センター試験速報 現代社会
2020年度
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全体概観
総合的大問が増えたものの出題形式はオーソドックスな傾向を維持、幅広い分野での理解の正確さが求められる
難易度:昨年並み
出題形式は大問6問、小問36問と、過去5年と同様であった。昨年と若干変化し、第1問と第3問の小問が8問、その他が5問という形式であった。統計を読み取る形式の設問は例年通り2問出題された。両問とも読み取りだけでなく計算を要求されるが、落ち着いて取り組めば正解にたどりつける内容であった。3つの内容の正誤をすべて判別する問題が昨年は出題されなかったが、本年は3問出題され2018年の傾向に戻った。2019年になかった本文との内容合致を問う設問も復活している。一方、2018年の第3問問2のように、知識よりも条件を基にした論理的な思想力を問う、共通テストの傾向を先取りする出題といえる設問は昨年に引き続き明確には見当たらず、2018年まで2年連続で出題された選択肢ごとに写真が付く形態の出題も昨年に引き続きなかった。
バーゼル合意、民法における「契約」、比較生産費説など、前年取り上げられた事項が出題されているケースが目につく一方、分野が入り混じった総合的な出題の大問が増えた。ただ、時事的要素の占めるウエイトはリード文の第一印象の割に多くないといえる。また一部の設問で細かい学習が必要な事項も含まれているため、理論的事項の学習の徹底が要求されるものとなっている。倫理的要素は、マズローの自己実現論が昨年に続いて出題されるなど、ほぼ前年なみのウエイトであった。全体的に一般常識で判断できる設問は昨年同様ほぼ存在しないため、主として「政治・経済」分野での着実な学習が要求される出題となった。
政治・経済、および現代社会の諸問題に関する事項が融合した出題傾向が進んでいるものの、出題形式・内容自体は極めてオーソドックスであり、学習の達成度が点数に反映しやすい内容であった。また通常の設問形式よりも正答にたどりつきやすい適当でないものを選ぶ問題の減少傾向に歯止めがかかり、昨年より1問増加した。一部出題形式の変化はあったものの2018年の傾向の復活が多く、出題形式でとまどわない分、正確な知識が問われる出題傾向が維持され、全体の難易度は前年並みであったと言える。
設問別分析
【第1問】オリンピック・パラリンピック(政治経済総合課題)
リード文は、本年開催の東京五輪をテーマとしたものであった。設問は、政治・経済が織り交ぜられた総合的な出題であった。問3は若干の計算は必要なものの、特別な知識は必要ない資料読解問題であった。一方問4で昨年に続き民法の「契約」に関する出題があり、過去問の復習をしたかどうかで差がつく結果となった。その他、環境や情報といった現代社会的な分野の設問においても、法律をはじめとした制度や歴史に関する理論的事項の確実な理解が必要であった。
【第2問】青年期・ライフスタイルの変化
リード文はドゥンカーの「箱問題の実験」を素材に固定観念について取り上げた青年期に関する記述だが、出題の内容は青年期に関するものだけでなく家族や労働に関する内容も含んでいる。問5ではマズローの自己実現理論が昨年に続き出題されている。問2は課題追究学習の出題であった。
【第3問】学問領域・経済における課題の取り組み
前年は5問であったが8問の大問に戻った。「文系と理系」をきっかけとして、学問の専門領域の形成と現代社会の課題解決のために越境が求められているというリード文から、倫理分野だけでなく政治・経済分野が総合的に出題された。問6ではバーゼル条約が昨年に続き出題となっている。問8は特別な知識は必要ない資料読解問題だが、計算がやや煩雑と感じた受講生が多いことが想定される。
【第4問】ヒト・モノの移動・情報の流通
前年は8問であったが5問の大問に戻った。リード文はグローバリゼーションに伴うヒト・モノ・情報の移動について述べているが、倫理と経済分野に拠った出題となっている。問1は日本思想を広い時代スパンで問う内容で、確実な学習が必要であった。問4で昨年に続きリカードの比較生産費説が出題された。
【第5問】経済成長と経済危機
リード文は経済の成長と危機に関する内容であり、今回の大問の中では珍しく分野横断要素が薄く、オーソドックスな経済分野中心の出題となっている。問1は時事的要素があるように見えるが「デモンストレーション効果」という用語について正確な理解があるかどうかが分かれ目になるなど、理論的事項を正確に把握しているかが問われた。
【第6問】政治参加のあり方
リード文は投票をはじめとする政治参加のあり方を問う内容であり、政治分野に拠ったオーソドックスな出題となっている。問1でここ3年連続で出題されている各国の政治制度が出題された。また問5では、昨年にはなかったリード文本文との内容合致を問う出題が復活し、知識よりも正確な読解力が問われた。
