第10回 算数・数学嫌いな人はこれを読めばガラッと変わる?

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「教育最前線に行ってみた!」では、普段何気なく目にするけど、なかなか行けていない教育現場へ、皆さまの代わりに行って取材をしてまいります。第10回では、実用数学技能検定(数学検定・算数検定)を中心に、算数・数学の教育活動を行っている「公益財団法人 日本数学検定協会」常務理事・事務局長の髙田忍さんにお話をうかがってきました。

算数・数学で苦戦している受験生におすすめ!

あの教科がキーポイントに

2つの選択肢

エデュ:まず日本数学検定協会の設立背景を教えてください。

髙田さん:1992年に認意団体として発足しましたが、世の中で認知され始めたのは、1999年の7月に文部科学省認可による財団法人になってからですね。それまでは、算数・数学の力の指標となるものがなく、そのような指標があった方がより前向きに学習に取り組むことができるだろうという想いで始めました。

エデュ:算数・数学の魅力はどんなところですか?

髙田さん:私は「共有財産を自由に使って、さらに自分なりに発展できるところ」だと思っています。数学の歴史をさかのぼると、本来の意味は、ギリシャ語でいうマテーマ(考えること)になるそうです。つまり、現代でいう試験の問題を解いて答えを導き出すだけでなく、日常の生活で判断したり、選択しようと考えること自体が数学だったのです。その脈々と受け継がれてきた知識を、制限なく自由に使えるところこそ数学の魅力だと私は考えています。

親が教えるときのNGポイントは?

考えることはとても楽しい!という体験を

エデュ:中学受験をめざすご家庭でも、算数で苦戦している方が多くいます。アドバイスをお願いします。

髙田さん:2つあります。1つは「国語力」、とくに文脈を読み取る力を身につけること。もう1つは、「考える力」を伸ばすことです。

中学受験の問題、とくに難関校になると問題文自体が難しくなります。そのときに、一体何を自分は問われているのかが分からないと、解くことができません。実際にお母さま方から「算数の力を伸ばすにはどうすればいいでしょうか?」と聞かれることがありますが、国語の学習もおすすめしています。

また、小学校では、1つの問題に対して1つの解き方しか教えないことが多いので、応用問題が出たときに対応することができません。ですので、日頃から考える力を養っておく必要があると思います。

エデュ:家庭で算数を教える場合の注意点はありますか?

髙田さん:まず大前提として、親御さん自身が算数を好きになる必要があります。単純な理由ですが、嫌いなものを他人に教えるのは難しいですし、おもしろさを伝えることが難しいからです。

そして、絶対にやってはいけない教え方は、自分のやり方を押し付けてしまうことですね。答えにたどり着けなくても、考えることは先ほど申し上げた「考える力」を養うことにもつながりますので、「考えることは楽しい」という体験を、家庭で積み重ねていくことが重要だと思っています。

エデュ:考える力を養うことは、将来的にも役立ちますからね。2020年度から大学入試が改革されますので、これからもっともっと必要になってきますね。

髙田さん:そうですね、実は日本は他のアジアの国々と比べて、算数・数学に対して興味・関心が低い割にテストの点数は高い、というデータがあります。つまり、受験対策の勉強はできていても、算数・数学が好きなわけではないということです。これはもったいないですよね。

大仏様
体験レポート
髙田さんから、「東大寺の大仏様が東海道五十三次を歩くとすると、始点となる日本橋から終点の三条大橋まで何日で行き着くことができるでしょう?」という問題を出されました。必死に計算を始めましたが、途中でタネ明かしがあり、答えは実はいくつもあったのです。たとえば「大仏様なので神通力を使って一瞬で」や、「単純に歩くと○○日かかるが、東海道五十三次の各宿場で休みながらいく」など…。
「学校の試験であれば答えを1つしか出せないかもしれませんが、答えや考え方は実はいくつもあるし、考えることは楽しいということを感じてほしい」と、髙田さんはお話ししてくださいました。

日本を算数・数学好きな人だらけに

3つの取り組みがポイント

2つの選択肢

エデュ:貴会は中・高校生向けに「数学甲子園」を毎年開催していますね。印象に残っているエピソードはありますか?

髙田さん:昨年(2015年)の大会で、ずっと出場し続けてきた、関西の女子校チームが悲願の優勝を果たしたことですね。
毎年、本当に数学好きの高校生が集まってきているので、上位チームは接戦で、点数にもそれほど差がありません。そんななか優勝するチームは、「勝ちたい」という想いが強いチームだと思っています。

エデュ:なるほど、知識や技術はもちろん、最後は気持ちが重要だということですね。では日本数学検定協会の、これからの目標と課題を教えてください。

髙田さん:中長期の目標として3つ掲げていて、1つめは「数学の生涯学習化」、2つめは「数学学習のデファクトスタンダード化」、そして3つめが「算数・数学が好きな人を増やし、嫌いな人をなくす取り組み」をしていきたいと考えています。

現状は、数学検定の受検者は中高生が大半を占めていますので、もっと大人の受検者の割合を増やし、算数・数学を通して、親が子どもとコミュニケーションをとってもらいたいと考えています。
2つめの「デファクトスタンダード化」とは、タイ・インドネシアなどのアジア圏では、まだ数学に対しての指標がないので、その指標を作っていきたいと考えています。
そして、3つめはこれまで申し上げたとおり、日本人は数学が好きな人と嫌いな人がはっきりしているので、好きな人はさらに好きになってもらい、嫌いな人には好きになってもらうような取り組みをしていきたいと考えています。

編集者から見たポイント

算数・数学というと、「公式を暗記して、ひたすら難しい問題を解く」というイメージがありましたが、大仏様の問題のように答えが1つではないという楽しみ方もあるんだと新しい発見がありました。算数・数学が苦手な親御さんも、算数・数学を楽しむという視点でお子さまに教えてみてはいかがでしょうか?
今回おうかがいしたのは「公益財団法人 日本数学検定協会http://www.su-gaku.net/」です。興味を持った方は、ぜひ一度公式サイトをご覧ください。


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