センター試験速報 化学

2020年度

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全体概観

大問構成と設問数に変更はなし。マーク数は全体で3つ増加し、特に第3問の無機物質では2つ増加した。第5~7問で配点に変更があり、選択問題の得点が1点減少した。過去のセンター試験で類似した問題が見られたものもあったが、第1問の問5や第2問の問5、第3問の問5など目新しいタイプの問題もあった。

難易度:昨年並み

大問構成は必答問題・選択問題ともに昨年から変更はなく、設問数も変化なし。マーク数は全体で3つ増加し、全体で32となった。選択問題では、例年同様教科書の後半で取り扱う高分子化合物が出題されたが、配点が4点に減少した。第1問の問4、問5や第2問の問3、第6問の問2などは多くの受験生が苦手とするテーマからの出題であった。また、第1問の問5の浸透圧からモル質量を求める問題や第2問の問5のpH指示薬の電離平衡と滴定曲線を絡めた出題は、過去のセンター試験では出題されていないテーマであったが、類似の問題を問題集などで解いた経験がある受験者もいたと思われる。第2問の問1、問3などはグラフから必要な情報を読み取って解答する必要があり、難しかった。なお、知識を問う正誤問題は、四択問題の割合が増加し、比較的解きやすかった。全体としての難易度は昨年並みであった。

設問別分析

【第1問】物質の構造・状態

問1 ハロゲンの原子に関する正誤問題であった。ハロゲンの性質に関する基本的な知識を基に判断する。
問2 純物質の状態図に関する正誤問題であった。臨界点に関する内容は盲点になっていた受験者も多かったと思われる。沸点、昇華点、融点の高低に関しては、図から判断できる。
問3 混合気体の密度に関する問題であった。H₂とN₂の物質量比から、この混合気体の平均分子量を求めることができたかがポイントである。
問4 液体の飽和蒸気圧に関する問題であった。水銀柱に関する問題は苦手とする受験者が多かったと思われる。また、mmHg単位で求めた蒸気圧を、Pa単位に変換する必要もあり、難しい。
問5 浸透圧に関する問題であった。半透膜の両側にかかる力の釣り合いが意識できていれば、浸透圧が分かるため、ファントホッフの法則よりモル質量を求めることができる。
問6 コロイドに関する正誤問題であった。コロイドに関する基本的な知識を基に判断する。

【第2問】物質の変化と平衡

問1 鉄の酸化物の化学式と生成熱に関する問題であった。aは、問題文と図1のグラフの情報からAを構成する鉄原子と酸素原子の物質量比を求めることができれば正解できる。bは、発生した熱量と生成したAの物質量を計算すれば、求めることができる。
問2 反応熱に関する問題であった。熱化学方程式やエネルギー図を書くことで、Q、Q1、Q2の関係を調べることができる。なお、反応熱と生成熱に関する公式を覚えていれば、熱化学方程式やエネルギー図を書かなくてもすぐに解答できる。
問3 反応速度に関する問題であった。図2からaの値、図3からbの値が分かるため、それらの値を基に求めることができる。
問4 可逆反応における反応時間と生成物の生成量に関する問題であった。「反応速度」と「ルシャトリエの原理」を別々に考えることができたかがポイントである。
問5 中和滴定の指示薬に関する問題であった。電離定数の値からこの指示薬の変色域を求め、その変色域と中和点が重なっている滴定曲線を選べば解答できる。

【第3問】無機物質

問1 無機物質の性質に関する正誤問題であった。やや細かな知識を問う設問であったが、四択であることから消去法で解くことも十分可能である。
問2 酸化物に関する正誤問題であった。各酸化物の性質に関する基本的な知識を基に判断する。
問3 金属イオンの分離に関する問題であった。aは、塩化物イオンと沈殿をつくる金属イオンを覚えていれば正解できる。bは、錯イオンに関する基本的な知識を基に判断する。
問4 カルシウムの化合物に関する正誤問題であった。化合物A~Dを決定し、これらの物質に関する基本的な知識を基に判断する。
問5 ニッケル水素電池に関する問題であった。A・h(アンペア時)という単位に戸惑った受験者が多いと思われる。ニッケル原子の酸化数の変化に着目し、計算する必要がある。

