家庭も多いことでしょう。そんなお悩みを解決するヒントを探るため、中学受験専門の個別指導教室SS-1の会員限定セミナー「4月から6月、何をやるか、どうやるか」に潜入取材してきました。
6年生の4~6月は「移行期」。学習方法の見直しが大切
6年生の4月から6月までというのはどういう時期なのでしょうか。その説明がセミナーの冒頭にありました。
馬屋原先生:「6年生の春というのは、今まで知識を身につけるインプット中心の学習だったのが、徐々に問題演習型の学習、つまりアウトプットが学習のメインとなっていく移行期です。そのため、今までと同じような学習方法だとつまずいてしまうお子さんもいます。そして、プラスにもマイナスにもほかのお子さんと比べて差がつきやすい時期でもあります。なぜかというと夏休み以降はみんなが頑張るからです。」
6年生の夏休みは「受験の天王山」と言われます。この時期は受験生みんなが頑張るため、受験生が全体的に伸びていきます。近年中堅校以上が激戦となり、わずかな差で合否が決まることもあります。ですから、各自の勉強の量や質に差が出やすい春のうちに一歩でもリードしておくことは重要です。
では、この移行期である4月から6月までに「何を」「どうやっていけば」よいのでしょうか? 算数・国語・理科・社会について、講師の方のアドバイスをまとめました。
算数…典型題の解法知識の定着と演習
講師:木内伊都子先生
2019年の入試傾向を踏まえ、志望校で算数の合格点を取るためには、夏休みまでに「①ミスを減らす、②苦手単元を作らない、③少し問われ方が変わってもできるようにする」という学習が重要課題です。
①ミスが多いお子さん
お子さんによって、ミスの原因や仕方はさまざまです。式や筆算の書き方が原因のミスが多いのですが、そのほかにも、テスト中に緊張してミスをする、音が気になり集中力が途切れてミスをする、解けたと思ったときに目線が次の問題にいってしまって、最後の計算や単位などでミスをする、問題を最後まで読まずに自分が知っている問題だと思い込んでミスをする、などそれぞれです。まずお子さんの保護者がどこでミスをするのかに気づいて、それを意識して直していけるようにすることが大切です。
②苦手単元が多いお子さん
苦手な単元は、問題を解くための図の書き方や考え方、解くためのポイントがわからないまま、暗記で解こうとしていることが多いです。
苦手単元が3つぐらいに絞れる場合は、解法を「忘れている」ケースが多いため、5年生の教材に戻ってその単元をやり直します。それ以上ある場合は、そもそも公式など、解くための前提となる知識がないことが多いので、各単元の例題を中心に、ノートに公式や問題文を整理するための書き方をまとめて、自分なりの参考書を作っていくとよいでしょう。
③問われ方が変わると解けなくなるお子さん
お子さんが塾から帰ってきたときに、1問だけでもどうやって解いたかを説明してもらいましょう。自分で解き方と、その根拠を説明できる問題が増えてくると、問われ方が変わったときにも点を落とすことが少なくなります。
【何をやるか、どうやるか】
5年生までは単元ごとの知識を使って問題を解く学習だったのが、6年生の春から夏までは典型題の解法知識の定着と演習を行う時期になります。8月に入ると入試問題の準備として応用問題を使った演習を行い、9月から志望校の過去問を使って点数を取っていく練習に入ります。この時期に、塾の授業が分からない、復習に時間がかかる場合は早急に対処が必要です。特にゴールデンウィークには苦手単元の克服に取り組み、②の学習(5年生の教材に戻ってのやり直しや、自分なりの参考書を作ること)に注力することをおすすめします。
国語…つまずきポイントを見極め、学習サイクルを定着させる
講師:山中若菜先生
国語はつまずきポイントが見えにくい教科です。たとえば、ひと口に「読むのが遅い」といっても、言葉の意味が分からないから遅いのか、読んでいるうちに読解ではなく読書になってしまって時間配分を忘れてしまうから遅いのかなど、原因がそれぞれ異なるのです。まずはそのつまずき部分の原因を見極め、それぞれに応じた対策をとっていくことが大事です。
【何をやるか、どうやるか】
国語の力というのは、ベースに「語彙」や「言語知識」があって、その上に「読む力」→「解く力」→「書く力」と積み上がっていくものです。よって、ベースとなる語彙や言語知識が不足していると伸び悩みます。漢字や語彙の問題で2割以上失点しているお子さんの場合は、何はさておいてもその部分が最優先の強化ポイントということになります。どうしても後回しにされがちなのも確かですが、もし、漢字や言語知識の学習が習慣化されていないのであれば、積極的に見直していただきたいところです。
また、ひと口に「読む力」を伸ばすと言っても、つまずきポイントによって、「接続語や指示語に注目する」のか「対比や比喩への意識を高める」のか、千差万別です。「解く力」も同様です。「書く力」を鍛える際も、何をどう書けばよいのか分からないお子さんと、書いても点がもらえないお子さんとでは、やるべきことは異なります。
お通いの塾にもよりますが、一般的に、国語の過去問演習は、ほかの科目と比べると少し早めに始まることが多いようです。国語に苦手意識のあるお子さんは、春のうちに、つまずきポイントをできるだけ具体的に見極め、それに適した対策を塾の先生などとご相談されることをおすすめします。
理科…「ただ覚える」のではない勉強方法を身につける
講師:中島恒彦先生
