眼前に広がる大自然をスケッチ!春季旅行で豊かな感性を育む

女子美術大学付属高等学校・中学校
新緑が美しい5月、女子美術大学付属高等学校・中学校(以下、女子美)の高校1年生は、入学して初めての春季旅行で長野県安曇野市でのスケッチを行いました。自然の中で五感を研ぎ澄ませ、生徒たちはどんな作品を完成させたのでしょうか。参加生徒2名と美術科の藤原典子先生にお話をうかがいました。

大自然の空気感や質感を描く、校外スケッチならではの挑戦

長野県安曇野市にて2泊3日で実施された春季旅行。参加したK.YさんとM.Hさんがスケッチした作品や、旅行の感想をご紹介します。

M.Hさん(左)とK.Yさん(右)は同じ菊組に所属するクラスメイト。美術はもちろん、M.Hさんは国語、K.Yさんはデザインと音楽の授業がお気に入りです
M.Hさん(左)とK.Yさん(右)は同じ菊組に所属するクラスメイト。美術はもちろん、M.Hさんは国語、K.Yさんはデザインと音楽の授業がお気に入りです

スケッチでは何を描きましたか。また、難しかった点や工夫した部分を教えてください。

K.Yさん 北アルプスを背景に、木々や橋、街並みを入れて描きました。光がどの向きから差してくるのかよく考え、表現することを心がけました。近景・中景・遠景を描き分け、奥行きを出すのも難しかったです。

M.Hさん 草原から見える山々をメインに描きました。時間が足りず手前の細かい葉を描くのに苦戦しましたが、景色を見て感じたままに色を使い分けながら、のびのびと描くことができました。

校外でのスケッチは、学校内でのスケッチと比べてどのような違いがありましたか。

K.Yさん 時間によって風景が大きく移り変わる点が、校外のスケッチならではだと感じました。実際に自然に触れることもできるので、目の前に広がる景色をより鮮明に描写できました。

M.Hさん 限られた時間のなかで作品を完成させるのが難しかったです。学校内でスケッチをする際は、モチーフを一つひとつ見ながらじっくりと描いていくのですが、校外ではその場の空気感やモチーフの質感を作品に落とし込むことを大切にしました。

スケッチのほかにも、春季旅行での思い出があればお聞かせください。

K.Yさん 初めて訪れた場所でスケッチした作品を先生方に講評していただくのは、女子美でしか味わえない貴重な経験だったと思います。また、スケッチの合間に絶景を眺めながら友達と食べたお弁当は、格別においしかったです!

M.Hさん 複数の美術館を巡ってさまざまな作品に触れ、充実した時間を過ごすことができました。特に、豊科近代美術館で見た高田博厚さんの彫刻や中島潔さんの企画展が印象深かったです。

スケッチ当日は気持ちの良い晴天でした。生徒たちは思い思いの場所に座り、新緑に囲まれてのびのびと作品を描きました
スケッチ当日は気持ちのよい晴天でした。生徒たちは思い思いの場所に座り、新緑に囲まれてのびのびと作品を描きました
M.HさんとK.Yさんが描いた北アルプスの山々。その険しくも美しい表情を五感で感じられるのが、春季旅行の醍醐味です
M.HさんとK.Yさんが描いた北アルプスの山々。その険しくも美しい表情を五感で感じられるのが、春季旅行の醍醐味です
水彩絵の具を使用し、空の青色や山や葉の緑色など、目の前に広がる自然のままの色合いを作りだします
水彩絵の具を使用し、空の青色や山や葉の緑色など、目の前に広がる自然のままの色合いを作りだします

これから女子美で頑張っていきたいことを教えてください。

K.Yさん 美術のなかでも自分が特にやりたい分野を探しながら、他教科の勉強との両立を頑張りたいです。

M.Hさん 高校では、絵画やデザインの授業に加えて工芸・立体制作の授業も始まったので、より幅広く学びを深めていきたいです。

美術館巡りを通して、美術作品と深く向き合う

春季旅行の具体的な実施内容や目的について、美術科の藤原典子先生に詳しくうかがいました。

藤原先生は女子美の卒業生でもあり、現在は主にデザインコースの授業を担当されています
藤原先生は女子美の卒業生でもあり、現在は主にデザインコースの授業を担当されています

