卒業までに120名の社会人と共同生活!
まずはフロアマスターの方に、教育に向き合う思いをうかがいます。
フロアマスターになった経緯を教えてください。
金子さん 3月に人事異動の情報がオープンになるタイミングで上司から「金子くんには先生になってもらうよ」と、突然の知らせが来ました。でも、大学生時代に中高生のスポーツに関する研究をしていたとき、「学校教育に携わりたい」という思いを持っていたので、すごくうれしかったです。
林さん 同期の同僚に海陽OBがいて、海陽の寮生活について話を聞くうちに、「フロアマスターになってみたい」と考えるようになり、人事の担当部署に希望を出し続けてきました。そして念願かなって、着任したという流れです。
どんな体制で生徒を見守っているのか教えてください。
金子さん 海陽では寮舎のことを「ハウス」と呼び、全10棟あります。24名のフロアマスターが居住用フロアを1か所1名で担当します。フロアマスターの任期は1年間なので、生徒は卒業するまでに、120名の社会人と共同生活する計算になります。私たちとの出会いを、社会について視野を広げるきっかけにしてもらいたいです。
林さん 1フロアごとに1名のフロアマスターが担当するので、生徒の細かな健康状態、心情もしっかりと汲みながら見守ることができます。私が担当している中学1年生は、まだ寮生活に慣れていない時期なので、丁寧にサポートしています。大人と違って、子どもたちは素直に本音をぶつけてくるので驚くこともありますが、自立へ向かっていく姿を見ているとやりがいを感じます。
リーダー経験が生徒を変える!自治の学校
1日の過ごし方を教えてください。
金子さん
朝6時半に出勤して、フロアマスター全体で生徒の情報共有をして、生徒が起床する朝7時に点呼を取り、朝食に立ち会い、朝8時までに学校に送り出します。生徒の体調不良があれば、すぐに保護者・養護教諭に連絡し、対応に当たります。
学校が終わり、午後4時頃に生徒たちがハウスへ帰ってきますので迎え入れます。午後6時から夕食がありますが、それまでの間、生徒たちと部活動に行くフロアマスターもいます。午後7時頃にはハウス内の全員が集合・点呼を取り、「ハウスタイム」を行います。そこでは、生徒たちの健康状態のチェックや連絡事項の伝達等を行います。その後、午後8~10時で夜間学習の監督を行い、そのまま消灯まで生徒たちを見守ります。
林さん 入学当初は、手取り足取り生活の面倒を見る部分がありますが、少し経つと生徒の成長に応じて、生徒の判断に任せる場面が増えていきます。海陽の生徒が変わるスピードは驚くほど早いです。
生徒の成長を感じる場面を教えてください。
金子さん 海陽には、授業や行事などでリーダー役や人前に出る役割を果たすタイミングがたくさんあり、ここでの経験が成長させます。4月には控えめな性格だった生徒が、秋の文化祭で演劇の監督に立候補して、見事に全体の指揮を取ってくれたということもありました。
林さん 入学当初は、身の回りの生活に苦戦する生徒もいます。でも、だんだんと慣れてきて、自主的に共用部分の掃除をするようになったりと、人のために動くことが当たり前になっていきます。そんなふうに自立に近づいている姿を見たときはすごくうれしいです。
新幹線の解体も!宇宙ロケットの製作も!工場見学で未知の世界へ
ここからはお二人の生徒にも加わっていただきます。
海陽の寮生活を経験して、成長したところを教えてください。
田中くん 小学生までは両親に頼って生活していましたが、何事も自分でやるようになって、責任感が生まれました。時間管理もちゃんとできます!
安藤くん 1フロアの生徒の生活を統括するフロア長を務めたとき、フロアマスターに助けてもらいながら、人を動かすためにどう接するべきか考えられるようになりました。ほかの学校にいたとしたら、こうしたリーダー経験をすることもなかったと思います。
金子さん 「寮生活は生徒の自治に任せる」が海陽の指導の基本です。例えば、レクリエーションの企画を生徒が立てたとき、取り残される生徒が出ないかといった最低限のことはチェックしますが、あくまでサポート役に徹します。失敗を恐れないでチャレンジすることを大切にしてほしいからです。
学校生活で経験した「海陽ならではだな」と思ったことを教えてください。
田中くん 「工場見学」という行事があって、JR東海の浜松工場を見学しました。新幹線の車両を解体して点検する日本で唯一の工場だということです。安全を守るためのいろいろな取り組みを知って、身近なもののありがたみを感じました。
林さん こちらの工場では、作業時の工具の置き方、ねじの締め具合など、細かいところまで作業工程を厳密に決めています。そうした取り組みが、安全な運行の土台になっていることが分かってもらえたかなと思います。
安藤くん 工場見学では自動車部品メーカーの東海理化を訪問したのですが、職場の方の和やかな雰囲気が印象的でした。製作に当たる仲間同士で、連帯感を大事にしているように見えました。
金子さん 私は三菱重工の工場へ生徒を引率しました。宇宙ロケットの製作の現場にお邪魔したのですが、壮大な光景に生徒は驚いていました。職員の方にたくさんの質問を投げかけていて、強い興味を持ったことが伝わってきましたね。
「ブレない大人でありたい」フロアマスターの思い
生徒の皆さんとフロアマスターがどのように関わっているか教えてください。
田中くん 日直の仕事がある日に、できたこと、できなかったことをチェックしてくれて親身になってアドバイスをくれます。入学当初からやさしく話をしてくれたので、日本中から生徒が集まっている環境でも落ち着いて、学校に馴染むことができたと思います。
安藤くん 勤務先の会社での経験についてお話を聞くことがあって、これからの人生に活かせるヒントがもらえていると思います。
フロアマスターのお二人は、生徒にどんな中高6年間を送ってほしいとお考えですか。
金子さん せっかく友達と24時間いっしょにいられる環境なので、仲間と何かを成し遂げてほしいと思っています。将来の自信につながる経験をたくさんしてほしいです。
林さん 学習面だけでなく、人間力も大きく伸ばしてもらいたいです。そのために、生徒たちに信頼される大人になること、ブレない軸を持って生徒と向き合うことを大切にしています。
編集後記
生徒からは「海陽の毎日は本当に楽しくて、中学受験の勉強をがんばってきて良かった」とのお話も。さまざまな体験ができるうえに、夜8~10時の自習時間で学習習慣が身につき、勉強にも楽しく取り組めるようになったそうです。中高6年間を主体的に。そして、将来は日本を牽引するリーダーに! 全国の受験生に海陽をぜひチェックしていただきたいです。