元超教育ママが失敗から学んだ子育てコーチング術とは?
inter-edu’s eye
第30回では、勇気づけ子育てコーチとして活躍している、たなかみなこさんにインタビュー。たなかさんは、大手国内航空会社を退職後、子育てに専念され、お子さまの中学受験では、女子御三家の合格を勝ち取りました。“元超教育ママ”としての失敗から学んだことや、すぐに実践できる中学受験で子どもにしてあげたいことなどをうかがいます。
失敗から学んだ子育てコーチング術
マニュアル子育て…生後8か月で笑わない赤ちゃんに
エデュ:まずはたなかさんが現在の勇気づけ子育てコーチとして起業されるまでの経緯を教えてください。
たなかさん:元々大手国内航空会社のグランドスタッフを14年間勤めていて、退職後に、長女を出産。ただ、子育ての方法が分からず、仕事柄か育児雑誌や知育ビデオをもとにマニュアル通りに子育てをしていたところ、うまくいかず娘を生後8か月で笑わない赤ちゃんにしてしまって…。
このままではいけないと思い、あらゆる方法を探し回ったところ、娘が2歳の頃に、子育てコーチングの本に出会い、読み終わった瞬間に、「コーチングを学ぼう!」と決め、その晩にコーチ養成講座に申し込みました。そこで学んだことを生活に取り入れ実践していたところ、娘は自己肯定感が上がり、自分で考え、自分で選択をし、学力も上げることができました。
そして娘が小学5年生になるタイミングで、「専業主婦に収まらず、私も何かにチャレンジしたい」と思い、国内航空会社シンクタンクの客員研究員に応募。大学、専門学校で「ホスピタリティ論」や「キャリア教育」をお伝えする非常勤講師となり、年間200コマの授業を担当するまでになりました。教鞭をとりつつも、「幸せな子育てとは何か?」をもっと追及したいという気持ちが収まらず、アドラー心理学を学び、実践。そのおかげで娘の中学受験直前期のメンタルの低下を防ぐことができ、第一志望だった女子御三家に合格させることができました。
娘が合格してから、身近なママに子どもにどのように接したらいいのか分からないので教えてほしいという声をいただき、少人数で勉強会を開始。そして1年半ほど前から、私的な記録であった方向性のブログを変え、本格的に受験生ママに向けてブログを書いています。 そして現在は、アドラー心理学の「勇気づけ」とコーチングで中学受験期のママを応援できるように、お話会、勇気づけ勉強会、コーチ養成講座、個人コーチングを行っています。
幼稚園受験、小学校受験では挫折も経験
エデュ:すごい行動力だなと感じます。しかもご自分で学んだことを活かして女子御三家合格のためにサポート。なかなか真似できないことだと思いますが。
たなかさん:ありがとうございます。ただここまで来るには大きな失敗もあって…。実は幼稚園受験、小学校受験もしているのですが、そのいずれもご縁がなかった苦い思い出があります。
エデュ:何が原因だったのでしょうか?
たなかさん:娘が自分から受験したいと思って受験をしたわけではなく、私の「合格させたい」という思いを押しつけていたことが原因だったと思います。小学校受験にご縁がなかったことを娘に伝えた日に「こんなに頑張ったのに!」と大泣きされてしまって…。中学受験はその悔しさをバネに娘自身が受験を決意しました…。
エデュ:そんなことがあったのですね。女子御三家を受験しようと思ったのはいつ頃でしょうか?
たなかさん:小学1年生から大手塾に通っていたのですが、そこは先生がコロコロ変わるところで…。娘は人見知りのところがあるので小学2年生で辞めて、近所で評判の良かった中規模の塾の公開説明会に参加したら、授業が大人の私が聞いていても面白くて! 娘もすっかり気に入ってしまったのでそのまま入塾。それからは熱が出ても、小学校のイベントで疲れていても絶対に休まず通っていました。
小学3年生の時に塾の先生から「あなたはこの中学校(女子御三家)が向いている」と言われたのがきっかけですが、その時の娘は共学校に通いたがっていたのでけんもほろろ。でも小学6年生の時に塾に来てくださった女子御三家に通う先輩の話を聞いて、「女子校って楽しそう!」と感じたことが引き金になり、受験を決意しました。
塾の先生が面白いうえに、友達も気が合う子ばかりだったみたいなので、第一志望に合格できたポイントのひとつは塾に恵まれたことだと思っています。
たなかみなこ流コーチングの第一歩は「傾聴美人」になること
親は親ではなく仲間のような存在がベスト
エデュ:たなかさんが実践し、合格を勝ち取ったコーチング。今の活動では、どんなことを中学受験を目指すお母さまたちに伝えているのか教えてください。
たなかさん:アドラー心理学をベースとしたコーチングでは、お子さま自身が「自分には能力がある」と思えるようになるので、お母さまが管理をしなくても、自分のために勉強をするようになります。そのために私は、とにかくお子さまの言うことを、できれば8割、つまり大部分を聞く、「傾聴美人」になりましょうとお伝えしています。お子さまに話をさせることで自分なりの考えを話すようになります。
私のコーチングはお子さまに何かをしたり、話すことで思い通りに操作するのではありません。「子どもの心をコーチング」して、お子さまの心の安定・安心、そして自分の話しをしっかり聞いてくれる仲間のような存在の親御さんがいて、受験勉強を頑張れる環境を作ることを目標としています。
エデュ:さきほどのお話の中で出た、「自分には能力がある」とお子さまが思えるようにするためにはどうすればいいでしょうか?
