センター試験速報 倫理
2020年度
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全体概観
形式はおおむね昨年通り。設問数は1題増え、37に。
難易度:昨年並み
大問4は例年通りだが、小問37は昨年より1題増。形式面では、昨年4題あった6択形式の設問が6題に増えた。クワインおよびノージックは、過去名前だけ一度登場したことがあったが、今回初めて正面から出題された。その他、まだ22歳のマララ・ユスフザイの主張について問われた。イエズス会のロヨラの名が出題されたのも初めてであった。日本思想分野で「共和主義」についての理解が求められたが、近年政治哲学で関心の高まっているキーワードとして、注目できる出題である。日本思想分野では鈴木正三についての知識が求められるなど、多くの受験生が苦しんだものと考えられる。昨年は平均点が5点以上下がったが、今年も昨年並みと思われる。
設問別分析
【第1問】青年期・現代社会分野
例年と同様、青年期と現代社会分野からの出題が中心であった。リード文が会話形式という点も同様。問1ではクワインについて初めて出題された。出題形式としても、読解能力と知識をともに求める新形式であった。また過去に誤答の選択肢として名前だけ一度登場したことのあったノージックが正面から初めて出題された。また問8では国連難民高等弁務官事務所やマララ・ユスフザイについての知識を求める設問があった。
【第2問】源流思想分野
形式面でも内容面でも伝統を踏襲した形で、とくに目新しいものはなかった。問3は大乗仏教に特化した設問で、「小乗仏教」が自称でない点や南伝仏教と北伝仏教についての知識など、やや細かめの内容が問われた。古代中国思想からの出題が少なく、墨子と孟子についての設問があったほかは、「儒教と仏教」についての問5で朱熹についての選択肢が2つあっただけだった。
【第3問】日本思想分野
昨年もそうだったが、今年もかつてとは出題テーマが大きく変わっている。問1では源信と空也についての知識が問われ、問2では日本の美意識ということで、西行・吉田兼好・雪舟・九鬼周造が問われた。問5では過去2回だけ問われた鈴木正三についての知識が求められ、その誤答選択肢としても西川如見と細かい人物が挙げられた。また問7では「共和主義」についての知識が求められ、誤答選択肢が「共産主義」だったので平易とはいえ、新傾向の出題である。
【第4問】西洋近現代思想
おおむね伝統を踏襲する出題であったが、やや新しい傾向も見出される。問1ではヒューマニズム・プロテスタンティズム・カトリシズム・ピューリタニズムが併置されてその理解が問われ、ロヨラの名について初めて問われた。問5ではミルについて、「内的制裁」の語を用いずにその理解を必要とする選択肢が出た。またリード文でも触れられ問8の読解問題で出てきたホネットは、近年注目の高まっている哲学者だが、センター試験では初めて出題された。
2019年度
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全体概観
形式はおおむね昨年通り。日本思想分野の内容が難しく、難易度は難化した。
難易度:難化
大問4、小問36は昨年と同じ。形式面では大きな変化はなかったものの、一昨年に10題、昨年に4題あった8択形式の問題が今回は1題もなかった。その代わり、昨年は3題あった6択形式の問題が4題となっている。4択形式が増えた分、形式的には易しくなったと言えるだろう。ただ、内容面では、生殖技術や家族形態についてのやや難しい知識が問われたほか、日本思想分野で小林秀雄・丸山眞男・坂口安吾といった細かい知識が問われた。また、これまでに出題例のない会沢正志斎が吉田松陰と合わせて問われ、西田幾多郎についても無の場所という難しい論点が問われた。こうした内容的な難しさにより、平均点は昨年よりも下がると考えられる。
設問別分析
【第1問】青年期・現代社会分野
例年と同様、青年期と現代社会分野からの出題が中心であった。リード文が会話形式という点も同様。生殖技術や家族形態についての設問ではやや細かい知識が必要になる。ステレオタイプの具体例が問われた問4は、2010年本試で類題が出ている。分野を横断する問7では、トルストイ、シュヴァイツァー、小林秀雄、坂口安吾、丸山眞男についての知識が必要になる。
【第2問】源流思想分野
出題内容に目新しいものはないが、「ヒポクラテスの誓い」についての文章読解問題を除くと、古代ギリシア哲学からの出題が少なく、ユダヤ教・キリスト教についての選択肢を含む横断的な問1しかなかった。また、近年は各大問に組合せ問題が必ず含まれていたが、本問には組合せ問題がなく、すべて4択問題であった。
【第3問】日本思想分野
全体概観でも触れたとおり、難しかった。吉田松陰と会沢正志斎が問われた問6や、西田幾多郎の無の場所について問われた問8は多くの受験生が苦しんだろうし、古神道についての問1や日本の美意識の問われた問4もやや難しい。問2も栄西と一遍について問うという珍しい問われた方であったし、問7では内村鑑三が日清戦争を肯定していたという点が言及され、判断に迷った受験生が多かっただろう。
【第4問】西洋近現代思想
過去何度も出題されてきた論点を中心とする、比較的オーソドックスな出題であった。ただし、ヘーゲルの歴史観が問われた問4はやや難しかったであろう。
2018年度
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全体概観
形式は昨年通り。標準的な事項を中心とする出題であり、難易度はやや易化。
難易度:やや易
大問4は例年通りだが、小問が一つ減少して36となった。形式面では、昨年10題もあった8択問題が4題へと減り、オーソドックスな短文4択問題が増えた。また3つの短文からなる6択の正誤組合せ問題が復活したほか、新形式としてサブリード文の空欄3箇所に5つの短文から選択させる8択組合せ問題が登場した。内容面では、セン、三宅雪嶺、ウィトゲンシュタインについて比較的詳しい理解が求められた設問があったほかは、特に目新しいものはない。昨年は平均点が久しぶりに上昇したが、今回は形式面での易化もあるため、昨年以上に回復すると思われる。
設問別分析
【第1問】青年期・現代社会分野
昨年と同様、青年期と現代社会分野からの出題が中心であった。リード文が会話形式という点も同様。問1では、サブリード文の空欄3箇所に5つの短文から選択させる8択組合せ問題という新形式が登場した。問9で出題されたセンについての正誤判定問題は、「潜在能力」というキーワードについての理解が求められ、難しかったと思われる。
【第2問】源流思想分野
分野を横断した総合問題が3題出題された(問1では仏教・イスラーム教・古代ギリシア・ヘブライズム、問5では孔子と大乗仏教,問8ではブッダ・プラトン・朱子)。その他は古代ギリシア哲学が1題、キリスト教とイスラーム教が各1題、古代中国思想が1題、仏教が1題というバランスであった。古代ギリシア哲学からの出題が例年と比べて少なかった。
【第3問】日本思想分野
比較的オーソドックスな設問が多かったが、石田梅岩についての問5は、各選択肢ともに部分的に正しい記述を含み、誤文を排除するのは難しかったと思われる。三宅雪嶺についての問7も、自信をもって誤文を外せた受験生は多くなかっただろう。その他、問4の空欄補充組合せ問題で出題された貝原益軒や富永仲基もやや難しいが、消去法で正答することもできる。
【第4問】西洋近代思想
ヘーゲル、ロック、カントといった重要思想家についての設問(問1、2、3)は例年と比べても平易であった。問6ではウィトゲンシュタインの言語ゲーム論についての理解が求められたが、これは受験生には難しかったであろう。問5ではロジェ・カイヨワの文章読解問題が出題された。カイヨワを知っていた受験生は少ないだろうが、標準的な国語力があれば難しくない。