生徒の研究を世界が評価!科学探究学習が促す生徒の成長

文京学院大学女子中学校 高等学校
今年、文京学院大学女子高等学校(以下、文京学院)理数キャリアコースに在籍する2名の3年生が、高校生の世界的な自由研究大会「リジェネロン国際学生科学技術フェア(Regeneron ISEF)2023(以下、ISEF)」に出場。材料科学部門において優秀賞4等を受賞するという快挙を成し遂げました。
受賞した研究は一体どのようなものなのか、そして同校の科学探究学習について、受賞した2名の生徒と指導された岩川暢澄先生(理科教諭・科学教育センター所属)にインタビューしました。

ISEFに日本代表で出場!文京学院での研究が開いた世界への道

ISEF(通称:アイセフ)に参加できるのは、それぞれの国・地域で優秀な研究として認められた学生たちです。今回はアメリカで開催され、64の国と地域から1,638名のファイナリストが参加しました。このうちの2名が、理数キャリアコースの箕浦裕璃さんと光吉音葉さんです。

2人の研究は「赤い紅(べに)の『見える緑』『見えない緑』『光る緑』〜墨を用いて紅の緑色光沢を生みだす伝統的な手法の解析〜」というものです。紅は何層にも塗り重ねると玉虫色のような緑色光沢を帯びた輝きを発色しますが、400年前の江戸時代はとても高価で貴重なもの。何層にも塗り重ねることはたやすくできないことでした。そんな紅を少量でも緑色に見せるための節約術として墨が用いられたそうです。そういうことが本当にできるものなのか、その再現と実証を研究するものでした。

研究し再現できた「紅」
2人が研究し再現した「紅」
箕浦さんと光吉さん
JSEC、ISEFを受賞した光吉さん(写真左)、箕浦さん(写真右)

この研究で「JSEC2022」(第22回高校生・高専生科学技術チャレンジ 通称:ジェイセック)に応募し、協賛社賞(ソニー賞)を受賞の栄誉に輝き、さらにISEFの出場権を獲得しました。8月には文部科学大臣表彰も受け、2人の研究は日本でも世界でも認められたものとなったのです。

うまくいかずあきらめようと思った研究。でも2人で乗り切る!

始めに受賞した箕浦さん、光吉さんにお話をうかがいました。

JSEC、そしてISEFを受賞した感想をお聞かせください。

箕浦さん ちょうど1年前に取材していただきましたが、そのときはなかなか再現できず、研究自体も行き詰まり辛い時期で、テーマを変えようかとも思っていました(※)。結果が出たのは一次審査の書類を出す3日前と、かなり厳しいスケジュールだったんです。
光吉さんや先生はじめいろいろな方のサポートでソニー賞をいただき、自分たちの研究を評価していだいたのは本当に嬉しかったです。またJSECの副賞としてソニーのエンジニアの方とお話できる機会を得て、受賞後さらに専門的な技術をもって再研究でき、研究を深めることができ嬉しかったです。

箕浦さん
「最初の頃は研究結果が出ず苦しかった」と話す箕浦さん

※「先進の研究職への可能性を切り拓く理数キャリアコース(2022年9月13日公開)

光吉さん 私は正反対で、毎日が楽しかったです。箕浦さんの実験を手伝い始めたのが8月で、正式に2人で研究をすることになったのが9月でした。
先生をはじめ、さまざまな方のサポートでJSECでもISEFでも受賞でき感謝の気持ちでいっぱいです。また研究を通して、研究ノウハウや実証するまでの考え方を学ぶことができたのも良かったです。

光吉さん
楽しかったと話す光吉さん。「こういう組み合わせだったからうまくいったのかも」とも

研究と学業との両立は大変だったと思います。

箕浦さん 勉強も妥協したくなかったので、とにかく気合いと根性! の日々でした。「紅」の再現がなかなかできず、研究はとにかく数をこなすしかありませんでした。結果が出るまでは仮説と検証の繰り返しで再現できたときは涙が出ました。

ポスター発表
ISEFの会場にて。光吉さんが主に作成を担当した発表用のポスターと

光吉さん 研究に参加しはじめた頃は体調が優れない日が多く、登校することが大変だったときもありました。そのような中でも、とにかく学校に来ようと思えたのは研究があったから。それを支えに乗り切れたように思います。

着物を着て研究を紹介する2人
出場者・来場者説明の際は着物を着用。ポスターも目立つ色彩で、なおかつ着物ということもあり、2人の説明を聞く人たちがひっきりなしに訪れたそうです