今の中学入試で求められている力は、①知識を正確に覚える力、②知識を組み合わせて「次」を考える力、③文章・グラフか表から意味を読み取る力(因果関係をつかむ力)、④因果関係を文章で表現する力の4つです。知識を頭に叩き込んでさえいれば答えられる一問一答形式の問題よりも、正確な知識をもとに考えさせる問題が多く出されるようになってきています。
【何をやるか、どうやるか】
理科や社会は、算数国語よりも配点が低く設定されていることがほとんどです。そのため、算数や国語の学習に、より多くの時間を割くことになるのは仕方のないことです。だからこそ、理科では「効率のよい勉強方法」を身につけることが重要です。そのポイントは2つです。
①「理解をともなう暗記」
言葉や概念の意味を正確に理解するのはもちろん、植物や生物などについて学ぶときは、なぜそのように分類されているのか、そしてそれぞれがどのように関係しているのかを理解しながら、頭の中を整理して覚えていくことが重要です。中学校の理科の先生たちは、「理解を伴わない暗記」を進めている受験生をふるいにかけるための問題を作っているといっても過言ではない状況です。
②「出題されるポイントを先に覚える」
理科の各単元では、それぞれ出題されやすいポイントがおおよそ決まっています。問題には共通点があり、似たようなことが問われます。たとえば、一般的な花の花びらの数は5枚ですが、チューリップは3枚、アブラナは4枚です。こういった、全体の中で例外や少数派に属するところはよく出題されるので、そこから覚えるというように優先順位をつけることが大事です。
春は、効率のよい学習方法を身につけ、苦手意識から脱却することを目指す時期です。一つでも得意な分野を増やしていけるように、「できそう!」「がんばれそう!」「分かった!」という感覚を積み重ねていきましょう。
社会…「覚えることはどういうことか」を体得する
講師:馬屋原吉博先生
6年の春になっても「テキストを見る」ことが「勉強」だと思っているお子さんは危険です。「覚えるとはどういうことか」がまだ分かっていないお子さんには、赤シートを使ったり、ゴロ合わせや替え歌などを使ったりといったいろいろな覚え方を紹介し、お子さんにあった覚え方を一緒に模索していく必要があります。「~を覚えなさい」と言われたときに、具体的に自分はどんな作業をすればよいのかをイメージできるよう、早めに改善しておきましょう。
【何をやるか、どうやるか】
①暗記のイメージ
覚えた言葉が、引き出しのように頭の中で整理されていることが大切です。地理で言えば、引き出しのラベルが地名で、その引き出しの中に、その土地の特産品が入っている。歴史で言えば、引き出しのラベルが時代で、その時代に起こったできごとや代表的な人物が入っている。その引き出しから反射的にすぐ答えが取り出せるような状態がベストです。
②「地理」の学習の進め方
まず重要地名を覚えます。それから、雨温図と工場地帯・地域のグラフの問題を100%の正答率にするために、日本各地の気候を、その気候が成立する理由とともに覚えます。工場地帯・地域については、工場の種類を具体的にイメージできるようにして、主要な工場都市を覚えていきます。
③「歴史」の学習の進め方
地理の学習では、多くの知識が「都道府県」に紐づくのに対し、歴史の学習では多くの知識が「時代」に紐づきます。すなわち、「時代」が、いろいろな細かい知識をしまっていく「引き出し」になります。そのため、まずは時代をすらすらと言える状態を目指し、そのあと、各時代の重要人物名や出来事、文化などをひとつずつ覚え、各時代のイメージを頭の中に作り上げていきましょう。年号は、原則として積極的に覚えていった方がよいです。
そのスケジュール、お子さんを「幸せ」にしていますか?
各教科のアドバイスを読んで、スケジュールを立てようと俄然やる気になった親御さん! ちょっと待ってください。気をつけておきたいことがあります。馬屋原先生は次のようにアドバイスします。
馬屋原先生:「スケジュールの立て方には大きく分けて2通りあります。1つは、『作業をすべてやらせきるための計画』もう1つは、『子どもの力を最大限に引き出すための計画』です。でも、前者のような計画は、少し想像をしてみればわかりますが、現実的ではないですし、お子さんの負担が大きくなる恐れがありますよね。後者なのであれば、1週間の計画を立てるときには、まっさきに寝る時間を入れることになるはずです。そして『おやつの時間』や『グダグダする時間』など、バッファとなる時間を最初から入れて計画を立てます。
計画を立てることがうまくできなかったら、まずは一週間どう過ごしたのか記録をつけてみることから始めるとよいでしょう。」
学習のポイントがわかっていても、お子さんがつらくなって続けられないなら、意味がなくなってしまいます。お子さんが「幸せ」でいられるスケジュール作成をぜひ心掛けてください。
編集者から見たポイント
今年はゴールデンウィークが10日ということもあり、何をしたらよいかと悩んでいるご家庭は、ぜひ講師の方のアドバイスを参考に学習計画を立ててみてください。苦手科目を克服し、よい学習習慣と勉強の方法を身につければ、夏以降の伸びに期待できるでしょう。今回取材をした中学受験専門個別指導教室SS-1は、大手進学塾の成績を最速で上げ、志望校への合格を実現する「塾のための塾」です。毎月の保護者面談と、完全1対1・常時保護者の見学可という環境での授業を提供しています。渋谷・成城学園前・自由が丘・白金台・下北沢・横浜・大阪・西宮・神戸に教室を展開していますので、気になった方は公式サイトをご覧になってみてください。
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