神田女学園×学習院女子大学 多様性を尊ぶ女子教育

神田女学園中学校高等学校
神田女学園中学校高等学校(以下、神田女学園)は、2023年1月に学習院女子大学との高大連携協定を結び、交流を深めています。その一環として、今回は神田女学園の校長・芦澤康宏先生と、学習院女子大学・副学長の時安邦治教授、また、神田女学園の英語科ご担当で、学習院女子大学の卒業生でもある星野みのり先生、さらに、神田女学園の生徒2名、学習院女子大学の学生1名が一堂に会する学校対談が実現しました。対談の場は学習院女子大学の戸山キャンパス。女子教育や高大連携について、生徒と学生との交流など、幅広いトピックスでご紹介します。

世界で活躍する女性を育む女子教育

多様性が光る女子教育についてうかがいました。

学習院女子大学・副学長の時安邦治教授。国際文化交流学部日本文化学科で社会学・社会思想を専門としています
学習院女子大学・副学長の時安邦治教授。国際文化交流学部日本文化学科で社会学・社会思想を専門としています

時安教授 学習院女子大学では、国際交流に力を注いだ女子教育でグローバル社会で活躍できる人材の育成を掲げています。女性がどんな社会を望み、どのようなキャリアを築き、人生を歩んでいくのか。学生には国際交流を通した学びの中で、自分の人生を真摯に見つめて生きる女性になってほしいと考えています。
神田女学園さまとも共通すると思うのですが、社会が求める女性になるためというよりも、個人が望む人生を歩むために必要な知識や経験を得られる女子教育であるべきだと思っています。

「学習院女子大学さまとの交流は、生徒が学ぶ楽しさを深める大きな一歩になると思っています」と話す神田女学園の校長・芦澤康宏先生
「学習院女子大学さまとの交流は、生徒が学ぶ楽しさを深める大きな一歩になると思っています」と話す神田女学園の校長・芦澤康宏先生

芦澤先生 学習院女子大学さまと高大連携を進めていきたいと思ったのは、まさにその女子教育のお考えです。女性が現代社会で活躍するための女子教育は、時代を先導する女子の創造的リーダーを育成することだと思っています。本校もDDPなどの多様な留学制度を取り入れ、生徒のグローバルな視点を養うことに注力しています。グローバル教育は、生徒が将来活躍できる社会の場を広げ、多くの力を養うことにつながるのです。

視野を広げる国際交流の場

学校対談には神田女学園からは高校2年生のA.Kさん、高校3年生のR.Kさん、学習院女子大学出身の星野みのり先生、学習院女子大学からは国際コミュニケーション学科4年生のR.Yさんが参加しました。

左から星野先生、R.Kさん、A.Kさん、R.Yさん
左から星野先生、R.Kさん、A.Kさん、R.Yさん

R.Yさん 私は学習院女子大学の独自プログラムである国際交流の場に積極的に参加をしてきました。例えば、2020年の「ベトナム国際協力研修」、2021年の「海外同時授業」、「ラオス国際協力研修」、「ルワンダ国際協力研修」などです。
コロナ禍の授業であったためオンラインで行ったのですが、「ベトナム国際協力研修」では、現地の小学校の子どもたちに日本の食文化や栄養を摂ることの大切さを教える授業をしたり、「ルワンダ国際協力研修」では、途上国の子どもたちに手を洗うことの大切さを伝える衛生教育をしたりしました。

現地で行われた2023年の「ベトナム国際協力研修」
現地で行われた2023年の「ベトナム国際協力研修」
オンラインで実施された「ルワンダ国際協力研修」のようす
オンラインで実施された「ルワンダ国際協力研修」

A.Kさん お話をうかがって、大学にはいろいろな研修があるんだなと驚きました。海外というとアメリカやカナダなどのメジャーな国を思い浮かべてしまいますが、途上国との交流があると聞いて面白そうだなと感じました。

R.Kさん 私も子どもたちのために活動をしてみたいです。留学先を途上国にして、ボランティアなどの活動に参加するのも良いなと思いました。

高校2年生のA.Kさん
国際コミュニケーションコース
韓国同好会に所属
将来の夢はキャビンアテンダント
高校2年生のA.Kさん
高度教養コース
韓国同好会に所属
将来の夢はキャビンアテンダント
高校3年生のR.Kさん
国際コミュニケーションコース
韓国同好会に所属
将来はIT系の職に就くことが夢
高校3年生のR.Kさん
高度教養コース
韓国同好会に所属
将来はIT系の職に就くことが夢

星野先生 学生のときはR.Yさんのように国際交流に積極的な友達から私もたくさんの刺激をもらっていました。R.Yさんは留学に行かれましたか。

R.Yさん はい。海外協定大学への留学で、アメリカのミズウリ南部州立大学へ2022年春から1年間の留学をしました。海外での生活は大きな転機となって、世界を知ることで視界が大きく開けたと思っています。アメリカでは女性の地位が男性と対等だと感じ、一人の女性として独立して生きていく大切さを学びました。また、現地では留学生が多く世界中に友達ができたので、今ではスペインやフランス、イギリスなど、友達に会いに海外へ一人旅をすることも多いです。

