世界規模のロボコンに出場!唯一の日本チームとして大健闘
ZENSHINが出場したFRC(FIRST Robotics Competition)は、14歳~18歳までを対象としたアメリカ発・世界最大規模のロボットコンテストです。スポンサーにはGoogle、Amazon、GM、NASAなどのグローバル企業が名を連ね、世界35か国から約3,800チーム、95,000人の若者が参加します。
このFRCで世界一になることを目指し、2023年9月に郁文館グローバル高等学校の生徒3名が中心となって設立されたのが一般社団法人ZENSHINです。学校や保護者からの協力を得ながら、独立した組織として活動。ロボット制作だけでなく、制作費や大会の参加費などの資金を集めたり、技術・資材のアドバイスを受けるため、生徒自身でスポンサー企業の協力を得るとともに、クラウドファンディング等でも資金調達を行っています。
メンバーは中学2年生から高校3年生まで20名。郁文館グローバル高等学校の生徒が多く在籍する中、郁文館中学校や郁文館高等学校の生徒も参加し、世界大会優勝に向けて精力的に活動しています。
自分たちの手で「夢」を実現するために社団法人を設立
今回お話をうかがうのは、設立メンバーで理事の郁文館グローバル高等学校3年生・大原明くん、ロボットのプログラマーとして活躍した郁文館中学校グローバルリーダー特進クラスのゼン・カルヴィンくんです。
目標に向かって逆算方式で計画を立てる郁文館の夢教育。生徒たちは、夢に日付を入れ、達成までのプロセスを計画化する「夢手帳」を用いながら、自身の夢実現に向けたPDCAサイクルを回していきます。
※郁文館グローバル高校
毎年多くの海外大学進学者を排出しており、今年の「東大・京大・難関大学合格者ランキング」では海外大学への現役合格率3位(60.5%)、「THE世界大学ランキング2024」の400位以内に入っている大学(旧帝国大学レベル)に19名が合格(7/10現在)しています。
※郁文館中学校グローバルリーダー特進クラス
自らが世界に目を向け活躍する人材を育成するため、英語力・グローバル力の向上を中心としたカリキュラムを実施。ネイティブ教員によるホームルームや、独自のオンライン英会話学習である「席上留学」の実施など日常的に英語に触れる機会を設けています。またグローバル高校とも連携し、既に海外留学を経験した先輩たちとの交流も行われています。3年次に短期留学も実施。
「夢教育」はZENSHINの活動にどのような影響があったのでしょうか。
大原くん 学校のクラブ活動では、資金面において活動の制限が出てくることが予想されました。また、世界大会に向けては生徒主体で活動したいという思いがあり、一般社団法人ZENSHINを立ち上げ、生徒の力で活動資金を調達できる方法を考えました。学校や保護者もそれに賛同してくださり、たくさんのスポンサーから応援いただくことができました。世界大会に挑戦するという目標をこんなにも早くに実現できた背景には、郁文館の「夢に向かって頑張る生徒を応援する」というベースがあったからこそだと思います。
ゼンくん 僕の場合、この活動への参加自体が「逆算」でたどり着いたことでした。もともと宇宙に興味があったので、将来は宇宙工学を学べる大学に行こうと思っていました。そんな時、グローバル高等学校の鎌倉教頭から『その目標のためにロボットを製作してロボットコンテストに出るのはどうか』とアドバイスいただきました。こんなチャンスはないと思ってZENSHINに参加したことで世界を体感することができ、夢に近づいたと感じます。
学校からはどのような協力がありましたか。
大原くん 大会出場までの期間が短く、法人としての活動も初めての事ばかりで不安もありましたが、学校は我々の思いを組んで全面的に協力してくれました。法人監事にはグローバル高等学校の鎌倉教頭が就任してくれるなど、やりたいことを否定せずに応援していただき、とても感謝しています。
海外チームとのコミュニケーションで活かされた学び
取材時も互いに英語で会話する様子が見られた彼らが、どのように英語力を向上させたのか、同校のグローバル教育に視点を置いてインタビューしました。また、英会話には問題のない彼らですが、FRCでは初対面の海外チームと組んで相手チームと対戦するため、普段とは違う心がけが必要だったそうです。
