センター試験速報 世界史A
2020年度
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全体概観
設問数1問減。地図・グラフは継続して登場し、絵画問題も2年連続で出題された。
難易度:やや難化
昨年より設問数が1問減少したが、形式に大きな変化がない例年通りの問題構成であった。地図問題は2問で昨年の3問より1問減少し、語句と関連させずに純粋に位置と領域を判断するものであった。うち1問は明の支配領域を選択するが、2017年の地図問題の正解として明の支配領域を選択する地図が登場しており、過去問演習の重要さを改めて認識させられた。グラフは4年連続で登場し、今年も折れ線グラフであるが、グラフについて説明する2文の正誤組合せ問題でなく、短文に語句を補充する形式が出題された。相変わらず普段から教科書・資料集・地図を活用した丁寧な学習をしているかが問われた良問が多かった。人名と地域・出来事に関する正文・誤文問題で、判断に迷うようなものが多く、全体的に昨年よりは難化したといえる。
設問別分析
【第1問】王朝や君主
Aはイングランド王リチャード3世、Bは大清皇帝功徳碑、Cはアムール川河口付近に明朝が建立した石碑について述べたリード文をもとに、主に近世以降のアジア・ヨーロッパの政治に関する問題が出題された。Aでは2年連続となるルネサンス期の絵画の作者を問う問題、Bでは万里の長城の写真からその所在国を問う地図問題、Cでは明朝の支配領域を問う地図問題がそれぞれ出題され、普段から教科書・資料集・地図などの資料に触れて学習がされているかが問われた。
【第2問】産業や労働
Aは中世ヨーロッパの手工業や商業、Bは19世紀のロンドンの製造業、Cは上海への人の流入について述べたリード文をもとに、主に東アジア・ヨーロッパに関する問題が出題された。Aでは中世から近代にかけての中国・西ヨーロッパ・アメリカ合衆国の労働に関する問題が出題され、特定の地域に偏らない社会史の学習度合いが問われた。Bでは労働者と社会主義運動に関する年代整序問題が出題され、労働運動の歴史的な発展段階についての知識・理解が問われた。Cで中華人民共和国の死亡率の推移を示すグラフに関する問題が出題され、単に事項を覚えるのではなく歴史的事象と結びつけて因果関係を考察する能力が問われた。
【第3問】植民地とそれをめぐる対立や抗争
Aは北アメリカ大陸の先住民と入植者、Bは第二次世界大戦当時のフランス領植民地について述べたリード文をもとに、主に近代以降の欧米に関する問題が出題された。Aではオーストラリア・中南米の植民地化に関する2文正誤判定問題が出題され、植民地と宗主国の組合せとその過程に関する正確な知識が問われた。Bでは各国の文化事業に関する問題が出題され、文化事業とその当時の政治・社会情勢との関連を判断する能力が問われた。
【第4問】法と規範
Aは五代十国時代の刑罰、Bは中世アイスランドの復讐する女性について述べたリード文をもとに、主に各地の政治・法令に関する問題が出題された。Aでは公民科(現代社会、政治・経済)との関連の強い各国の法や宣言に関する問題が2問出題され、選挙権を獲得する18歳に主権者としての自覚を問うた問題に見える。Bでは三十年戦争とグロティウスによる国際法の確立を提唱した時期を問う年表問題が出題され、主権国家体制の成立段階を理解しているかが問われた。
2019年度
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全体概観
大問数・設問数ともに変化なし。絵画の作者を問う問題が復活し、昨年まで2年連続で1問であった地図問題が3問に増加した。
難易度:やや易化
昨年と出題形式に変化がなく大問数4、設問数33となった。地図問題の出題数が増加し、例年出題されていた領域を問うものだけでなく、経路を問う問題が出題された。グラフを使用した問題は3年連続で出題され、今年も折れ線グラフ中の数値と年代を関連付けるものであった。昨年出題されなかった絵画問題が復活し、地図・グラフ・絵画など諸資料を活用して学習がなされているか問われた。昨年出題されなかった時期についての理解が問われる正文選択問題が5問出題され、一部難問が見られたものの、難度としては例年並みで、平均点が40点を下回った昨年よりはやや易化したといえる。
設問別分析
【第1問】戦争や軍隊
Aは中華民国の国民政府、Bはヨーロッパ諸国の植民地軍、Cはクラウゼヴィッツについて述べたリード文をもとに、主に近現代の世界の動向に関する問題が出題された。Aではアメリカ同時多発テロの時期を問う年表問題が出題され、受験生が生きている「現在」に関する理解が問われた。Bではヨーロッパ諸国の協定・同盟に関する2文の正誤組合せ問題が出題され、近代の国際関係の推移についての正確な知識が問われた。Cではフランス・イギリス・ドイツの男性人口に占める軍人の割合を表した折れ線グラフを題材とした問題が出題され、戦争が起こった年代を正確に覚えているかが問われた。
【第2問】人・モノ・文化の交流