【第4問】有機化合物

問1 炭化水素に関する正誤問題であった。エタンとエチレンの炭素原子間の結合距離や、プロパンの分子構造については、盲点になっていた受験者もいたと思われる。
問2 有機化合物の分子式に関する問題であった。nを用いて、燃焼させた有機化合物の物質量と生成した水の物質量の関係式を作ればnを求めることができる。
問3 有機化合物の水溶液における酸性の強さに関する問題であった。酸性を示す官能基に関する基本的な知識を基に判断する。
問4 鏡像異性体(光学異性体)に関する問題であった。分子式を基に、不斉炭素原子を持つ構造を見つけられたかがポイントである。
問5 エステルの合成に関する問題であった。aは、エステルの合成実験に関する基本的な知識を基に判断する。bは、実験Ⅱの文章を基に判断する。

【第5問】高分子化合物

問1 高分子化合物の原料(単量体)に関する問題であった。身のまわりの合成高分子化合物に関する基本的な知識を基に判断する。
問2 アミノ酸のイオンの構造に関する問題であった。各アミノ酸の等電点を基に、pH 6.0におけるアミノ酸Aのイオンの構造、pH 7.0におけるアミノ酸Bのイオンの構造が分かったかがポイントである。

【第6問】合成高分子化合物(選択問題)

問1 合成高分子化合物に関する正誤問題であった。合成高分子化合物に関する基本的な知識を基に判断する。
問2 合成高分子化合物を構成する単量体の物質量比に関する問題であった。mとnを用いて平均分子量を表す式と、炭素原子と塩素原子の物質量比を表す式を立てればmを求めることができる。

【第7問】天然高分子化合物(選択問題)

問1 天然高分子化合物に関する正誤問題であった。天然高分子化合物に関する基本的な知識を基に判断する。
問2 糖類の反応に関する問題であった。デキストリンの平均分子量を基に、得られたマルトースの物質量を求めることができたかがポイントである。

2019年度

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全体概観

第6問・第7問のうち、いずれか1問を選択。大問数は6題、マーク数は29。出題形式に昨年度から大きな変更はなかった

難易度:やや難化

大問数は昨年と変わらず6題、また、第6問・第7問のうち、いずれか1問を選択する形式も昨年と同様であった。また、昨年と比べて小問数は25で変化なく、マーク数は29で増加した。第2問の問3、第3問の問5、第5問の問1、第7問の問2など、グラフや分布図が表す内容を読み取って解答する必要がある問題の割合が高かった。また、計算問題が12題と昨年よりも増加し、解答を導くまでの過程が長いものも含まれていたため、時間内に解き終えるのは相当なスピードが必要であった。昨年と比べると、全体的にやや難化した。

設問別分析

【第1問】物質の構造

問1 a 共有結合をもたない物質、b 固体状態で電気をよく通す物質を選ぶ問題。選択肢は見慣れた物質ばかりであり、平易である。
問2 ダイヤモンドの密度を表す式を求める問題。単位格子を用いて結晶の密度を求める問題は頻出である。ダイヤモンドの結晶の単位格子に関する問題を解いたことがあれば素早く解答できるが、初見の受験者は単位格子に含まれる原子の数を数えるのに時間を要したと思われる。
問3 分子間にはたらく引力に関する記述の正誤問題。分子間力の強弱と沸点の高低の関係が理解できていれば解答できる。
問4 揮発性の物質の分子量を求める問題。本来、この問題で行っている実験は奥が深く、ハイレベルな問題として扱われることも多いが、この問題では与えられた条件から簡潔に分子量を求めることができるため、無理なく解答できた受験者が多いのではないだろうか。
問5 溶解に関する記述の正誤問題。極性物質は極性溶媒に溶けやすく、無極性物質は無極性溶媒に溶けやすいといった現象をきちんと理解できていたかがポイントである。
問6 気体の溶解に関する問題。与えられた酸素の溶解度をもとに、ヘンリーの法則を用いて、水に溶けている酸素の質量を求めればよい。酸素の圧力と水の体積に注目して計算できたかがポイントである。

【第2問】物質の変化と平衡

問1 結合エネルギーに関する問題。近年のセンター試験では、エネルギー図を用いた出題はあまり見られなかったため、戸惑った受験者も多かったと思われる。H2O2(気)の生成熱が正の値であることに注目して、各物質がもつエネルギーの大小を判断できたかがポイントである。
問2 化学平衡の法則に関する問題。濃度平衡定数を正反応の速度定数k1と逆反応の速度定数k2から求められれば、無理なく解答できる。
問3 溶解度積に関する問題。図2から塩化銀の溶解度積Kspを求め、その値をもとに沈殿の有無を判断する必要がある。また、表2に与えられた濃度は混合前のものであり、混合後は濃度が半分になることを意識できていたかもポイントである。
問4 銅の電解精錬に関する問題。a 粗銅に不純物として含まれる金属が、イオンとなって水溶液中に溶け出すか、陽極泥として沈殿するかは、イオン化傾向が銅よりも大きいか小さいかで判断できる。b 析出した銅の質量から、流れた電子の物質量を求め、さらに流れた電気量を求めれば解答できる。
問5 物質の溶解後の水温を表す式を求める問題。硝酸アンモニウムの水への溶解は吸熱過程であるため、文字式を用いて温度の変化量を表した後、その変化量をもとの水温から引く必要がある。