R.Yさんはアメリカのミズウリ州で1年間の留学を経験。大学では多くの留学生と交流が生まれました
R.Yさんはアメリカのミズウリ州で1年間の留学を経験。大学では多くの留学生と交流が生まれました
現地の大学では、異文化交流も盛んに行われました
現地の大学では、異文化交流も盛んに行われました
R.Yさんが利用した協定留学は、留学先で修得した単位が学習院女子大学の単位として認められるため、4年間での卒業が可能です。また、学習院女子大学への授業料を納めることで留学先の授業料等が免除になります
R.Yさんが利用した協定留学は、留学先で修得した単位が学習院女子大学の単位として認められるため、4年間での卒業が可能です。また、学習院女子大学への授業料を納めることで留学先の授業料等が免除になります

A.Kさん 自分は英語圏の国に留学に行けるのか不安に思っていたのですが、R.Yさんのお話で勇気が湧いてきました。留学では英語を学ぶだけではなく、人との関わりも大切にしたいです。

R.Kさん 私も留学で自分の知らないことをもっと吸収して、視野を広げたいと思いました。私は語学に興味があり、高校でもいろいろな言語を学んでいるのですが、その知識ももっと深めていきたいです。

大学生活についてR.Yさんに質問をするA.KさんとR.Kさん
大学生活についてR.Yさん(右)に質問をするA.Kさん(中央)とR.Kさん

落ち着きのある学び舎で進路と向き合う

女子大・女子校ならではの魅力や進路について語っていただきました。

「大学では一人でいても人目が気にならず、凛としていられます」と話すR.Yさん
「大学では一人でいても人目が気にならず、凛としていられます」と話すR.Yさん

R.Yさん 女子大の良さは、ほっと安心できる落ち着いた雰囲気があることです。大学の施設を利用するときも人数がそれほど多くないので、余裕があります。図書館は講義の合間に勉強をしたり、オンライン面接ができる個室スペースがあったりと、自由に活用できるのが良いです。

星野先生 そうですね。静かでアットホームな大学の雰囲気が私も好きでした。私は中学から女子校でしたが、自分の意見を発言しやすく、尊重してもらえる環境があったと感じます。

「大学時代は留学に行く友達が多く、また、留学生もたくさんいたので、キャンパス内での国際交流が盛んでした」と話す星野先生
「大学時代は留学に行く友達が多く、また、留学生もたくさんいたので、キャンパス内での国際交流が盛んでした」と話す星野先生

R.Yさん 学習院女子大学は学生の就職率が高いのですが、それは大学のサポートがとても親切だからだと思います。私は就職活動の直前まで留学をしていたので、いろいろな相談にのっていただきとても助かりました。就職はキャビンアテンダントを目指しており、5~6社に絞って面接に臨んだのですが、海外研修やボランティアなどの活動を評価してくださり、お陰さまで全社から良いお返事をいただけました。

A.Kさん 私も将来航空会社で働きたいと思っているので、すごいなと思いました! 就職活動では資格など、必要だと感じたものはありますか。

R.Yさん 面接では人とは違う経験を問われることが多いのですが、目に見える資格よりもサービス業なら自分のコミュニケーション能力がどれだけ高いのか、それはどこから得たのかをいかに伝えるかが大切です。私であればボランティアや国際交流を通じて多角的に人のことを考えられるようになったことを話して、思いを伝えました。

R.Kさん R.Yさんの話を聞いていて、資格のために勉強する、ボランティアにただ参加するということではなく、そこで自分が何を感じて何を得たのかということが大事だと気がつきました。

中高と大学の学びをつなぐ「高大連携協定」

高大連携による関わりについて話していただきました。

芦澤先生 神田女学園では探究授業NCL(ニコル)プロジェクトの一環で全校生徒がフィールドワークを行い、それぞれが自分の研究テーマに合った大学や施設を訪問します。今回、学習院女子大学さまにも生徒の訪問を受け入れていただきました。

時安教授 フィールドワークの授業は私が担当をし、授業はジェンダーについて考えてもらう内容でした。雑誌のモデル写真を切り抜いて、男女で分けて模造紙に貼りだしていくというものです。男女を雑誌の写真などで見比べてみると、ふだんは意識しないで過ごしている違いがはっきりと分かるので、興味を持ってもらえるかなと思い実施しました。

R.Kさん 私はフィールドワークで時安教授の授業を受けたのですが、男女の違いが目に見えて分かる面白さがありました。ジェンダーについてもっと勉強してみたいと思えました。

学習院女子大学でのフィールドワークで、雑誌を切り抜く生徒たち
フィールドワークで訪れた学習院女子大学のジェンダーの授業で、雑誌のモデル写真を切り抜く生徒
女性と男性の写真を見比べてジェンダーについて意見を交わします
女性と男性のモデル写真を見比べて、ジェンダーについて意見を交わしました

