センター試験速報 倫理、政治・経済
2020年度
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全体概観
大問構成は倫理分野、政治・経済分野から各3問。小設問はすべて「倫理」「政治・経済」単独からの流用。
難易度:昨年並み
出題形式としては、倫理分野、政治・経済分野から大問が各3問ずつ計6問、小設問はすべて「倫理」・「政治・経済」単独科目と共通であったが、倫理分野が第3問で1問増えたため、全37問になった。本年度も「倫理」と「政治・経済」の全分野から網羅されるように設問が選択されている。したがって、倫理分野、政治・経済分野ともに十分な準備をしておかないと高得点は望めないであろう。昨年と同程度の難易度の問題が多く出題されており、難易度は昨年並みと思われる。
設問別分析
【第1問】現代社会分野・青年期分野
リード文は「倫理」第1問と共通で、現代社会分野・青年期分野から出題された。5問中3問が文章の穴埋め、グラフ読解、資料文読解であり、解答に時間がかかるものが多かった。クワインについて問われた問1は、空欄Aは後に続く文章から推測することが可能であるが、空欄Bは学習量が十分でない学生には答えにくかったと思われる。問5は④で唐突に「リサイクル」という語が出てくるため、違和感を感じた受験生も多かったであろう。
【第2問】源流思想分野・日本思想分野
第2問は源流思想分野(諸子百家など)と日本思想分野(古代の日本や山鹿素行など)から出題された。リード文および設問のベースは「倫理」第3問であり(7題中5題が「倫理」第3問と共通)、2題が「倫理」第2問と共通問題であった。大乗仏教について問われた問1では、誰が「小乗仏教」と呼んだのかという点や、菩薩は出家しているかいないかという点を考えなければならず、深い理解が求められた。また、学習の及びにくい近代の思想家についての問題が2題出題された。その中でも徳富蘇峰について問われた問5は、他の選択肢も全員近代の思想家に分類される人の説明であるため、解答を選びにくい。
【第3問】源流思想分野・西洋近現代思想分野
第3問は源流思想分野(キリスト教など)と西洋近現代思想分野(スピノザやニーチェなど)から出題された。リード文および設問のベースは「倫理」第4問(西洋近現代思想)であり(7題中5題が「倫理」第4問と共通)、2題が「倫理」第2問(源流思想)と共通問題であった。問1や問2は平易であるが、問3から問5は、エピクロスの「死」に関する考え方や、ヘーゲルの人倫のような、一考を要する選択肢が含まれており、問題の難易度を引き上げている。
【第4問】政治・経済総合問題
リード文は「政治・経済」第1問と共通で、すべてそこから設問が抜粋されている。出題内容は、アダム・スミス、日本の労働法、需要・供給曲線、地方公共団体、難民問題など幅広いものであった。問3の寡占・独占に関する問題は、②や③の理論的な文章で惑わされるが、正答は管理価格という平易なものであった。一方、問4では消費者団体訴訟制度が正答になっているが、これは教科書の注の箇所に述べられていることが多い用語であるため、学習が及んでいなかった受験生もいたと思われる。
【第5問】基本的人権
リード文は「政治・経済」第3問と共通で、すべてそこから設問が抜粋されている。出題内容は、公共財、公共財の非排除性、発展途上国の経済など経済分野からのものであった。表の読み取りが2題出題されているが、問4は自己資本・他人資本、直接金融・間接金融の区分ができないと答えられず、問5もグラント・エレメントの意味を知っていなければ正解を選択できないというように、問題に工夫がなされている。また、問3は2012年度の「政治・経済」第2問とほぼ同じ問題であり、過去問を幅広く解いていた受験生は容易だったであろう。
【第6問】民主主義と各制度