【第3問】無機物質

問1 身のまわりの無機物質に関する記述の正誤問題。鉄の製造で得られる銑鉄と鋼の違いが整理できていたかがポイントである。
問2 アルカリ金属とアルカリ土類金属に共通する性質を選ぶ問題。アルカリ金属とアルカリ土類金属は共通の性質も多い一方で、これらの元素を含む塩の水に対する溶解性は大きく異なるものが多い。両者の共通する性質と異なる性質がきちんと整理できていたかがポイントである。
問3 錯イオンに関する記述の正誤問題。一般に、錯イオンの形は配位数によって決まり、配位数が4の錯イオンの多くは正四面体形である。しかし、例外で正方形であるものも存在するため、よく出てくる錯イオンの形をきちんと整理できていたかがポイントである。
問4 硝酸の工業的製法(オストワルト法)に関する問題。a 反応IIIは二酸化窒素と水の反応によって硝酸と一酸化窒素が生成しているため、窒素原子の酸化数を求めることで解答できる。b オストワルト法では、1 molのアンモニアから1 molの硝酸が得られることを覚えていれば、計算の必要はなかった。
問5 溶液の混合によって生成した沈殿の質量を表すグラフを選ぶ問題。選択肢から選ぶ問題であるため、試験管番号をいくつか選び、具体的に計算してしまえば素早く解答できる。

【第4問】有機化合物

問1 ベンゼンに関する記述の正誤問題。ベンゼンと塩素の反応は、反応条件や用いる触媒によって生成物が異なるため、注意深く設問を読む必要がある。
問2 混合物中の1-ブタノールの含有率を求める問題。発生した水素の物質量をもとに、混合物中の1-ブタノールの物質量が求められる。
問3 芳香族化合物の還元反応の生成物を選ぶ問題。第一級アルコールの酸化でアルデヒドが得られるため、その逆反応が還元反応になることに気づけたかがポイントである。
問4 炭素数4のカルボニル化合物を数える問題。アルデヒドとケトンはともにカルボニル基をもつため、化合物Aと異性体の関係にある炭素数4のアルデヒドとケトンを数え上げればよい。
問5 酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの反応により得られる化合物と用いる実験装置を選ぶ問題。この反応は、メタンの実験室的製法である。また、メタンは水に溶けにくい気体であることが分かれば捕集法も正しく選択できる。

【第5問】高分子化合物

問1 高分子化合物の分子量に関する問題。高分子化合物Aは分子量がMよりも小さい分子の割合が高く、高分子化合物Bは分子量がMよりも大きい分子の割合が高いことをグラフから読み取れたかがポイントである。
問2 高分子化合物に関する記述の正誤問題。天然繊維は、植物繊維と動物繊維に分類されることが意識できていたかがポイントである。

【第6問】合成高分子化合物(選択問題)

問1 ホルムアルデヒドを原料として用いない合成高分子を選ぶ問題。アクリル繊維は、アクリロニトリルの付加重合によって得られるポリアクリロニトリルを主成分とした繊維であることを覚えていれば解答できる。
問2 高分子化合物の平均分子量を求める問題。カルボキシ基の数の半分が高分子化合物Aの分子数に相当することに気づければ解答できる。

【第7問】天然高分子化合物(選択問題)

問1 二糖類に関する記述の正誤問題。各二糖類を構成する単糖類がきちんと整理できていれば解答できる。
問2 ジペプチドを構成する2つのアミノ酸を選ぶ問題。図2より、ジペプチドAにはSが含まれているため、1つはシステインであることに気づけたかがポイントである。

2018年度

問題・解答はPDFファイルです。ご利用の端末や通信環境によっては表示に時間が掛かる場合がございます。

全体概観

大問数は7題で選択問題にも変化なし。設問数、マーク数ともに減少。

難易度:昨年並み

大問構成は昨年から変更はなかった。設問数は2問減り25問、マーク数は7減り28となった。選択問題では、昨年同様教科書の後半で取り扱う高分子化合物が出題された。出題分野に大きな変更はないが、第2問の問3で電気伝導度から中和点を求める実験が題材となるなど、最近のセンター試験では見慣れない問題もあった。設問数は減少したが、一読してすぐに解答できないような問題も多く、時間内に全てを解き切るには相応のスピードが求められる内容であった。

