センター試験速報 化学基礎

2020年度

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全体概観

大問数は2題、設問数は13で変化なし。マーク数は16から15に減少した。化学基礎の教科書の内容が偏りなく出題された。教科書の発展内容からは、出題されなかった。単なる知識だけでなく、実験操作の理解や生活に関わる物質を題材とした問題が出題された。

難易度:やや易化

大問数は2題、設問数は13で2019年と変化はなかった。マーク数は15で、昨年よりも1つ減少した。また、大問ごとのマーク数は、第1問で2つ減少し、第2問で1つ増加した。解答に計算が必要な問題は4題であり、昨年と同様であった。中和滴定で、酸と塩基の両方の試薬を決定する問題が出題された。特に目新しい問題はなく、これまでのセンター試験でも類似の出題が見られる。昨年の第1問問4や第2問問5などのような細かな知識を問う問題は見られず、全体としての難易度は昨年よりやや易化した。過去問をもとにきちんと対策してきた受験者にとっては実力を出しやすい問題であったのではないだろうか。

設問別分析

第1問

問1 原子やイオンの電子配置を問う問題であった。各元素の原子番号と周期表がきちんと覚えられていれば正解できる。
問2 周期表の元素の分類に関する問題であった。典型元素と遷移元素がきちんと分類できるかがポイントである。
問3 分子の極性を問う問題であった。各分子の形を覚えていたかがポイントである。エタノール分子の形は知らなかった受験者も多かったと思われる。
問4 物質の状態に関する問題であった。物質の状態変化や構成粒子の熱運動に関する基本的な知識を基に判断する。
問5 蒸留装置に関する問題であった。蒸留を行うときの主な注意点を覚えていたかがポイントである。
問6 物質量に関する問題であった。硫酸カルシウム二水和物の質量から、水溶液中に存在していたカルシウムイオンの物質量を計算すれば、CaCl₂の物質量を求めることができる。
問7 生活に関わる物質に関する問題であった。教科書で扱われている基本的な物質の用途、所在などを整理できていたかがポイントである。

第2問

問1 天然に存在する塩素分子の割合に関する問題であった。質量数35の塩素原子と質量数37の塩素原子の割合を基に、質量数35の塩素原子2つから成る塩素分子の割合を求めることができる。
問2 溶液のモル濃度に関する問題であった。はじめの水溶液に溶けていたNaNO₃の物質量と加えたNaNO₃の物質量の合計が、得られた水溶液に溶けているNaNO₃の合計であることに着目すれば求めることができる。
問3 中和滴定に関する問題であった。滴定曲線から中和点のpHを読み取れば、用いた酸と塩基の強弱が判断できる。また、滴定開始時の水溶液のpHと、中和点に達するまでに加えた水溶液Bの体積をグラフから読み取ることで、正解を求めることができる。
問4 塩の水溶液の性質に関する問題であった。各塩の水溶液の性質に関する基本的な知識を基に判断する。pHと水素イオン濃度の大小関係は逆であることに注意する必要がある。
問5 化学電池(電池)に関する問題であった。化学電池に関する基本的な知識を基に判断する。燃料電池に関しては盲点になっていた受験者が多かったと思われる。
問6 金属の溶解に関する問題であった。金属のイオン化傾向の大きさ(イオン化列)と金属の反応に関する基本的な知識を基に判断する。

2019年度

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全体概観

大問数は2題、マーク数は16。化学基礎の教科書の内容が偏りなく出題された。教科書の発展内容からは、出題されなかった。

難易度:昨年並み

大問数は2題で2018年と変化はなかったが、設問数は14から13に減少した。マーク数は16で全体で変化はなかったが、第1問で1つ増加し、第2問で1つ減少した。解答に計算が必要な問題は4題であり、昨年と同様であった。特に目新しい問題はなく、これまでのセンター試験でも同系統の出題が多く見られた。一方、第1問の問4や第2問の問5など、教科書の巻末などで扱われている実験操作に関する出題も見られ、「化学基礎」しか学習していない受験者にとっては盲点であったと思われる。
全体としての難易度は昨年と同様であり、過去問をもとにきちんと対策してきた受験者にとっては実力を出しやすい問題であったのではないだろうか。

設問別分析

第1問

問1 与えられた数字から、電子、陽子、中性子の数、および質量数を考える問題であり、平易である。
問2 分離操作に関する問題。操作の名称とその仕組みがきちんと整理できていれば正解できる。
問3 合金中のニッケルNiの含有率を計算する問題。得られた酸化ニッケル(II)NiOの物質量と合金中のNiの物質量が等しいことに気づけたかがポイントである。
問4 不純物(塩化水素HClと水蒸気)を含む塩素Cl2を精製する実験に関する問題。揮発性の液体である水を入れたガラス容器は、濃硫酸を入れたガラス容器の前に設置する必要があることが分かったかがポイントである。
問5 元素および原子の性質に関する記述の正誤問題。「イオン化エネルギーとはどのようなエネルギーか」をきちんと理解できていれば正解できる。
問6 分子やイオンがもつ共有電子対、非共有電子対の数に関する記述の正誤問題。各分子やイオンの電子式を書くことができたかがポイントである。
問7 イオンからなる身のまわりの物質に関する問題。どれもイオンからなる物質の代表的な例であり、普段から身のまわりのものと関連付けることを意識して学習を進めてきた受験者にとっては難しくない。