Aは中国の城壁と倭寇、Bは東南アジアの仏教、Cはモンゴル帝国期の外交について述べたリード文をもとに、前近代のアジアを中心とする問題が出題された。Aでは都市の位置を問う地図問題が出題され、普段から教科書の資料を確認して学習ができているかが問われた。Bでは東南アジアで広く信仰されている仏教の宗派を問うリード文中の空欄補充問題が出題され、現在の世界の文化に対する知識が問われた。Cではマゼラン一行の航路を問う地図問題が出題され、Aと同様に歴史的事項について語句だけでなく空間的に理解しているかが問われた。
【第3問】食べ物
Aはパンとワイン、Bは着色料について述べたリード文をもとに、主に近代以前の欧米に関する問題が出題された。Aでは壁画の作者について問う空欄補充問題が出題され、芸術家の業績に関する知識・教養が問われた。Bでは作物の伝播に関する空欄補充問題が出題され、各地域にみられる固有の食文化についての理解が問われた。中学校社会科で学習した内容に関する問題が複数見られ、中学校での学習内容が、高校で学ぶべき知識の土台となっていることが分かる。
【第4問】国家と指導者
Aはアフメトジャン=カシミ、Bはムッソリーニについて述べた文をもとに、20世紀の世界を中心とする問題が出題された。Aではオーストリア=ハンガリー帝国の成立時期を問う年表問題が出題され、19世紀後半の流れを理解しているかが問われた。Bでは国家の勢力拡大に関する当事国を問う正文選択問題が出題され、歴史的な事項について単に語句のみを覚えるのではなく、内容にまで踏み込んで理解しているかが問われた。
2018年度
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全体概観
大問数・設問数ともに変化なし。2年連続で出題された、図版を用いた絵画の作者を問う問題が本年はなかった。
難易度:変化なし
昨年と出題形式に変化がなく大問数4、設問数33となった。資料問題は国家の位置と政権名を問う地図問題、昨年に続きグラフを用いた2文の正誤組合せが出題された。写真を用いた出題が昨年は1問あったのに対し、本年は出題がなかった。近現代史の設問数は24問で昨年の15問から増加し、とくに20世紀後半~21世紀からの出題が7問あった。第1問で2問、第3問で1問と、日本に関連する問題が合計3問出題されており、「世界史の中の日本」を意識した出題であった。今後も日本と世界の関わりについての出題が予想される。正文または誤文の文章選択問題が17問から22問に増加したが、2文正誤組合せが昨年の5問から4問に減少した。解答番号11及び30でやや難問が見られたが、全体的には昨年とほぼ同程度の難度であった。
設問別分析
【第1問】伝統の利用による国家形成
Aはロムルスとレムスの像、Bはパフレヴィー朝の戴冠式、Cはチンギス=ハーンの名を冠した二つの施設について述べたリード文をもとに、古代から現代に至るまで幅広い問題が出題された。Aではルーマニアの歴史に関する問題が出題され、各国史の正確な知識が問われた。Bではイラク戦争に関する地図問題が出題され、現在の諸問題に関する興理解・関心が問われた。Cでは華北で起こった出来事に関する問題が出題され、中国内の地域・地方レベルでの正確な知識が求められた。
【第2問】帝国主義の時代における教育や人材養成
Aはイギリス人の植民地官僚、Bはトリニダード=トバゴの初代首相、Cは日本の「外地」における教育機関について述べたリード文をもとに、主に19世紀以降の世界に関する問題が出題された。Aではアメリカ合衆国の移民者数・金生産量の推移を示したグラフを題材とした問題が出題され、資料を正確に把握出来ているかが問われた。Bではイギリスのヨーロッパ共同体(EC)に加盟した時期を問う年表問題が出題され、昨年度もヨーロッパ統合に関する年代整序問題が出題されており、イギリスのヨーロッパ連合(EU)離脱という現在の国際的な問題への理解が問われた。Cは日本の統治政策についてのリード文であるが、日本史に関する出題はほとんどなかった。
【第3問】海を舞台とした交流や国家・地域の再編
Aはチャネル諸島の変遷、Bはアメリカ合衆国のハワイ併合について述べたリード文をもとに、主に19世紀の世界に関する問題が出題された。Aでは文化的影響・技術の伝播に関する問題が出題され、地域をまたぐ交流についての知識が求められた。Bでは日米関係の出来事に関する年代整序問題が出題されたが、中学校社会科の歴史的分野で学習した知識で解答が可能であり、高校世界史Aが中学校社会科で学習した内容に連続して成り立っていることを示している。
【第4問】宗教運動と政治・社会との関わり
Aはルターの宗教改革、Bはタイの近代化改革について述べたリード文をもとに、古代から現代までのユーラシア世界に関する問題が出題された。Aではユグノー戦争が起こった時期を問う年表問題が出題され、ユグノーという語句の意味を理解しているかが問われた。Bの軍隊に関する正文選択問題は広い地域・時代の選択肢で構成され、偏りのない幅広い学習をしているかどうかが問われた。