DXハイスクール採択校がAI技術で織りなす新世代の教育事情

文京学院大学女子中学校 高等学校
DXハイスクールに採択された文京学院大学女子中学高等学校(以下、文京学院)では、文理を横断した教育プログラムを展開しています。情報IIの必修化や、AIを活用した英語学習などの取り組みを通じて、生徒たちの未来に必要なスキルを育成しています。今回は副校長の佐藤泰正先生に、文京学院の最先端の教育事情をうかがいました。

DXハイスクールが実現する文理横断的な学びの強化

DXハイスクールとは、文部科学省が2024年度から開始した「高等学校DX加速化推進事業」の通称です。高校生のうちから、デジタル関連などの成長分野で将来活躍できる人材育成を強化することを目的としています。

文京学院のDXハイスクール化で発展する今後の学習方法

文京学院ではDXハイスクール採択を機に、大学との連携強化や最新技術の導入など、新たな教育方法を積極的に取り入れています。具体的な取り組みについて、佐藤先生にうかがいました。

DXハイスクール申請の背景を教えてください。

佐藤先生 DXは今後避けて通れない重要な課題だと考えています。社会全体でもデジタル化の加速が見られ、本校の併設大学でもデータサイエンス系の学部の申請を進めているところです。

そんな中、国の方針としてDXハイスクールが推進されるのであれば、本校もこの流れに積極的に参加するべきだと判断し、申請に至りました。

理数キャリアコース:研究ポスターを英語で作成する際、最初に学ぶのがデータ活用と分析の方法です。
理数キャリアコース:研究ポスターを英語で作成する際、最初に学ぶのがデータ活用と分析の方法です。

DXハイスクールとして、今後どのような取り組みを予定していますか?

佐藤先生 まず、情報IIの必修化に取り組みます。DXは理系の生徒だけでなく、全ての生徒が関わる必要があると考えています。

そのため、文系の国際教養コースで情報IIを必修科目にします。今後の課題は、文系の生徒たちにDXを理解してもらい、どのように導入していくかということです。

この課題に対して2つの取り組みを計画しています。1つは、DXやデータサイエンス系の学部を設置している大学の先生に講演していただき、生徒たちにこれからの社会のイメージを膨らませてもらうこと。もう1つは、DXに関連して社会がどのように動いているかを実感してもらうため、DXに関連した施設の見学などを通して、将来どのようにDXが社会と関われるかをイメージしてほしいと考えています。

大学から講師を招いた講演では、どのような内容を予定していますか?

佐藤先生 情報の科目というとプログラミングなど、スキルに注目しがちですが、それだけではありません。どうやって文系と理系をつなげていくか、社会の諸問題を解決するためにどのようにデータを活用していくべきなのかに焦点を当て、ご講演いただく予定です。

文理融合の取り組みについて、どのように進めていく予定ですか?

佐藤先生 情報科目の敷居が高くならないよう、生徒たちにはまず「できることをやればいい」というスタンスで接しています。しかし、単なる体験で終わらず、情報系の大学進学につながるような本格的なカリキュラムを作る予定です。

生徒たちは、自分のプレゼンテーション能力などを高める機会と捉えて、積極的に参加してくれるのではないかと期待しています。

新たな設備の導入について、どのような計画がありますか?

佐藤先生 他校では3Dプリンターの導入が多いようですが、本校ではすでに導入済みですので、生徒に還元できる映像関連の設備強化を予定しています。

本校はタイに提携校があり、2012年から科学交流を行っています。コロナ禍で訪問が叶わない期間は、オンラインを活用することで続けることができました。その際、映像設備の機能を高める必要性を感じました。

生徒には入学時にiPadを支給しており、基本的なオンライン接続は可能です。設備のスペックを上げることで、大学の遠隔授業や他校との交流など教育の可能性がさらに広がると考えています。

DXを強化することで、進路指導に変化はありますか?