リード文は「政治・経済」第4問と共通で、すべてそこから設問が抜粋されている。出題内容は、選挙制度、大衆民主主義、国民の自由や権利など政治分野からのものであった。問1は立憲主義と民主主義の関係をテーマにしたもので、選択肢中での「機関」が何を指すのかを見抜けるかが一つのポイントである。2014年度の第4問で同様の問題が出題されており、過去問をしっかり解いていた受験生は対応しやすかったと思われる。
2019年度
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全体概観
大問構成は倫理分野、政治・経済分野から各3問。小設問はすべて「倫理」「政治・経済」単独からの流用。
難易度:昨年並み
出題形式としては、倫理分野、政治・経済分野から大問が各3問ずつ計6問、小設問はすべて「倫理」・「政治・経済」単独科目と共通の36問で、変化はなかった。本年度も「倫理」と「政治・経済」の全分野から網羅されるように設問が選択されている。したがって、倫理分野、政治・経済分野ともに十分な準備をしておかないと高得点は望めないであろう。全体としては昨年度と同様、オーソドックスな出題が多く、難易度は昨年並みであった。
設問別分析
【第1問】現代社会分野・青年期分野
リード文は「倫理」第1問と共通であった。出題内容は、青年期、生命倫理、現代社会の課題、現代思想、資料文読解であった。条約や「人間の安全保障」が倫理分野で出題されているが、平易である。他の問題も基礎的な知識で解答できるだろう。
【第2問】源流思想分野・日本思想分野
リード文および小設問のベースは「倫理」単独科目の第3問(日本思想)であり(7題中5題が「倫理」第3問と共通)、2題が「倫理」第2問(源流思想)と共通問題であった。出題内容は、古代の日本人、仏教における慈悲、仏教と武士、日本の芸術、中国思想と仏教思想における心・身体、西田幾多郎、趣旨読解であった。西田幾多郎の絶対矛盾的自己同一が問われているが、近年のセンター試験ではたびたび西田幾多郎が取り上げられているので、対策はできたはずである。他の問題は、日本の芸術についての問いでやや細かい知識が問われたくらいで、基礎的な問題が多かった。
【第3問】源流思想分野・西洋近現代思想分野
リード文および小設問のベースは「倫理」単独科目の第4問(西洋近現代思想)であり(6題中4題が「倫理」第4問と共通)、2題が「倫理」第2問(源流思想)と共通問題であった。出題内容は、源流思想を幅広く問う問題が2題、ベーコンのイドラ、絶対精神、自然選択、趣旨読解であった。墨家、ダーウィン、スペンサーなど学習が及びにくい思想家が取り上げられており、やや取り組みにくい大問であったと思われる。
【第4問】地域経済統合
リード文は「政治・経済」第1問と共通で、すべてそこから小設問が抜粋されている。出題内容は、特別裁判所、国民所得、条約、知識を必要とするグラフ読解、国連海洋法条約、外交に関わる日本国憲法の規定、金融、会社における無限責任と有限責任であった。条約であるものを問う問3は、国際分野で出てくる用語を雑に覚えていると答えにくいかもしれない。グラフ読解の問4は、必要とされるのはすべて基礎的な知識である。他はおおむね基礎的な問題であった。
【第5問】基本的人権
リード文は「政治・経済」第3問と共通で、すべてそこから小設問が抜粋されている。出題内容は、人身の自由、新しい人権、大日本帝国憲法と日本国憲法の比較、国会、地方自治制度であった。首長の不信任決議の要件が問われた問5がやや細かい程度で、全問正解も可能な問題が並んでいる。
【第6問】地球環境問題
リード文は「政治・経済」第4問と共通で、すべてそこから小設問が抜粋されている。出題内容は、リスト、グラフ読解、環境保全を促す政策、時事問題(コンパクトシティとふるさと納税)、環境問題であった。環境保全を促す政策を問う問題では、「誘因を与え」ていない制度を見つけ出せるかが鍵である。問4の時事問題は、空欄の前後の文章から判断できる内容である。
2018年度
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全体概観