A.Kさん フィールドワークでは1年生では美術館に、2年生では跡見学園女子大学で「韓国の地形を観ながら文化に触れる授業」を受けました。自分の研究テーマとも関わりがあり、より知識を深められたのがうれしかったです。

A.Kさんが2年生で参加したフィールドワーク。日本と韓国の比較を行う講義を受けました
A.Kさんが2年生で参加したフィールドワーク。日本と韓国の比較を行う授業を受けました

星野先生 フィールドワークなどで探究学習を行う生徒を見ていると、本当に大きく成長していると感じます。1年生のときはテーマの調べ方が分からず苦戦しているのですが、2年生になると自発的にどんどん探究学習ができるようになるのです。生徒もできることが増えたという自覚があると思います。

A.Kさん 私は1年生と2年生でテーマを変えたのですが、1年生のときに学んだ調べ方や本の使い方などは2年生でとても活きてスムーズに探究学習ができました。今は、K-POPが好きなので、「東南アジアのK-POPファンの貧富の差」について調べています。

R.Kさん 学校で行う探究学習では、自分で調べたり、友達に意見を聞いたりするのですが、フィールドワークでは自分が調べている分野を専門に研究している先生に直接会ってお話をうかがえるので、毎回大きな発見があります。ほかの学年の生徒とも一緒に探究学習に出かけられるのでとても楽しいです。

芦澤先生 学習院女子大学さまとは、これからより高大連携を深めていけたらうれしいです。高校は卒業最低単位数以上の単位取得をしているので、なかなか自由がきかないのですが、来年度からカリキュラム編成を一新する予定です。これは高大連携などの学外活動に参加しやすいようにするためです。これが生徒の進路の多様化につながっていけば良いと思っています。

時安教授 大学としては高校生の皆さんに大学設備の利用や知識豊富な教授と関わりを持って、大学との関わりの中で学びの幅が広がっていけば良いと考えています。高校生の皆さんはこれからどんなことがしてみたいですか。

A.Kさん 大学生の方と一日一緒に過ごして、大学生活を体験してみたいです。

R.Kさん 私は大学生の方が行う授業を受けてみたいです。

対談を終えての感想

対談の感想を皆さんにうかがいました。

時安教授 先生方も高校生の皆さんも大学にどういうことを望んでいるのかという一端が見えたので、とても参考になりました。先日は、高校生や高校の先生方に授業風景をみていただく授業公開WEEKを実施するなどの取り組みを行いました。これからも「開かれた学びの場」を目指していければと思います。

R.Yさん 教授や先生方と教育についてお話をすることで、型にはまった教育ではなくて、自由な教育が日本の中で広がっていけばよいなと感じました。夢を持って大人になるのが楽しみだなと思う子どもが増えてほしいですし、私も何かしらの形で子どもに夢を与えられるような大人になりたいです。

星野先生 母校の学習院女子大学と神田女学園が高大連携を組むことができ、貴重な対談の機会を設けられたことをうれしく思います。来年度から新たなカリキュラム編成が始まりますので、学習院女子大学さまの力をお借りし、より生徒との交流の場を設けられたらうれしいです。

A.Kさん これから学校の勉強もボランティア活動も参加するだけではなくて、自分が何を思ったのか、何を学んだのかをしっかりと考えるようにしていきたいと思いました。

R.Kさん R.Yさんから女子大ならではの良さを聞いて、より女子大に行きたいという思いが強くなりました。私は内気な性格だったのですが、神田女学園に通って、こうした対談の場でも発言ができるようになりました。女子校に通っていて良かったと改めて思えました。

芦澤先生 本当に今日はありがとうございました。対談をする中で、本校の生徒が学習院女子大学さまの学生のように素敵な女性に成長してほしいと心から思いました。これからの社会は男女関係なく、専門性・人間性・積極性の3つが必要不可欠であり、これらを養う教育を高校から大学の教育が大きな流れの中で進めることが効果をより大きくすると考えております。ぜひ、これからいろいろな形で力をお借りできれば幸いです。

学習院女子大学 公式サイトはこちら≫

編集後記

学校対談に参加をした高校生2名は、大学のキャンパスで教授や大学生と直接話をするという特別な時間を過ごせたことがうれしかったと話してくれました。生徒にとっては進学や就職など、将来のことを楽しく想像できた1日だったのではないでしょうか。これからさらに進化を遂げていく高大連携のさまざまな取り組みに注目したいです。

イベント名 日時
中学校・高等学校部活動体験会 20237月29(土) 10:00
中学校・高等学校部活動体験会 2023年8月26(土) 10:00
中学校教育内容説明会 2023年9月3() 9:00
高等学校教育内容説明会 2023年9月3() 9:00
中学校・高等学校授業体験会 2023年9月9(土) 14:00