最終回の3回目では、桜蔭のICTへの取り組みについてお届けします。
短期間でオンライン化! 新しい試みに先生も生徒も柔軟に対応
エデュ:コロナ禍の影響を受けた3月から7月は、どのような授業の体制でしたでしょうか。
教頭 小林裕子先生(以下、小林先生):3月の段階では、全員がタブレットを持っている環境ではありませんでした。そこで、オンライン授業を進めるにあたり、生徒全員の自宅のインターネット環境の調査から始めて、4月に入って間もなく、1年生を除く全員が、5月には1年生も、Googleの「Classroom(※1)」を使い始めることができました。
授業に関しては、時間割を作らず、それぞれの学年、教科単位で1週間の課題を決め、週の最初に提示しました。生徒はそれに基づいて活動し、先生がフィードバックをする体制です。
休校中はあらゆる授業をオンラインで行いました。「礼法」も先生がClassroomに上げた動画を生徒が見て学んだり、家庭科では課題の料理を家で作って、写真をアップロードしたり。生徒も大変だったと思います。
また、「Google Meet(※2)」を使って、朝礼や個人面談を行ったり、休憩時間に時間を決めて生徒同士でチャットができるようにしました。高校3年生の夏休み課外授業での小論文は、オンライン上で個別指導を行いました。生徒たちからすると、オンラインの方が参加しやすいという面もあるかもしれません。
6月からは学校での授業を再開しましたが、分割、短縮の時差登校を7月の最後まで続けることになりました。人数が半分なので、オンライン上の課題と実際の対面授業を並行する形です。期末テストだけは全員登校で実施しました。2学期からは感染防止に努めつつ、通常授業となりました。いざという時にはZoomを使ったオンライン授業もできるように準備をしています。
※1 Classroom…Googleが学校向けに開発した無料のWebサービス。課題の作成や配布、採点ができるツール。
※2 Google Meet…Googleが開発したビデオ会議用のアプリケーション。
エデュ:オンラインだからこそ実施できたことはありますか?
小林先生:卒業生によるキャリア講演会を毎年高校1年生対象で6月に行なっていますが、今年はオンラインで行いました。オンラインだからこそ、アメリカとフランス在住の卒業生も参加できましたし、人数も13名と例年よりも増やすことができました。医師、放送関係、宇宙工学の研究者、ユニセフ、弁護士とさまざまな職種の方が参加してくれました。
また、毎年、年に3回ほどGoogleの東京オフィスを見学して、仕事内容やプログラミングを学ぶ「Mind the Gap」という機会があるのですが、今年はオンラインで行うことになりました。
「Mind the Gap」は、女子中高生に「情報科学」を身近に感じてもらおうというGoogleのプログラムです。海外で始まったプログラムで、最初に日本で紹介するときに、Googleに勤めている卒業生が「桜蔭でまずやってみよう」ということで始まりました。今年でもう7年目になります。