設問別分析

【第1問】物質の構造

問1 各単原子イオンの陽子数、中性子数、電子数が与えられ、陰イオンの質量数が最も大きいものを選ぶ問題。まずは、陰イオンを選び、その上で質量数が最大のものを選べたかがポイントであった。
問2 典型元素と遷移元素に関する正誤問題。1、2族、12〜18族元素が典型元素、3〜11族元素が遷移元素であることを覚えていたかがポイントであった。
問3 六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数を答える問題。単位格子の図が与えられているため、六方最密構造の格子内の原子を数えたことがあったかどうかがポイントであった。
問4 外圧と水の沸点の関係を示すグラフを選ぶ問題。外圧と蒸気圧が一致する温度が沸点であることがわかっていれば、グラフの数か所の点を読み取ることで解答できる。
問5 質量モル濃度を表す文字式を選択する問題。モル濃度と質量パーセント濃度の変換は慣れていても、モル濃度と質量モル濃度の変換は見慣れずに、戸惑った受験者も多かったと思われる。
問6 物質の状態に関する正誤問題。過冷却の現象に気付けたかがポイントであった。

【第2問】物質の変化と平衡

問1 炭素の状態変化に関わる反応熱を求める問題。計算に必要な熱化学方程式が与えられており、熱化学の基本的な問題であった。
問2 反応速度と生成物の生成量に関する問題。この反応は不可逆反応であること、また、Aを2倍にしてもBを増やしていない点に注目できたかがポイントであった。
問3 中和反応と電気伝導度に関する問題。aはこの中和反応で生成する塩は沈殿物であることがわかったかがポイントである。bは基本的な中和滴定の量的関係を問うものであった。
問4 メタノールを用いた燃料電池の問題。負極の反応式が与えられているため、流れた電子の物質量を求めれば、容易に解答できる。
問5 アンモニアの電離定数を、加水分解定数と水のイオン積で表す式を選択する問題。酢酸を題材にした問題は解き慣れていた受験生が多いと思われるが、アンモニアが題材で戸惑った受験者もいたかもしれない。

【第3問】無機物質

問1 身近な無機物質に関する正誤問題。ルビーやサファイアの主成分を覚えていたかがポイントであった。
問2 ハロゲンの単体に関する正誤問題。塩素を含むオキソ酸は盲点になっていた受験者も多いと思われる。
問3 2種の気体の性質に関する正誤問題。まずは、気体A、Bを正しく同定できたかが重要である。その上で、その気体の性質に関する知識を必要とする、やや解きにくい問題であった。
問4 与えられた記述から2種の元素を選択する問題。元素アはリンの同素体に関する知識、イはMgとCaの性質の違いを覚えていれば解答できる。
問5 水和水を含む硫酸塩の化学式を選択する問題。見慣れない物質が題材となっており、難しかった。核物質の質量の差に注目して立式できたかがポイントであった。

【第4問】有機化合物

問1 分子を構成する原子数を選ぶ問題。化合物名から正しく構造式を思い浮かべられるかがポイントであった。
問2 幾何異性体が存在する化合物を化学式から選ぶ問題。実際に構造式を書いてみて、幾何異性体をもつ化合物が見つけられればよい。
問3 アセトンの性質に関する問題。ケトンはアルデヒドと異なり還元性をもたないことを知っていれば解答できる。
問4 アルコール中の不飽和結合の数を決定する問題。アルコールとナトリウムが反応するときの物質量比に注目できたかがポイントであった。
問5 アセチルサリチル酸の合成実験を題材とした問題。aはアセチルサリチル酸の合成に関する知識、bはフェノール類の検出に関する知識があれば解答できる。

【第5問】高分子化合物の性質・糖

問1 合成高分子化合物の構造と製法に関する問題。各化合物の合成法や構造をきちんと覚えられていれば容易に解答できる。
問2 高分子化合物の性質に関する知識を問う問題。ヨウ素デンプン反応を示す化合物をきちんと整理できていたかがポイントであった。

【第6問】合成高分子化合物

問1 熱硬化性樹脂に関する知識問題。熱硬化性樹脂の代表例を覚えていれば解答できる。
問2 ジカルボン酸のメチレン基の数を求める問題。高分子化合物と重合度から、繰り返し単位の式量を手際よく求めることができたかがポイントであった。

【第7問】アミノ酸・核酸

問1 タンパク質に関する知識を問う問題。タンパク質の構造や性質に関して幅広く問う問題であった。
問2 スクロース(二糖)の加水分解に関する計算問題。還元性をもつ糖ともたない糖を意識できたかがポイントであった。

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