たなかさん:方法はたくさんありますが、やめてほしいこと、やってほしいことをそれぞれお話しします。
やめてほしいのは「賞罰を与えること」です。例えば何かできたときに、ご褒美をあげたり、塾のクラスが上がらなかったら、中学受験はやめなさいよとか…。これは先に待っている賞罰が嬉しかったり、怖かったりするからやるのであって、自分には能力があると思えることにはつながりません。
反対に、やってほしいのは「できていることに注目すること」で、アドラー心理学では「正の注目」と呼んでいます。例えば、「今日も時間通りに起きてきたね」、「朝から元気にごはんを食べたね」。勉強でいえば、算数のテストは悪かったけれど、社会の点数が良かった時に社会に注目して「最高得点じゃない!」などの声かけです。実際にこのアドバイスをしたご家庭では、この声かけをした翌日に、お子さまの方から、「算数の分からないところを塾の先生に訊いてくるから遅くなるよ」と申し出があったそうです。
中学受験でこれだけはやっておきたいこと2つ
お子さまのために!と思ったことが実は…
エデュ:中学受験の家庭において、親が「これだけはやってあげたい」ことを教えてください。
たなかさん:お子さまの課題に踏み込まないと決め、「課題の分離」をすることが大事だと思います。勉強も中学受験もお子さまの課題だからです。お子さまの了承なしに課題に介入したり、手や口を出すことは勇気をくじくことになり、結果的にやる気もくじくことになります。当然、成績も伸び悩む原因になります。時間がない中で焦る気持ちは分かりますが、お子さまと一つひとつ納得いくまで話し合って、お子さまの課題の「何を手伝うのか、何を手伝わないのか」を決めていくことが大切です。
もう一つは、お子さまに勉強する姿を見せてあげることも重要です。お子さまはお母さまの頑張っている姿を見て、「ママも頑張っているから自分も頑張ろう」という気持ちが芽生え、中学受験という大きな目標に向かう大きなエールになると思います。受験直前ほど、この方法をおすすめします。ご自身が勉強で忙しいと、お子さまの勉強のことでイライラしたり、心配する暇もないので、メンタル維持にもつながり一石二鳥です。
エデュ:たなかさんご自身の経験から考える、中学受験をするメリットとは?
たなかさん:たくさんありすぎて難しいですが、2つお伝えします。
1つ目は「素敵な出会いがあること」です。ともに戦った塾の友達、塾での恩師との出会いが娘にはあり、小・中学校では、教えてもらえない知識を教えてもらうことができました。合格した中学では、語り合えて、切磋琢磨できる仲間に出会えているそうです。中学入学後に挫折した時も、中学受験で頑張った過去の自分が最大の応援団となり、娘を支えてくれています。
2つ目は「親子の絆を深められること」です。中学受験ほど至近距離でお子さまを応援できるイベントは、残念ながらこの先はないと思います。合格発表が終わると、呆気ないくらい、突然に、全てが終わってしまいます。そして、中学という新しい社会にお子さまは旅立って行ってしまいます。 だから、1日1日を大切に、「こんな近くにいられるのもこれで最後なんだ」という気持ちで、悔いのないように愛するお子さまの応援に徹してみてほしいなと思います。
エデュ:最後にこれからの目標を教えてください。
たなかさん:実は、これまでは大学や専門学校の授業が中心で、私のコーチングを中学受験ママに直接届ける機会があまりありませんでした。今年はもっと機会を増やしたいと思うので、ブログをご覧いただき、そこからご興味を持ってもらえると幸いです。
編集者から見たポイント
たなかみなこさんの行動力には圧倒された今回の取材。コーチングを学ぶことにより、中学受験をサポートできるだけでなく、お子さまの自己肯定感を高めたり、自分なりの考えを話す力を養えることも分かりました。コーチングを学び、お子さまの未来を一緒に切り拓いていきたい方は、
「たなかみなこさんのブログhttps://ameblo.jp/positivekids-prj/」または「子育てコーチ 中学受験」で検索してみてください。
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