2019年度
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全体概観
出題形式がオーソドックスに、幅広い分野での理解の正確さが求められる
難易度:昨年並み
出題形式は大問6問、小問36問と、過去5年と同様であった。昨年と若干変化し、第1問と第4問の小問が8問、その他が5問という形式であった。統計を読み取る形式の設問も例年通り2問出題された。そのうち第5問の問5では読み取りに時間がかかる五角形のレーダーチャートが出題されたが、2問とも落ち着いて読み取れば正解にたどりつける内容であった。3つの内容の正誤をすべて判別する問題が昨年4問出題されたが本年は出題されなかった。昨年の第3問問2のように、知識よりも条件を基に論理的な思想力を問う、共通テストの傾向を先取りする出題といえる設問は明確には見当たらず、過去2年連続で出題された選択肢ごとに写真が付く形態の出題もなかった。
バーゼル合意、民法における「契約」、地域経済分析システムなど、次期課程で重視される事項、時事的要素や教科書には出ていない用語があったものの、全体としては時事的要素の占めるウエイトはリード文の印象ほど高くない。また一部の設問で教科書レベルを超えていたり、細かい学習が必要な事項も含まれているため、理論的事項の学習の徹底が要求されるものとなっている。倫理的要素は、2015年以来出題がなかったマズローの自己実現論が出題されるなど、ほぼ前年なみのウエイトであった。全体的に一般常識で判断できる設問は昨年同様ほぼ存在しないため、主として「政治・経済」分野での着実な学習が要求される出題となった。
政治・経済、および現代社会の諸問題に関する事項が融合した出題傾向が進んでいるものの、出題形式・内容自体は極めてオーソドックスであり、学習の達成度が点数に反映しやすい内容であった。さらに、通常の設問形式よりも正答にたどりつきやすい適当でないものを選ぶ問題の減少傾向に変化はなかった。出題形式でとまどわない分、正確な知識が問われる出題が増え、全体の難易度は前年並みであったと言える。
設問別分析
【第1問】経済のグローバル化
リード文は、国際経済枠組みのグローバル化をテーマとしたものであった。設問は、経済分野を中心とした出題であった。グローバル化や国際駅通貨・貿易体制など経済に関する理論的事項の内容がほとんどであり、経済分野の大問といえる。全体の出題傾向およびレベルとしては、理論的事項をオーソドックスに問うているが、ほぼすべての設問で理論的事項の確実な理解が必要であったため、やや難しかったといえる。
【第2問】人権保障と国家の役割
リード文はSNSなども素材に取り上げているが、出題の内容は日本での人権を中心とした基本的なものである。憲法における人権、情報公開の判例、刑罰、国会といった観点から出題された。一定の学習を積んだ受験生にとっては実力を発揮しやすい設問内容であり、点を取りこぼさないことが求められているといえる。問2は西洋近代思想を正確に理解できているかが問われた出題であった。
【第3問】人の社会性
前年までは8問であったが5問の大問となった。「ありがとう」という感謝についてのリード文から、倫理分野中心に出題された。問1の社会性に関する出題では西洋近代思想の理解が問われた。問2ではマズローの自己実現理論が2015年以来の出題となっている。問5は課題追究学習の出題であった。
【第4問】社会保障制度
前年までは5問であったが8問の大問となり、リード文は対話形式で少子高齢化についての内容となっているが、少子高齢化を切り口として、分野横断的な要素の強い出題となっている。特に問1・3・6で法律の理解について問われるなど、理論的事項の正確な理解がないと歯が立たない手ごわい大問となっている。問3において前年は条件を基とした読解問題であった民法上の「契約」について知識問題として問うたもので、過去問とその復習をしたかどうかが問われる出題であった。問2は資料読解問題だが、特別な知識は必要ない。
【第5問】地方創生
リード文は「地方創生」と、その際にツールとして重要である「地域経済分析システム」についてであるが、経済分野中心にオーソドックスな出題となっている。問5はレーダーチャートの読解問題で特別な知識は不要であったが、五角形で読解すべき要素が多数あったため若干時間がかかった受験生がいたことが想定される。
【第6問】欧州の統合
リード文は英国の離脱問題などで注目を集めている欧州統合に関する内容であった。問3でここ2年連続で出題されている各国の政治制度が出題された。また問4では近代民主主義思想の主要宣言・憲法に関して内容の正確な理解を問う出題であった。
2018年度
問題・解答はPDFファイルです。ご利用の端末や通信環境によっては表示に時間が掛かる場合がございます。