文京学院だからできた研究活動

お二人にとって探究学習の面白さ、やりがいとはなんでしょうか。

箕浦さん 誰も知らないことを突き詰められる、自分たちの純粋な好奇心から研究できるというところだと思います。また研究大会などでさまざまな方と交流し、いろんな考え方に触れることで、自分の中の世界がひろがり、やりがいにつながっています。

光吉さん 自分が持ちうるすべての能力や知識をフル活用して、新しいことを学ぶことが探究学習だと思っています。そして今まで学んできたものが紐付いて、新しいものにつながるところが魅力です。そこを一度体験してしまうと楽しくなってくるので、やはり研究活動はやめられないですね。

文部科学大臣表彰式の光吉さん、箕浦さん
文部科学大臣表彰の表彰式にて

将来の目標を教えてください。

箕浦さん 薬剤師を目指していましたが、今回の研究で化粧品は誰もが使う科学技術だということに気づきました。将来は化粧品開発の道に進みたいと考えています。

光吉さん 私は小さい頃から動物が好きで、特にオオカミが好きなんです。なので、動物行動学の研究をしていきたいと思っています。

生徒が何をしたいのかを理解し提案していく

最後に岩川先生にお話をうかがいました。

先生は科学探究学習において、どのようなスタンスで指導されていますか。

岩川先生
結果が出ず苦しい時期を見てきた岩川先生。でもこの2人なら絶対成し遂げられると信じていたとのこと

岩川先生 私は、自分で積極的に動いて知識を吸収し、その知識を実際の活動に活かすことで、学力が生きてくると考えています。
ですから、「これをやりなさい」ではなく、その生徒が何をしたいのかを理解し、どういう方法があるかを提案して、生徒が動けるような環境作りが必要だと考えています。そして一番の基本はその生徒をよく知るということです。

文京学院の科学探究学習の特徴について教えてください。

岩川先生 本校にはSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校の時代から培った先進的なプログラムがあります。
また、こうした研究活動は科学部や特定のグループに特化して活動することが多いと思うのですが、本校は理数キャリアコースの生徒全員が研究活動を行います。その中でも、今回の2人のようにトップを目指してたゆまぬ努力をする生徒もいれば、部活と両立しながら最低限の基礎部分を身につけるという生徒もいます。

私自身はこうしたシステムは良いと思っています。そもそも探究はゴールがないものです。
学校では、コース生徒全員、最終的に英語でプレゼンテーションをし、日本語で論文を書くところはマストにしており、そこをひとまずのゴールにはできるでしょう。
各々が目標設定を含め、どう頑張るかは他の活動とバランスをとって考えていけるのが本校の科学探究です。

受賞後の箕浦さんと光吉さん
ISEF受賞式にて。「謙遜しているけど、2人の英語力は入賞するぐらいの評価を受けているので決して劣るものではないですよ」と岩川先生

最後に受験生や保護者の方へメッセージをお願いします。

岩川先生 やる気はあるけど努力の方向性が分からない、そういった生徒を助けて伸ばすようなプログラムが本校の科学探究プログラムです。
やってみて初めて分かることがある、偏差値だけでは分からない学力がお子さまの中に眠っているかもしれません。何かが好きだ、興味があるという思いを力に変える、そういったお手伝いを我々はしています。ぜひ本校で、新しい力を見つけて伸ばしていって欲しいと思います。

編集後記

箕浦さん、光吉さんに岩川先生の印象をうかがった際に、「こんな面白い先生が文京学院にいるとは思わなかった。でも生徒ごとにやる気を出させるのが上手で、自分から考えるきっかけをくれて感謝している」と話してくれました。岩川先生と箕浦さん、光吉さん、3人のほどよい距離感と信頼関係があったからこその受賞なのでしょう。それと同時に、生徒の可能性を信じ続け、支える基盤が文京学院にあるのだと、強く感じたインタビューでした。

イベント日程(中学入試)

名称 日時 内容
学校説明会・スポーツの日特別イベント 10月9日(月・祝) 10:00〜16:00 部活動体験を実施いたします
授業が見られる説明会 10月21日(土) 9:00〜10:40/11:00〜12:40 授業見学を実施いたします
文女祭(学園祭) 10月28日(土)・29日(日) 10:00〜15:00 ミニ説明会、校舎見学、個別相談も実施いたします。
夜から説明会 11月10日(金) 18:30〜20:00 個別相談、校舎見学も実施いたします。
授業が見られる説明会 11月11日(土) 9:00〜10:40/11:00〜12:40 授業見学を実施いたします。