春季旅行の目的をお聞かせください。

藤原先生 美しい大自然のなかでスケッチを行うことで、豊かな情操を養うことを目的としています。また、集団生活・団体行動の意義を学び、生徒同士の親睦を図ることも大切な目標です。

今回のスケジュールを教えてください。

藤原先生 1日目は山梨県立美術館や松本城天守閣を見学し、2日目は、メインイベントとなる北アルプス展望美術館でのスケッチを実施しました。スケッチ後には、完成した作品の講評会も行いました。3日目は豊科近代美術館と碌山美術館を訪れ、生徒は学芸員から専門的な解説を聞きながら、じっくりと作品を鑑賞しました。この3日間で、美術を通したさまざまな学びを体感できたのではないかと思います。

北アルプス展望美術館には、女子美を卒業し、講師も勤めた小島孝子氏の展示室もあります
北アルプス展望美術館には、女子美を卒業し、講師も勤めた小島孝子氏の展示室もあります
北アルプス展望美術館にある小高い斜面からは、安曇野一帯を一望できます
北アルプス展望美術館にある小高い斜面からは、安曇野一帯を一望できます

スケッチの後に行う、作品講評会の目的や内容を教えてください。

藤原先生 大きなホールに全員の作品を並べ、「構図がよい」「光や色が美しい」など、よいと思った部分について触れながら、美術科の教員が1点ずつ具体的なアドバイスをしていきます。そうすることで、描く喜びを感じるのはもちろん、作品を仕上げていく難しさも学ぶことができます。

スケッチの最中も生徒の様子に目を配り、熱心に指導にあたる藤原先生
スケッチの最中も生徒の様子に目を配り、熱心に指導にあたる藤原先生

講評会を実施するうえで、どのようなことを重視していますか。

藤原先生 教員からの一方的なアドバイスにならないよう、生徒たちの意図や工夫した部分についても発表してもらいました。また、生徒同士でもお互いの作品を鑑賞し、感想やアドバイスを述べ合う時間も設けています。この経験はこれから先、美術の専門的な学びにつながっていくと思います。

講評を受けて、生徒はどのような様子でしたか。

藤原先生 作品を講評されるのは初めてという生徒が多く、始まる前から緊張した様子を見せていましたが、だんだんと表情が柔らかくなり、講評会を終えた後は自信がついたように感じられました。

生徒の「好き」を伸ばし、社会で役立つ総合力を育てる

女子美では、どのような力を養うことができるのでしょうか。

藤原先生 美術を通して、新しいものを発想し創っていくプロセスを学ぶことができます。生徒が社会に出たときに必要となる、クライアントの要望に寄り添い、丁寧に応えていく力も自然と培われていきます。

美術を学んだ生徒たちは、どのような進路に進むのでしょうか。

藤原先生 美術は私たちの想像以上に幅広い進路に導いてくれます。アーティストからデザイナー、CGアニメーション・映画美術監督や教員など、多彩な分野で活躍することが可能です。

最後に、受験生や保護者へのメッセージをお願いします。

藤原先生 美術の可能性は無限大です。「絵を描くのが好き」というのは、自ら考えて表現したいと思うことができる特別な能力ですから、女子美では生徒の「好き」を伸ばすことを大切にしています。本校に入学した暁にはその力を高めながら、確かな実技力と知性・感性を伸ばして、自らの道を切り拓いてほしいです。

編集後記

普段と異なる環境に身を置き、美術とじっくり向き合うことができる春季旅行。先生方から直接講評を受けたり、生徒同士でアドバイスし合ったりと、女子美だからこその経験がたくさん詰まっていると感じました。高入生と内進生が親睦を深める機会にもなり、生徒たちは高校生活を楽しくスタートできたのではないでしょうか。

イベント日程

イベント名日時
公開授業(中高共通)
2023624日(土) ➀8:3510:30 ②10:4012:40
入替制 ※要予約
高等学校入試実技説明会
202371日(土) 13:3015:00 ※要予約
夏期講習会(中学3年生対象)
2023721日(金)、22日(土) 
※要予約、受講料(材料費のみ) 3000