10年前から激変!文理融合の農学系学部に迫る
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農学系学部と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?「農家の男子学生が通うところ」、「畑や田んぼに行き実習を行う」、こういった方が多いのではないでしょうか。確かに十数年前まではそうでしたが、今は…。今回の大学リサーチでは大きく変わった農学系学部事情についてご紹介します。
国立・私立問わず農学系学部の新設ラッシュ
今、日本の大学は少子化などの影響もあり、中堅以下の私立大学は生き残りに必死です。なかには、定員割れを起こし募集停止をしてしまう学部・学科もあります。一方社会的な需要を受け、看護系学部などは新・増設などが行われていますが、こういった学部の一つに農学系学部も挙がります。
2012年、山梨大学に「生命環境学部」が新設されたのを皮切りに、2013年には吉備国際大学に「地域創成農学部」、2015年には龍谷大学が「農学部」を増設、2016年には徳島大学に「生物資源産業学部」が誕生しています。そして、2018年には、東京農業大学に「生物資源開発学科」、「デザイン農学科」、立命館大学に「食マネジメント学部」、新潟食料農業大学に「食料産業学部」、徳島大学に「農学群」と、ほぼ毎年新しい学群・学部・学科が誕生しています。
さらに2019年には福島大学に「農学群」、2020年には摂南大学に「農学部」が新設とその勢いはとどまりません。
農学系学部新設・増設一覧
新設・増設年 | 大学名 | 学群・学部・学科名 |
---|---|---|
2012年 | 山梨大学 | 生命環境学部 |
2013年 | 吉備国際大学 | 地域創成農学部 |
2014年 | 秋田大学 | 国際資源学部 |
2015年 | 高知大学 | 地域協働学部 |
2015年 | 新潟薬科大学 | 生命産業創造学科 |
2015年 | 日本大学 | くらしの生物学科 |
2015年 | 龍谷大学 | 農学部 |
2016年 | 愛媛大学 | 社会共創学部 |
2016年 | 徳島大学 | 生物資源産業学部 |
2016年 | 福井大学 | 国際地域学部 |
2016年 | 宮崎大学 | 地域資源創成学部 |
2018年 | 東京農業大学 | 生物資源開発学科、デザイン農学科 |
2018年 | 立命館大学 | 食マネジメント学部 |
2018年 | 新潟食料農業大学 | 食料産業学部 |
2018年 | 徳島大学 | 農学群 |
2019年 | 福島大学 | 農学群 |
2020年 | 摂南大学 | 農学部 |
そんな注目を集める農学系学部ですが、「学部名だけでは何を学んでいるのかが分かりづらい」という声が聞こえてきそうな学部でもあります。そこで農学系学部ではどんなことを学ぶのか見ていきましょう。
農学系学部で取り扱うテーマは実は多彩
農学系では、生命、食料、環境に関する問題を扱います。各大学の農学系学部では、生命、動物、植物、森林・環境など多岐にわたる学科を設置。農学科、生命科学科、応用生物化学科、森林科学科、畜産科学科などがあります。地球の環境は目まぐるしく変化し、「人類と自然が共生していくためにはどうすればいいのか」という大きな問題でありながら、非常に身近な問題を生物学・物理学・化学の視点を絡め、実習や研究を通して学んでいきます。例えば2012年に山梨大学に新設された、生命環境学部の「地域食物科学科」では、果物や野菜等の農産物の栽培、食品製造の科学的理解、有用成分の解析と利用を課題として、地場産業であるワイン産業などを具体的な例として、農学と食品製造を包括的にとらえるための教育を行っています。
また理系学部寄りであるのは間違いありませんが、「食料」と「環境」をめぐる諸問題について、経済学、社会学、政策学、経営学、会計学、開発学などの社会科学の側面から総合的に研究する明治大学の「食料環境政策学科」など文系の学部もあります。いわゆる文理融合学部であることも、農学系学部の特徴です。
女子学生の数も増加!キャンパスの光景も様変わり
農学系学部の新設・増設とともに注目したいのが、女子学生の増加です。文部科学省の調査では、2007年度は農学系の学生全体数72,973人に対し、男子学生44,136人、女子学生28,837人と男子学生の割合が60.48%と多かったのが、2017年度時点では、農学系の学生全体数76,676人に対し、男子学生42,367人、女子学生34,309人と半数近くまでになっています。
農学・生命科学分野に特化している東京農業大学でも、男子が57.1%、女子が42.9%と半数近く。そしてなんと同大学院でも男子63.3%に対し女子36.7%という数値になっています。(2017年9月1日現在)
なぜ女子学生が増えたのか?
次になぜ女子学生がここまで増えたのか、その理由を見ていきましょう。
①農学系の学部は女子学生にとって非常に関心の高い分野を学ぶことができる点が挙げられます。生命科学・バイオテクノロジー・食品科学の分野はグルメや化粧品などの分野に直結しています。
②北海道の農業高校を舞台にし、アニメ化もされた漫画『銀の匙 Silver Spoon』などの影響で起きたイメージの変化。
③卒業後の進路選択が農業に限らず、環境、食品、園芸など多岐に渡る点。
④高校の理系選択者は物理や生物の選択をしますが、女子の中には物理を嫌い、生物を選択し勉強する中で関心を深めて農学部を志望するケースがあります。また多くの農学系学部は生物を入試の必須科目にしていないので、物理・化学を選択した場合にも受験することができます。つまり、女子にとって農学系学部は非常に受験しやすいと見ることができます。
私立小学校から農業に関心を持てる環境も
文部科学省が科学技術や理数教育を重点的に行う高校を指定する、スーパーサイエンスハイスクール(略称SSH)は有名ですが、小学校から学べる環境が2019年4月世田谷に誕生します。それが私立の東京農業大学稲花(とうか)小学校です。
同校は以前「2019年4月、世田谷に新しい学校が誕生!東京農業大学稲花小学校」で取材しましたが、母体となる東京農業大学の農学・生命科学分野の研究素材を活かし、早くから「農学」を題材とした学びに触れられるということで、教育業界で注目を集めています。
親御さんが知っておきたいこと
最後になりますが、農学系学部に興味を持った親御さんに知っておいてもらいたいことをお伝えします。それは「何を学べるのかをしっかり知っておくこと」です。農学系学部は分野が広く、学部・学科名によっては何を学べるのか分かりづらかったり、似たような名称でも学ぶ内容が大きく異なってきたりすることもあります。
先ほどご紹介した、東京農業大学稲花小学校も名前だけを聞くと、農業分野の研究者を早くから育成する私立小学校に思われがちですが、そうではなく、東京農業大学のコンテンツを活用して、生き物や食への関心を深める機会を早期から作っていくのが目的です。「学部・学科名がこうだから学ぶ内容はこうかな?」ではなく、しっかり調べておく必要があります。
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