第2問

問1 物質の量に関する記述の正誤問題。選択肢2と3は、それぞれCl-と水素原子の物質量を求める必要がある。選択肢1は、COとN2の分子量がともに28で、NOの分子量が30であることから判断できる。また、選択肢4は、炭素(黒鉛)の完全燃焼における化学反応式を書くことで判断できる。
問2 グラフをもとに、加えた塩酸の体積と発生した水素の体積(0 ℃、1.013×105 Pa)
を求める問題。解答する際に、亜鉛Znと塩酸の反応の化学反応式を書く必要がある。なお、このようなグラフに関する計算問題は、過去にも類似の出題が見られるもので、あまり時間をかけずに解答したい。
問3 酸と塩基の中和反応で得られた正塩の水溶液の性質を判断する問題。酸Aと塩基Bの強弱がきちんと整理できていたかがポイントである。
問4 中和滴定に関する記述の正誤問題。選択肢1以外は、正誤の判定に計算を要するため、解答に時間がかかる。
問5 実験の安全に関する記述の正誤問題。どれも正しいような記述であり、戸惑った受験者が多かったと思われる。実験操作の知識が必要だったが、多くの受験者にとって盲点であったのではないだろうか。
問6 酸化と還元に関する記述の正誤問題。下線が引かれた部分に注目し、各原子の酸化数の変化を正しく考えられれば正解できる。

2018年度

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全体概観

大問数は2題、マーク数は16。化学基礎の教科書の内容が偏りなく出題された。

難易度:昨年並み

大問数は2題で変化はなかった。また、小問数は14題、マーク数は16で、こちらも変化はなかった。文字式を選択する問題も含めると、計算問題は14題中4題であった。

第1問の問4や第2問の問3のように、過去には見られなかったタイプの問題も出題され、戸惑った受験生も多かったと思われる。また、第2問の問4ではpHに関する知識、問7では化学電池に関する知識といったように、身近な物質や現象を題材とした問題が出題されたが、どちらも受験生にとっては盲点になっていたのではないだろうか。教科書に記載されている図や表なども含め、偏りなく学習しているかどうかが問われた。

全体として昨年度と同様の難易度であった。

設問別分析

第1問

問1 aは陽イオンになりやすい原子、bは共有結合の結晶の組合せを選ぶ問題。結晶の種類を問う問題は過去にもよく出題されている内容であり、きちんと過去問の演習を積んでいれば容易に解答できる。
問2 ホウ素原子の電子配置を選択する問題。ホウ素の原子番号が5であることと、K殻に入る電子は2つまでであることがわかっていれば解答できる。
問3 電子の総数を問う問題。中性の分子であれば、電子の数と陽子の数は等しいため、各元素の原子番号がわかっていれば解答できる。一方、イオンの場合は、電子の数と陽子の数が価数の分だけ異なるため、電子の総数を求めるときに注意が必要である。
問4 5gのX2Z3に含まれるXの質量を表す式を選択する問題。質量比はモル質量の比と一致することがわかっていたかがポイントであった。見慣れない問題で戸惑った受験者も多かったと思われる。
問5 実験結果から化合物を推定する問題。純物質アは、ナトリウムの炎色反応が黄色を示すこと、塩化銀が白色沈殿であることが分かっていれば解答できる。また、純物質イは、炭酸カルシウムに塩酸を加えると二酸化炭素が発生することを、酸と塩基の知識も踏まえて思い出せたかどうかがポイントである。
問6 水の状態変化に関する問題。水は一般的な物質と異なり、固体の体積の方が液体の体積よりも大きくなる、ということを知らないと解答出来なかった。これは文系の受験者にとってはなじみが少なく、難しかった。
問7 物質の用途に関する問題。教科書に記載されている物質がどのようなものに利用されているのかを、きちんと知っていたかがポイントであった。

第2問

問1 水に含まれる、水素原子、原子核、共有結合に使われている電子、非共有電子対の数を問う問題。水の物質量(mol)とそれぞれの数は比例するため、水1分子あたりの水素原子、原子核、共有結合に使われている電子、非共有電子対の数が数えられれば解答できる。
問2 混合気体の質量を求める問題。混合気体の体積比は物質量比と等しいことが理解できているかがポイントである。文系の受験者は混合気体を扱いなれていないため、難しかった。
問3 モル濃度の高低を問う問題。質量パーセント濃度とモル濃度の変換は、過去の問題でも頻出であるが、このような形式で出題されるのははじめてであった。実際には密度の大小だけで解答できることに気付くことで、容易に解答できる。
問4 様々な物質のpHの大小を問う問題。設問に含まれる物質の大まかなpHは教科書に記載されている。しかし、表や図でまとめられているため、盲点になっていた受験者も多かったと思われる。
問5 中和滴定の滴定曲線を選択する問題。中和点のおおよそのpHを予測し、解答する。炭酸水素ナトリウムと塩酸の中和滴定は、文系の受験者にとってはあまりなじみがないかもしれない。
問6 酸化還元反応を選択する問題。酸化数の変化を伴う反応を探すことになるが、イ、エのように反応物または生成物に単体を含む反応はすべて酸化還元反応であるため、それを知っていれば容易に解答できる。
問7 化学電池に関する問題。聞きなれない電池が題材となり、戸惑った受験者も多かったと思われる。しかし、リチウムイオン電池がノート型パソコンや携帯電話などに用いられていることが述べられているため、この電池が充電可能であることは容易に推定できる。

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