子どもが“グローバル社会で生き抜く力”を身につけるために知っておきたいこと【後編】

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オバマ元大統領らと並んで「ワシントンの美しい25人」に選ばれ、ライフコーチとして活躍中のボーク重子さん。2017年には娘のスカイさんが「全米最優秀女子高生コンテスト」に優勝と、重子さんの生き方、子育てに今注目が集まっています。そんな重子さんへのインタビュー前編では、グローバル社会で生き抜く力を身につけることができる、リベラルアーツという学びについてお伝えしました。後編では、「生き抜く力」の育み方にについてお伝えします。

「好き」プラス「何のために」イコール「パッション」。これが生き抜く力となる!

ボーク重子さん1

インターエデュ(以下「エデュ」): 重子さんのご著書に出てくる「パッション」という言葉は、心にグッと響きます。「好きこそものの上手なれ」というように、「わが子にも何か好きなことを見つけてほしい、」と親は考えるものですが、「好き」という言葉ではちょっと弱い気もします。「好き」と「パッション」の違いについて、教えてください。

重子さん: 「好き」なだけだと、きらいになったらやめちゃうから、ちょっと弱いんですよね。「パッション」は、たとえば、朝に目が覚めたときに「これがあるから今日も頑張ろう」と思える理由です。「パッション」は、自分の「好き」だけじゃなく、プラス誰かのためにもなるもの。この「好き」プラス「何のために」というところが、何より重要だと思っています。

私の場合、パッションと仕事は直結しています。まだアートディーラーだった時代、私のパッションは、絵を売ってお金持ちになることでなく、アジアのパワーやすばらしさをもっと世界に知ってほしいという思いでした。私の大好きなアートをみんなに紹介したいという気持ち、プラス日本やアジアのためにという信念で仕事をしていましたね。

だから、朝を覚ましたときも「さあ今日はどんなアーティストの作品を見ようかな」と思うんです。アメリカの人たちに、素晴らしいアートを見せることで、アジアに対する認識を変えていくことができる。そういうプラスの部分が仕事のやりがいになっていました。
現在はライフコーチとして、執筆活動や講演会、メディア出演などをさせていただいていますが、本を執筆する作業は、心の中のプライベートな部分をさらけ出す作業なので、「好き」だけでは難しい。でも、自分の失敗談や恥ずかしい話を書くことで、誰かを励ましたり、元気づけることができるかもしれない。この「何のために」があるから、パッションを感じることができるんです。

エデュ: パッションを日本の子どもたちに伝えるとき、単に「情熱」と訳してみると、ちょっと恥ずかしいような、少し意味合いが違うような気がしますね。

重子さん: パッションもリベラルアーツも、無理に日本語に訳さないほうがいいと思います。アメリカで生活をしていると、学校などさまざまな場面でパッションという言葉を耳にします。最初は「何で勉強にパッションが必要なんだろう」と思ったのですが、学校というところは、子どもがパッションを見つける場所だからです。

うちの娘が小学生のころ、クラスで飼っているチンチラのお世話係になり、「2週間、お世話を頑張ろう」「今日はチンチラちゃん元気かな」と自然と目が覚めるんです。それがパッションなんですね。こんな風にもっと気軽に、子どものうちからパッションという言葉に慣れておくことをおすすめします。

人生ってただ生きているだけだと辛いですよね。請求書はどんどん来るし、子どもにお金はかかるし、ご飯は食べていかなきゃいけないし、屋根のある家も確保しなきゃいけないし。それをこなしていくのは本当に大変なこと。だからこそ、朝、目を覚ます理由が必要だと思うんです。人は一人では生きていけません。パッションは人や社会との橋渡しでもあると思います。

    

子どもに自分の人生を切り拓いてほしいなら、親が切り拓いていく姿を見せること!

親子

エデュ: 話は少し変わりますが、子どもが「やりたいことや夢が見つからない」という場合、生きる道を見つけるために、親に何ができるのでしょうか。

重子さん: 親に何ができるのか、というより、親がすべてです。親がまず手本を見せましょう。生きるって、つらいんじゃなくて楽しいんだということを親が身体を張って見せることが重要です。親がやりたいことを率先してやってみせたり、仕事にしても「なぜこれをやっているのか」をつねに子どもに話して聞かせます。「ママは自分らしさを発見したいから、今はこの仕事をやっているのよ」という具合に。子どもに、自分の人生を自分で切り拓いてほしいと願うなら、親がそういう風に生きる姿勢を見せましょう。

でも、かっこいいところばかり見せる必要はありません。子どもは家族の一員です。家族の中では、親も子も同じ目線でいることが大切です。同じ目線だからこそ、親が言うことに共感したり、意見を言ったりできるんです。私の場合、失敗した時などによく「大変! どうしよう」と子どもに相談します。すると子どもから、ストレートで率直な意見が飛び出し、驚かされることがよくあります。「ありがとう、助かったよ」と伝えると、子どもの中に「家族の役に立った」という自己肯定感が生まれます。そうやって子どもを巻き込み、ときにはかっこ悪い姿を見せることで、人生で何かに失敗してもOKだし、失敗してもそこからやり直すことができるんだということを学ばせることができます。

エデュ: 中学受験を選択する親御さんには、子どもに失敗をさせたくないからとか、なるべくよい大学に入れたいからとか、さまざまな思いがあります。そんな親御さんに向けて、伝えたいことやメッセージはありますか?

重子さん: 受験を選択することも親の愛の形の一つですよね。でも、何のために受験するのか、子どもの意志はあるのか、そこがしっかりしていることが肝心です。それが明確になっていれば、たとえ不合格でも、子どもはいろいろなことを学び取ります。けれども、親に言われたからという理由で受験して不合格になり、がっかりしている親を見ると、子どもの心は折れてしまいます。合格でも不合格でも、そこで人生終わりじゃありません。自ら次の一歩を踏み出すには、子ども自身が「何のためにやっているのか」を理解していることが必要です。

親の考える幸せが、子どもの幸せに直結するとは限りません。受験を考えるときは、まず「あなたはどうしたい?」と子どもの気持ちを聞くことが重要です。親が、自分にとっての幸せとは何かをふだんから語っていれば、子どもも「自分にとっての幸せ」について、きちんと考えることができますし、どんな状況でも家族で乗り越えられるはずですよ。

世界基準の子どもの教養

【著書紹介】ボーク重子(ぼーく・しげこ)
ICF認定ライフコーチ、アートコンサルタント。大学卒業後、外資系企業に勤務。30歳の誕生日前に渡英、2004年にアートギャラリーShigeko Bork mu projectをワシントンにオープンする。2006年にはワシントンDCでの文化貢献度を評価されオバマ大統領(当時上院議員)やワシントンポスト紙の副社長らと一緒に「ワシントンの美しい25人」にたった一人の日本人として選ばれる。娘のスカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝、多くのメディアに取りあげられた。

前編の記事はこちら⇒


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