平和教育と美術要素を結びつけて実感する平和の尊さ
女子美大で講師をされていた著名なデザイナーがヒロシマ・アピールズ2019のポスターに選出されたという縁があって、コロナ禍以前に計画されていた修学旅行での広島訪問がようやく実施されるようになったそうです。
広島で体験した平和教育について教えてください。
Y.M.さん
広島に行く前に、平和について考えるきっかけとして、千羽鶴を折り続けた被爆者の英文小説を授業中に読みました。私にとっての原爆はどれだけ学んでも現実味がなかったのですが、原爆ドームの横に立って初めて、戦争がとても恐ろしいものに映りました。今当たり前にある平和な世界が、以前はそうではなかったことを強く感じました。
広島平和記念資料館では外国の方に折り鶴を教えていた女子美生がいたのを覚えています。文化が異なる人たちでも、アートを通して世界を見たら同じ人間としての共通点が見えてくるはずです。
M.T.さん
原爆の後遺症に悩まされている方から話を聞きながら、当時の写真や記憶をもとに描かれた絵を見たことが強く印象に残っています。女子美に入学していなかったら、こうした体験をすることも無かったのではないかと思います。
現地では意外にも外国の方が多く、原爆や戦争の被害を知ろうとする姿を見て嬉しくなりました。後世の人たちへ残酷な戦争の事実を伝えるのはとても大切な意味があることです。
K.N.さん 資料館で戦争の絵を見て、世界で初めて原爆が使われたのが日本だったことに改めて衝撃を受けました。それからは、なぜそんな出来事が起きてしまったのか、防ぐことはできなかったのかを考えるようになりました。描いた人の気持ちは想像することしかできませんが、とても悲しいだけでなく辛かったのだろうと思います。
国内屈指の現代美術が集結する瀬戸内の小島「直島」
アート作品はアイデアや感性の数だけ存在しますが、女子美生にとっては、足を運んで直接感じることでイメージだけでは得られない学びや新しい発見に巡り会うことができます。
瀬戸内ではアートにあふれる環境を見学したそうですね。
Y.M.さん 草間彌生さんのかぼちゃアートで有名な香川県直島を訪れました。みんなで事前にいろんな展示物を調べていましたが、自然をそのままに活かしたり、古民家を改装したりしたアート作品が想像以上にたくさんありました。インタレーション(空間や環境自体を取り込んだ体験型アート)要素があるベネッセハウスミュージアムでは、今まで敷居が高いと思い込んでいた現代アートがたくさんあって、宝探しのように楽しむことができました。
M.T.さん みんなが4人1組のグループになって、どの場所を巡るのかを事前に計画して見学しましたが私も美術館とホテルが一体になったベネッセハウス ミュージアムが一番すごかったと思います。どれも展示方法が個性的で、表現に込められた意味をくみ取ろうとしなくても楽しめる作品があふれており、いろんなジャンルの作品を見たことでアートに対する視野が広がりました。自由な表現が許されるのがアートの良さであって、分かりやすいものだけが必要とされているわけでもないのが面白いところです。私にとってアートは生活に欠かせない要素になっています。
K.N.さん
直島は壮大で美しい自然に囲まれた場所でした。李禹煥(リウーファン)美術館の前で感じた海風の匂いや、歯科医院の建物が作品になった「はいしゃ」(家プロジェクトのひとつ)が表現する自由さなど、作品を鑑賞するだけでなく周辺環境と一緒に感じたことが記憶に残っています。小さい頃からずっと個性的な建築物を見るのが好きで、いつか一戸建ての作品を手がけてみたいという憧れもあり、とても楽しめました。
バンドでドラムを担当しているので、音楽をアートとして捉えています。直島では波音や喧噪までアート要素を感じられて嬉しかったです。
女子美生は授業内容と同じように学校行事にも情熱を持っているのですね。
Y.M.さん 女子美への入学は、生活自体がアートに囲まれていることを自覚するきっかけになりました。同じように感じている女子美生はライバルでありながら、お互いを高め合う仲間でもあります。ときには相手の作品について批評することもあれば、逆に批評されることもあるので常に真剣勝負をしているようなものです。そうやって精神と技術を成長させていくのが女子美生らしさだと考えています。
M.T.さん すべての作品づくりには、人真似ではないオリジナリティと信念のようなものが必要です。ですから、制作過程には自分一人だけで本当に納得するまで追求しなければいけない楽しみと苦しみがあると思っています。普段だったらそんな気持ちは言葉にする機会もありませんが、女子美生だったらみんなが同じ苦しみを理解しているという共通点を持っています。それは他の学校だったらあり得ないような安心感につながっているんです。
K.N.さん 美術はやればやるほど技術が身につきます。今となっては、廊下などの共有スペースに作品が掲示されないと悔しい思いをするまでになりました。ただし、選ばれるために描いているわけではなくて、自分の心象世界を絵として描きたいだけの話なんです。それを実現するために自宅でもいっぱい絵を描きながら、図書館などにある美術館関連の書籍を読み漁っています。それが技術向上につながると信じてこれからも続けていきます。
女子美生への憧れを抱いている受験生の皆さんにメッセージをお願いします。
Y.M.さん 入学する前から美術が好きでしたが、何でも自由に作っていた当時と比べて、今では作品の提出期限や素材の指定があります。学年を追って授業を一つひとつこなすことで技術を学びながら成長していけます。女子美生の真日は大変だからこそ上手になれる楽しみがあることを知ったうえで、ぜひ入学してほしいと思います。
M.T.さん 世界中の景色を、私と同じ感覚で一緒に見てくれる友だちがいる場所が女子美です。同じ距離感や丁寧さを持っているから理解し合える話題があって、親密になれる環境でもあります。全員が友達でなくても、心を通じ合わせられる仲間ができる学校ですよ。
K.N.さん 同じ学年の人でも驚くようなクオリティの作品をつくり上げる様子を見ていると、私も頑張りたいと思うようになりました。お互いをリスペクトし合い、周りの刺激からいろんな面を磨くことができる学校です。そんな雰囲気を感じられるのが女子美祭です。校内では女子美祭が終わった後でもその余韻がいつまでも続いています。学校生活の楽しさが必ず伝わるはずなので、少しでも興味があったら足を運んでみてください。
編集後記
女子美生の皆さんからは、「アートが好きな者同士だから話が合って楽しい」といった話題が必ず聞こえてきます。美術の本質に触れられる行事や授業を通して、捉えどころのない世界を抽象的に理解できるセンスと、それを形にできる技術を身につけられるのが女子美の魅力です。
イベント名 | 日時 |
---|---|
公開授業(中高共通) ※要予約 |
2024年11月16日(土) ➀8:35~10:30・②10:40~12:40 入替制 |
女子美なんでも質問会 |
2024年11月16日(土) 14:00~ |
ミニ学校説明会 | 2024年12月7日(土) 14:00~ |