教師をしながらカンボジアに学校を設立
まずは鎌倉先生のご経歴と人物像に迫ります。
教師になったきっかけを教えてください。
鎌倉先生 大学3年のとき、齋藤孝先生の教育方法論のゼミを受けたことがきっかけです。教育方法論はテキストに沿って教授が講義するのが一般的ですが、齋藤先生は講義を一切せず、学生にプレゼンをさせました。そして、トップレベルの学生は出版社に紹介されました。まだアクティブラーニングなんて言葉がなかった20年以上前の話です。アウトプットを続けると、企画力やプレゼン力、社会を見る視点が磨かれてインプットの質が変わってくる。アウトプットを出口にした教育をすると、教育効果はこれほど違うのかと衝撃を受けました。そして、こういう教育があっていいんだと感じて教員になることを決めました。
先生は20代の頃から国際協力活動をされているそうですが、活動を始めた理由は何ですか。
鎌倉先生
学生の頃はバックパッカーをして、先進国を見つつもアジアや中東も巡りました。大学2年のときに大学の交換留学でアメリカに渡り、大学卒業後はWalden Universityで教育学を学んで修士号をとりました。
教員になってすぐの25、6歳の頃、途上国の教育制度を見てみようと思い、冬休みにカンボジアへ行ったんです。最終日にツアーガイドが生まれ育った村を訪れたところ、そこは電気・ガス・水道のない環境。子どもは労働をしており、幼児の世話をする少女に年齢を聞くと15歳で、当時私が担任をしていた生徒と同じだったんです。「これは不平等だ」とショックを受け、村に学校をつくることを決意しました。帰国後、教員の傍ら資金集めをして2年後に学校を設立しました。
鎌倉先生 その次は学校の運営資金をまかなうため、海外にボランティアを派遣する団体と組んでボランティアツーリズムという仕組みを作りました。この経験がSDGsの活動をする起点となり、今に至っています。
郁文館グローバル高校に赴任した経緯をお聞かせください。
鎌倉先生 郁文館が学校サイトでSDGs教育日本一を謳っていて、かつ、学校のトップが民間の発想で運営をしているからです。私は海外を見てきたからこそ、日本が素晴らしい国であることを理解しています。しかし今や借金まみれで地盤沈下が甚だしい。こうなった原因の1つは教育です。私は教育業界の硬直化を、SDGsを基軸にグローバル教育を絡めて変えていきたい。そのために、2021年に社団法人(全国SDGs教育研究会)を設立し、SDGsに熱心な教育機関に声をかけて同志を集めています。そして2022年度に郁文館にやってきました。
鎌倉先生が考えるSDGsとは。
鎌倉先生 SDGsというと綺麗事に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。子ども一人ひとりが持つ”好き・得意”と社会問題が結びついて、その中継地点に大学があると、人生の構図が描けるようになります。なぜなら課題を解決できる人間には大きなリターンがあるからです。たくさんの人から感謝され、感謝にはお金がついてきます。そして、グローバルな課題はイコールSDGsなんですよ。
世界最難関基準の学びの環境
続いてHonorsクラスについてうかがいます。
Honorsクラスの誕生に伴い、グローバル高校はどう変化するのでしょうか。
鎌倉先生 2024年度から、HonorsとLiberal Arts(以下、LA)の2クラス制となります。グローバル高校のキーワードは「挑戦と成長」。人間は好き・得意なことに対して挑戦し、成長していきます。ですから、生徒の好き・得意を社会課題と結びつけて進路指導を行います。
Honorsクラスの特長を教えてください。
鎌倉先生
Honorsクラスの特長はダブルディプロマを取得すること。そのほかにLAとの違いはありません。Honorsの生徒は高2でアメリカに渡り、伝統校・Wayland Academyと同様のカリキュラムを持つ学校に留学します。1校につき1名の留学で、さらに現地ではSNSの使用を禁止します。厳しいですが、これにより生徒は現地でしか体験できないことをして飛躍的に成長します。日本の高校卒業資格だけでは海外の大学にストレートに入学できませんが、アメリカの高校卒業資格を取得することで、世界各国の大学を受験できるようになります。