大問構成は倫理分野、政治・経済分野から各3問。小設問はすべて「倫理」「政治・経済」それぞれの出題内容と同一。
難易度:やや易化
出題形式としては、倫理分野、政治・経済分野から大問が各3問ずつ計6問、小設問はすべて「倫理」「政治・経済」それぞれの出題内容と同一であった。また政治・経済分野で2013〜2015年度にあった「倫理、政治・経済」オリジナルのリード文は本年度もなく、すべて「倫理」「政治・経済」単独からの流用であった。また、倫理分野が前年度と比べて1問減少したため、小設問は36問となった。
本年度も「倫理」と「政治・経済」の全分野から網羅されるように設問が選択されている。したがって、倫理分野、政治・経済分野ともに十分な準備をしておかないと高得点は望めないであろう。全体としてはオーソドックスな出題が多く、難易度は昨年よりやや易化した。
設問別分析
【第1問】現代社会分野・青年期分野
リード文は「倫理」第1問と共通であった。出題内容は、青年期、社会主義者とヒューマニズム、マズロー、資料文読解、センであった。センの「潜在能力」について深く問われた問5以外は、学習を積み重ねてきた受験生ならば容易に解答できる問題である。
【第2問】源流思想分野・日本思想分野
リード文および小設問のベースは「倫理」単独科目の第3問(日本思想)であり(7題中5題が「倫理」第3問と共通)、2題が「倫理」第2問(源流思想)と共通問題であった。出題内容は、日本の神、八正道、日蓮、江戸時代の学者、欲望を探究した思想家・宗教者、三宅雪嶺、趣旨読解であった。問2の八正道は2014年度本試験の「倫理」でも出題されているが、今回は選択肢のうちの二つに「六波羅蜜」という明らかな誤りを含ませており、難易度を下げている。問4と問5は、それぞれ出版業、欲望と、視点を変えて出題しているが、求められる知識は標準レベルである。問6の三宅雪嶺は一見難しそうだが、問題文にヒントが出ている。正答の選択肢もそれに対応しているので、素直に選びたい。
【第3問】源流思想分野・西洋近代思想分野
リード文および小設問のベースは「倫理」単独科目の第4問(西洋近現代思想)であり(7題中5題が「倫理」第4問と共通)、2題が「倫理」第2問(源流思想)と共通問題であった。出題内容は、パウロ、ロック、自然をめぐる西洋の思想、資料文読解、歴史に名を残す書物の内容、趣旨読解であった。全体的に基礎的な事項が出題されている。問3と問5は時代横断的な問題であるが、近年よく出題されているパターンであるから、過去問に取り組んでいた受験生は正答できたであろう。
【第4問】近代国家の役割と変遷
リード文は「政治・経済」第1問と共通で、すべてそこから小設問が抜粋されている。出題内容は、リード文の穴埋め、基本的人権、アメリカとイギリスの政治制度、法の支配、需要曲線・供給曲線、ローレンツ曲線、エネルギー(電力)、日本の安全保障であった。問5は問題の設定から、どちらの曲線が動くかを判断すればよい。問6は選択肢を一つ一つしっかり読み、グラフと比較して正誤判断すること。その他の小設問は基礎・標準レベルであった。
【第5問】国内外での経済格差
リード文は「政治・経済」第3問と共通で、すべてそこから小設問が抜粋されている。出題内容は、リード文の穴埋め、南北問題・南南問題、一次エネルギーに関する表の読み取り、社会保障制度、教育費支出に関する表の読み取りであった。概ね基礎・標準レベルの問題であったが、教科書では読み流してしまいそうな所で述べられている「トレード・オフ」が出題された問1や、各国の一次エネルギーの特色を把握しているかが問われた問3は、解答に時間がかかったかもしれない。
【第6問】男女共同参画社会
リード文は「政治・経済」第4問と共通で、すべてそこから小設問が出題されている。出題内容は、政治制度に関する一定の知識を基にした表の読み取り、国会の種類・議院の会議、アファーマティブ・アクション、労働に関する法律、違憲とされた法制度であった。問4の労働に関する法律がやや細かい程度であるが、できれば全問正解したい。