学校での学びはコミュニケーションの上でどのように役立ったのでしょうか。
大原くん 出場チームはオランダや台湾など英語圏のチームばかりではないので、分かりやすい英語じゃないとお互い誤解が生じやすくなります。特に操縦メンバーは海外チームとのコミュニケーションが重要なため、なるべくシンプルで的確な表現を使うように意識していました。
ゼンくん FRCの難しいところは、その場で同じチームになった味方が、次の対戦では敵になる可能性があるところです。そのため、たとえ味方になったチームでも技術的な部分は披露したくないという思いを感じました。そこで僕も簡潔でシンプルな英語を心がけ、必要な情報だけを素早く聞くことを心がけました。
グローバルリーダー特進クラスでの学びで、どのようなところが活かされましたか。
ゼンくん 発表する授業が多いので、ただ英語が話せるだけでなく、プレゼン力がついたと思います。そのことが現地のプレスとの質疑応答でも役立ちました。どんなことを一番に伝えるべきか、授業で学んだことを活かして、分かりやすく、きちんと意図が伝わる英語で話すことができたと思います。
世界を知って抱いた新たな決意
世界大会を経験したご感想をお聞かせください。
大原くん
世界大会で優勝したのは軍の関係者が設計を手伝っているチームでした。またNASAやハワイ州政府から資金援助を受けたチームもあったり、会場にはMITやYaleなどの名門大学のブースがあるなど、産官学一体となって、将来のキャリアを見据えた高校生への支援環境があると感じ、世界と日本ではまだまだ大きな差があると思いました。
それと同時に、日本人が持つポテンシャルの高さをフル活用できる環境にできるよう、世界を知った自分たちが日本を変えていかなければいけないという使命感も芽生えました。
ゼンくん 日本では見かけないような規模を目にしました。大会の規模だけでなく、そこで仲良くなったチームのロボットの装備も、根本的に違うと感じ、日本でもこうした規模での大会がもっと広まればと思いました。
世界大会を目指す過程で学んだことはありますか。
大原くん ZENSHINの活動は一人ではできないものがほとんどです。お互いの関係性を維持しつつ、目標を達成するために周りの人から協力を得ることや、スポンサーとの交渉では、Win-Winな関係になるために何を伝えなければいけないかを考えさせられました。
ゼンくん 物事を客観的に見ることです。得られた情報をただ鵜呑みにせず、数字で表されるものであればデータを意識して確認するなど、分析力や注意力はこれまで以上に強まったと思います。
今後の目標を教えてください。
大原くん
日本でもFRCをもっと広めていきたいと思っています。世界大会で3勝を上げることはできましたが、世界大会優勝を目指す僕たちはもっと勝ち抜く力をつけたいです。
また、個人の夢としては、僕も宇宙工学に興味を持っているのでその道に進むか、もしくは研究者をサポートをする、そんなことができればと思っています。
ゼンくん
ZENSHINで行ったロボット製作の影響で、プログラミングにも興味を持つようになりました。将来は海外大学へ進学し、宇宙工学やソフトウェア開発の道へ進みたいと思います。
でもまずは、チームZENSHINとして、もっと技術力を高め、次の世界大会に向けて頑張りたいです。
編集後記
生徒の夢や目標に向かって、教員が応援し、伴走するのも同校の夢教育の特徴です。しっかりとした支えと、グローバル高等学校、郁文館中学校グローバルリーダー特進クラスでの学びが今回の結果に結びついたと言えるでしょう。海外大学に進学することが当然のように話す姿に接し、数年後、海外で活躍する将来像がしっかりと見えていると感じました。
イベント紹介(郁文館中学校)
イベント名 | 日時 | 備考 |
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オープンキャンパス | 7月27日(土) | 中学校:小学校5 ~ 6年生 高校・グローバル高校:中学2 ~ 3年生 対象 |
スクールツアー | 8月7日(水) 16:30〜17:30 | |
体験授業 | 8月24日(土) 11:00〜12:15 | |
第2回理事長学校説明会 | 8月24日(土) 14:00〜16:00 | 中学・高校・グローバル高校対象 |