インターナショナルスクールで学ぶ子は、英語は話せても日本語で論文を書いたり、難しい内容を話したりすることが苦手だったりします。Honorsクラスの生徒は日本語教育を受けてダブルディプロマも取得し、アカデミックな内容を両言語で語れるようになります。だからこそ遊んでいる暇などありませんが、そこで好き・得意を活かすことで生徒は挑戦し、成長します。日本の教育をもとにして、海外トップ大学の入試に挑める生徒を育てます。
では、グローバル高校の進路指導についてお聞かせください。
鎌倉先生
「進路指導」「協働ゼミ」「英語専門教科(イマージョン教科)」「試験対策」の4つの柱で生徒を育成します。このうち進路指導でいうと、大学紹介は偏差値ではなく、The Times Higher Educationというイギリスで生まれた国際基準の大学評価システムを用います。東京大学は3000名のうち2900名が筆記試験で入学しますが、例えばアメリカのトップ大学は、筆記試験や高校の成績がトップレベルなのは当たり前で、それに加えて課外活動とエッセイで評価されます。課外活動とは、自分の好き・得意を活用して行った社会的なアクションや個人研究で、ポートフォリオで伝えます。エッセイは、受験生が「この大学で学んだら、自分の好き・得意を活かして社会にどう貢献できる人間になるか」を伝えるものです。この課外活動とエッセイの評価の比重が学業成績よりも高いんです。こうした人間力を問う入試を、私は人生構想力入試と呼んでいます。
教員や卒業生がエッセイやポートフォリオ作成をサポートし、海外のトップ大学を狙う生徒には、Crimson Education(海外大専用の実績の高い進学塾)が外部アドバイザーとなり、エキスパートの指導を受けられるようにします。
中学校のGL特進との連携
郁文館中学校との連携についてはいかがでしょうか。
鎌倉先生 世界のトップ大学に合格する子は、日本でいうと中2ぐらいからポートフォリオを作り出すんです。ですから、中学校のグローバルリーダー特進コース(以下、GL特進)を受け持つ教員にグローバル高校の職員室に来てもらったり、NIE(Newspaper in Education)でグローバル高校とGL特進の生徒がともに学んだりして、交流を持ちながら高校の学びに触れられるようにしています。Honorsが軌道に乗ったら、次は中学から高校につながる体制を強化していきます。
受験生へのメッセージ
中学受験生へのメッセージをお願いします。
鎌倉先生 自分は何が好きで、何が得意かを柱に据えて学校選びをしてほしいです。保護者に伝えたいことは、偏差値だけで学校を選ばないでほしいということ。親が選んで通わせると、子どもは親の人生を歩むことになり、そこに6年間での挑戦と成長はありません。子どもが好き・得意に没頭して大学を選び、社会に出ると課題を解決できる人材に育ちます。
編集後記
鎌倉先生のお話に引き込まれてあっという間に時間が過ぎた今回のインタビュー。公言することを行動に移してきたからこそ、その説得力たるや凄まじいものがありました。鎌倉先生が立ち上げる新クラスや、それに伴い変わるグローバル高校については、ぜひ説明会で理解を深めてください。
イベント情報
イベント名 | 日時 |
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夢教育フェスタ | 2023年7月22日(土) 10:00~14:30 |
《中学・高校・グローバル高校対象》第2回理事長学校説明会 | 2023年7月29日(土) 13:00~15:00 |
郁文館グローバル高校説明会 | 2023年8月5日(土) 10:00~12:00 |
1時間で分かる郁文館中学校スクールツアー | 2023年8月9日(水) 16:30~17:30 |
郁文館グローバル高校 体験授業 | 2023年8月19日(土) 午後 |