学校のICT化ってどんどん進むの?:エデュママリサーチ第16回

学校のICT化ってどんどん進むの?2013年9月17日

◆モデル校からは大きな成果の報告が

ICT教育

「教育へのICTの活用」という話、ここ数年、頻繁にメディアをにぎわしていますが、その割に学校はあまり変わりがないみたい、と思っておられる方も多いでしょう。
民主党政権の時代はもちろん、そのずっと前から時の政府は、IT社会、とりわけ教育のITの導入に高い目標を掲げてきました。しかし、省庁間の主導権争いなどさまざまな障壁のために、あまり進まなかったのです。今の安倍政権も、今年6月に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、教育環境自体のIT化を目指しています。具体的には、「一人一台の情報端末」「電子黒板や無線LAN環境の整備」「デジタル教科書・教材の活用」など。どれもだいぶ前から耳にしてきたテーマのような気がします。

ではICTは、教育にはあまり効果がないのか?というと決してそうではありません。一人一台が実現しているモデル校からは、大きな成果が報告されています。そのひとつ、東京港区の青山小学校からは、「算数の標準学力の向上」「授業の効率化」など、さまざまな成果報告があり、校長先生はICTの導入で「学校に元気がでてきたことを実感している」とも語っています。また文科省委託でまとめられている教育現場での活用事例も多数あり、それぞれ成果をあげているようです。

◆子どもは、すぐに答えがわかるのがうれしい

それでは、ICT活用の教育的メリットとは、具体的には何か? ネットでさまざまな報告をチェックしていくと、「基礎学力の向上」と「授業の効率化」が主なメリットのように見えてきました。いろいろなサイトにあったコメントを並べてみると…

・ゲーム感覚で勉強ができる。
・問題に回答するとすぐに正解がわかる。
・紙のドリルではやる気の起きない子供が、やる気になる可能性が高い。
・文字を書くのが苦手な子供の学習意欲を削がない。
・知りたいと思ったことをすぐに調べられる。
・膨大なネット上のデータが百科事典として使える。
・「勉強しなさい」と言わずに興味を持たせることができる。
・勉強のツールがひとつ増えることで親の選択肢が広がる。

中でも基礎学力の向上、つまり「勉強嫌いの子が勉強する気になる」という成果は多くの現場で実感されているようです。従来のスタイル、つまり教科書やノートと鉛筆を使って勉強するというスタイルが身に付かなかった子どもに、勉強する意欲を与えてくれるということです。対してすでに勉強習慣がある子どもは、「すぐに答えがでる」「すぐに調べられる」のがうれしい。考えてみれば、当然のことかもしれません。

◆すべての学校のICT化はまだまだ先?

成果がはっきりしているのに、どうしてこれまで笛吹けども踊らず状態だったのか。その原因は、「お金」と「教える側」にあるようです。

公教育の場で一人一台を実現し、全員が同時にインターネット接続できる環境を整備するには、大変な費用がかかります。それに機種や回線の選定など、決めなければならないことが多数あります。費用がかかる=導入にかかわる企業には大金が入る、となれば、熾烈な企業間競争も生まれます。政府や自治体と企業の間で、今、さまざまなことが起きているのでしょう。

また教える側、特に公立校の先生のITリテラシーは、世間一般と比べても決して高いほうとは言えません。教育のICT化が遅れているのは、現場の先生の多くが「ITを学ぶ余裕がない」あるいは「ITを学ぶ気がない」からでもあります。余裕がない先生とやる気がない先生、どちらが多いのでしょうか。

「お金」と「教える側」の問題は、そう簡単に解消するものではないでしょう。公立の学校のICT化には、今後もある程度時間がかかると予想されます。対して私学や塾などはどんどんICT化していくのかもしれません。今春からジャストシステムが始めた専用タブレットを使う小学生向け通信教育「スマイルゼミ」は、「毎日の学習習慣をつけることが、学力の向上につながります」とアピールしています。前述の「勉強嫌いの子が勉強する気になる」点をしっかりついているのです。

すでに勉強の習慣がつき、ケータイなどでデジタル端末に慣れている子どもにとっては、学校のICT化など、即座に対応できることのようにも思えます。とはいえ、親としては、政府や自治体の動きに対して、それなりに情報収集しておくのが賢明と言えそうです。

エデュママリサーチ アーカイブ