全体概観
出題形式に変化はないが、幅広い知識が必要な出題が増え、難化
難易度:難化
出題形式は大問6問、小問36問と、過去5年と同様であった。昨年と同様、第1問と第3問の小問が8問、その他が5問という形式であった。統計を読み取る形式の設問も例年通り2問出題された。そのうち第6問の問3では与えられた条件による判断推理が必要となっているが、グラフや統計の数値、および与えられた条件をもとに計算や推理をして選択肢を吟味すれば正解にたどりつける内容であった。3つの内容の正誤をすべて判別する問題が4問出題され、昨年の2問より増加した。第3問問2のように、条件を基に論理的な思想力を問うものもあり、共通テストの傾向を先取りする出題と言える。また、第3問問4で、昨年に引き続いて世界遺産関連の設問で選択肢ごとに写真が付く形態の出題があったが、写真は解答には影響を与えないものであった。
18歳選挙権、パリ協定、六次産業化など、次期課程で重視される事項、時事的要素や教科書には出ていない用語があったものの、全体としては時事的要素の占めるウエイトはリード文の印象ほど高くない。また一部の設問で教科書レベルを超えていたり、細かい学習が必要な事項も含まれているため、理論的事項の学習の徹底が要求されるものとなっている。倫理的要素は、昨年出題されなかった「青年期」が出題されるなど、前年をやや上回るウエイトであった。全体的に一般常識で判断できる設問は昨年同様ほぼ存在しないため、主として「政治・経済」分野での着実な学習が要求される出題となった。
政治・経済、および現代社会の諸問題に関する事項が融合した出題傾向が進んでいるため、大問内での出題範囲の広さにとまどう受験生が一定数いたと思われる。さらに、通常の設問形式よりも正答にたどりつきやすい適当でないものを選ぶ問題が昨年よりも減った。幅広い分野において正確な知識が問われる出題が増え、全体の難易度は難化したと言える。
設問別分析
【第1問】地域活性化と経済社会
リード文は、昨年に引き続きボランティアなど近年重視される内容を織り交ぜたもので、地域活性化をテーマとしたものであった。設問は、経済分野を中心とした出題であった。企業や労働者に関する制度や経済社会に関する理論的事項だけでなく、地域振興や地方自治に関する内容をも総合的に問う内容であった。全体の出題傾向およびレベルとしては、理論的事項をオーソドックスに問うており、理論的事項の確実な理解が必要であった。問8は資料読解問題であったが、特別の知識は必要ない。
【第2問】議会と民主政治制度
リード文は2016年の参議院選挙を素材にしており、18歳選挙権および主権者教育について取り上げている。議会や選挙などの民主政治制度に関して、日本だけでなくアメリカの政治制度、国会議員および地方議員などの観点からも出題された。一定の学習を積んだ受験生にとっては実力を発揮しやすい設問内容であり、点を取りこぼさないことが求められているといえる。問4で昨年出題がなかった青年期に関する要素を含んだ出題であった。
【第3問】データと現代社会の諸問題
データ活用に関するリード文から、現代社会に存在するさまざまな問題についての内容を環境、資源などを軸として総合的に出題された。出題範囲が広いが、戸惑わずに選択肢を検討できる知識、およびセンター試験の出題傾向への慣れがあったかどうかが問われる内容となっている。問2では昨年の第4問問3同様、法的論理に基づく思考能力を試す出題となっているが、素直な読解で分類できる内容であった。問4は昨年に続いて、世界遺産について、写真を用いて尋ねる出題形式であった。問6では資料読解問題が出題されたが、特別の知識は必要なく、資料を読み取ることで解答できる。問8で昨年第1問問8同様、リード文全体の内容を確認させる出題があったが、正答の組合せを求めるものであったため若干難易度が上がっている。
【第4問】ロボット技術の進歩と人間の精神
ロボット技術の進歩と問題点をテーマにして、コミュニケーションや価値観といった切り口から倫理的事項を中心に尋ねた設問。ただし問2は日本の高齢者向け社会保障制度に関する出題であった。また問3は課題追究学習についての出題であった。
【第5問】新自由主義と社会への影響
新自由主義の考え方とその影響というテーマの下、経済分野について尋ねた大問である。時事的要素はなく、理論的事項がしっかりと理解できているかが問われており、手ごわい大問となっている。問3は2013年以来の比較生産費説に関する出題で、計算をしたうえで選択肢を吟味する必要があったため、若干時間がかかった受験生がいたことが想定される。
【第6問】地域環境問題と各国の取り組み
国際的な温暖化対策への各国の取り組みをテーマとして、環境を中心とした国際社会の理論的事項を中心に出題されている内容であった。問3はパリ協定に関する出題であるが、与えられた資料を基に計算すれば容易に解答できる。