佐藤先生 世の中はすでに文理の垣根を崩す方向に進んでいます。例えば、心理学部は生徒に人気がありますが、統計処理など数学の力が必要です。従来の文系とされる分野でも、情報処理や数学的思考が求められるようになっています。

こうした変化に対応するため、総合的なスキルの育成を重視しています。生徒の適性に応じて、従来の文系・理系の枠を超えた指導を心がけています。

タイ科学交流:英語でのプレゼンテーションには、教育提携を結ぶ大学の先生からも指導を受けます。
タイ科学交流:英語でのプレゼンテーションには、教育提携を結ぶ大学の先生からも指導を受けます。

話題のAIを活用した授業を試験導入

文京学院では、最新のAI技術を活用した授業の試験導入を進めています。具体的な活用方法や期待される効果について話していただきました。

AIの教育現場への導入について、どのような取り組みを行っていますか?

佐藤先生 併設大学と協力し、AIを用いた教材の開発を進めています。

今年の夏休みから実際に英語の課題で使用しました。具体的には、英語の音読で活用しています。生徒が音読した英文をAIが分析し、発音の改善案などを提示します。

今後は生徒一人ひとりの状況を分析し、AIを用いた会話の練習など、新しい学習方法を提案するような仕組みを作る予定です。利用状況や成長度合いをデータで確認するなど、指導に役立てることも検討しています。

AIを活用した今後の授業について、計画や展望を教えてください。

佐藤先生 後期からは週1回、高校1年生の文系クラスでAIを活用した授業を実施する予定です。外部の専門家をメンターとして招き、より効果的な授業を目指しています。

英語教育の課題の1つは、アウトプット不足です。作文の添削などは授業でもできますが、生徒の英語が通じるかどうかを確認する機会は多くありません。そこでAIを活用し、アウトプットの機会を作っていきます。話すことに苦手意識がある生徒でも、AIが相手ならハードルが下がることが期待できます。

現在のAI教材はまだ試作段階で、多くの課題があります。今後、教員はもちろん、生徒からのフィードバックも得て、よりよい教材にブラッシュアップしていきたいと考えています。

AIを導入するにあたって、気を付けていることは何ですか?

佐藤先生 個人情報の保護です。情報は学内で管理しているため、外部に漏れる心配はありませんが、AIの使用に関してはご家庭にも趣旨を説明しています。

今後、生徒たちが外部のAIを使用する機会が増えると予想されるため、AIの危険性や適切な使用方法についても説明する予定です。また、単にネットから情報を拾うのではなく、信頼性の高い情報源の選び方やAIツールの効果的な使い方なども指導していきます。

DXとAIの相乗効果についてどのようにお考えですか?

佐藤先生 さまざまな教科での相乗効果を見込めると考えていますが、特に理科や探究学習との親和性が高そうです。

DXとAIの組み合わせは教育に大きな可能性をもたらす一方で、適切な活用が求められます。生成AIではプロンプト次第で得られる回答が変わるなど、注意すべき特性についても指導していく予定です。

教員への研修についてはどのようにお考えですか?

佐藤先生 技術の急速な進歩に伴い、教員も生徒と同じく常に学び続ける立場にあると認識しています。そのため、教員向けの研修会を実施しています。教員全体のスキルアップを図るとともに、生徒と共に学び成長していく姿勢を養いたいと考えています。

2023年度研究成果報告会
2023年度研究成果報告会

編集後記

DX教育は理系だけでなく、文系にも積極的に推進されていることがわかりました。教育の流れが大きく変化する中、文京学院では、高校の段階から社会に出た後のキャリアまで見据えてカリキュラムを組んでいます。生徒に寄り添い、生徒が取り組みやすいようさまざまな工夫がされていることも印象的でした。

イベント情報

 

日時 イベント
2024年10月26日(土)・27日(日) 10:00~15:00
文女祭(学園祭)
2024年11月8日(金) 18:30~20:00 夜から説明会
2024年11月9日(土) 9:00~10:40、11:00~12:40
授業が見られる説明会
2024年11月24日(日) 10:00~12:00
学校説明会・入試解説
2024年11月24日(日) 14:00~16:00
学校説明会・探究プレゼン型入試/英語インタラクティブ入試体験