第5回 中学受験の第一人者に、私立中高について聞いてみた!
第5回 中学受験の第一人者に、私立中高について聞いてみた!
inter-edu’s eye
「教育最前線に行ってみた!」では、普段何気なく目にするけど、なかなか行けない教育現場へ、皆さまの代わりに行って取材をしてまいります。第5回は、インターエデュでもおなじみの、中学受験研究の第一人者である、森上教育研究所代表 森上展安先生です。今後伸びる私立中高は?学校選びのアドバイスは?など、私立中高一貫校について色々お話をうかがってきました。
【森上展安先生プロフィール】
早稲田大学卒業。進学塾経営を経て、1987年に「森上教育研究所」を設立。中学入試だけでなく、幅広く教育問題を扱う。
今後、伸びていく学校、衰退していく学校は…
見極めやすいポイント
エデュ:今後、伸びていく学校、衰退していく学校の見極め方を教えてください。
森上先生:まず一番見極めやすい場所は、学校説明会です。実は、学校説明会には大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目は、校長がドンドン引っ張っていくトップ型。2つ目は、複数の先生が登壇して説明するグループ型です。トップ型の場合は校長の話を聞いて、主観でも構いませんので将来性を感じるかどうか、グループ型の場合は、話している内容(とくに今後の方針や目標など)が先生ごとにずれがないかどうかがポイントです。
エデュ:森上先生は私立中高の校長と対談もされているようですが、何か感じることはありますか?
森上先生:私立は公立中学校と違い、他校との差異・自校の特徴を強調しなければ生き残ることができません。それを具現化したものが建学の精神、学校の信念となっており、学校側としてはどうにかして相手に伝えたいと思ってます。
私が会った中で、印象に残っている方々は、必ずおやっとさせる、良い意味でこちらの予想を裏切るお話をしていました。相手に伝えたいという思いが強かったですね。それは対談だけでなく、説明会でも感じてもらえるはずです。「あの校長が話している内容は面白い! 子どもを入れたらどうなるんだろう」と思わせてくれるような学校は入る価値があるのではないでしょうか。
人気のある学校はココが違う!
学校も社会のニーズに対応しないと…
エデュ:人気のある学校は、他校とどのあたりが違いますか?
森上先生:「広報の発信力」と「時代(親御さん)のニーズに合わせて、変化していること」ですね。実は今、一部の学校を除き、伝統校と言われる男子校・女子校の人気が落ちています。
伝統校は伝統校で、もちろん良い所はありますが、やはり時代に即した教育方針を打ち出して実践していないと、厳しいのが現実です。女子校でいえば、女子の社会参画に対し、学校側がどこまで理解を示して育ててくれるのかが、ポイントになっています。逆に男子校では社会に出たら、女性とどのように関わって仕事をしていくのか、女性に対しての考え方について教えていかなければいけません。では新興の学校の方がいいの?と思われるご家庭もあるかもしれませんが、新興校でもこのあたりのニーズを捉えていないと、なかなか厳しいと思います。
あとは、最近ですと「アクティブ・ラーニング」の実施の有無が大きいですね。アクティブ・ラーニングは、生徒のやる気を引き出すために、先生が脇役になります。先生は授業を良くするために頑張り、生徒はやる気になって伸びる、そしてそれを受けて先生は「生徒のやる気を引きだす」ことができてうれしいという良いサイクルが自然とできるので、注目が集まっています。現在、首都圏では約290校中100校が取り組んでおり、保護者からのニーズも高まっているので、ぜひ注目してほしいですね。
エデュ:ニーズに合わせた様々な取り組み(ICT教育)などを行っているにも関わらず、生徒が集まらない例もありますよね?
森上先生:例えば、偏差値が40の学校が2つあったとします。親御さんがどちらかを選ぶ場合に、入ってから偏差値を伸ばしてくれる学校は多くの方に選ばれますが、そのまま伸びない学校は人を集めるのが難しいと思います。いくら様々な取り組みをやっていても、どうしても偏差値は親御さんから気になる部分です。ですので、このあたりを意識していないと学校側は生徒を集められません。
学校選びに対するアドバイス
情報に振り回されすぎている?
エデュ:今の親御さんを見ていて、危惧していることはありますか?
森上先生:ネガティブな方が多いなという印象があります。情報が多すぎて迷ってしまい、少しでも良くない情報があると悲観的に考えてしまう傾向があると思います。これを親御さんが見せてしまうと、子どもにも伝わってしまうので良くありません。例え悲観的に思っていたとしても、お子さんにはそれを感じさせず、お子さんの力を信じてあげることが大切ですね。不安な気持ちは、子どものいないところで、塾の先生や私どもに伝えてください。
エデュ:最後に親御さんに向けてアドバイスをお願いします。
森上先生:親御さんには偏差値だけで判断せずに、自分のお子さんの強みを活かせるような学校を選んでほしいですね。例えばスポーツが得意であれば、スポーツ推薦などで入るのも一つの手ですね。
学校に入る前にベストな選択をしたい!という気持ちは良く分かりますが、重要なのは入った後、その学校がお子さんをどのくらい伸ばすことができるか、そして楽しんで通えるかどうかだと思います。ここを基準に学校選びをすることをおすすめします。
編集者から見たポイント
情報過多な現代、学校選び以外でも情報に振り回され、悩んでしまう経験は誰しもあるものです。大人であれば自分で判断することができますが、中学受験をするお子さまには、なかなか難しいのが現実です。そのときにリードしてあげられるのは親御さんしかいません。本記事を参考に最適な学校選びができるよう、心から願っております。
今回おうかがいしたのは
「森上教育研究所http://www.morigami.co.jp/」です。興味を持った方は、ぜひ一度サイトをご覧ください。
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- 2020年10月27日 わが子が「面白い!」を見つけ、将来に生かしていくには? ~ロボット工学の世界的権威者に聞く~【後編】
- 2020年10月26日 わが子が「面白い!」を見つけ、将来に生かしていくには? ~ロボット工学の世界的権威者に聞く~【前編】
- 2020年9月30日 新しいステージへ! 桜蔭のICTへの取り組み【Vol.3】
- 2020年9月29日 生徒たちの生き方に大きな影響を与える「桜蔭という環境」【Vol.2】
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