「なぜ?」が原動力!先生が引き出す理科学習の魅力とは

聖学院中学校・高等学校
聖学院中学校・高等学校(以下、聖学院)では、生徒の「知りたい!」という気持ちを引き出す魅力的な理科授業が行われています。近年では理科の探究学習にも力をいれている聖学院。中・高男子の心をつかむ授業とはどのようなものなのか、理科(物理科)教諭で探究学習を実施している玉木聖一先生と、同じく理科教諭で教科横断型授業に取り組む宮隆允先生にインタビューしました。

「科学者の思考」を生徒に。探究学習への取り組み

始めに、玉木先生が行われている理科探究学習についておうかがいしました。先生は現在中学2年生を担当。どのような授業なのでしょうか。

探究授業を始めた経緯について教えてください。

玉木先生
ご自身も聖学院出身の玉木先生。理科教科主任・中学2年学年副主任。現在受け持つ学年で、中1から探究授業にチャレンジ中

玉木先生 昨年度に中学1年生を担当し、新しい探究授業に取り組んでいこうと考え、今年で2年目になります。学期中に1回はオープンな形で、生徒一人ひとりの考えを発表できる場をつくろうと考えました。
それまでは、あまり授業の中で探究学習を取り入れることはなかったので、今まさにチャレンジ中です。

探究学習を授業に取り入れようと思われた理由はなんでしょうか。

玉木先生 一言で言えば「科学者になってほしい」という思いからです。もちろん職業としての科学者ではなく、そういう思考を持ってもらいたいということです。
自分の問いを発見する、仮説を立てる、実験・調査などで手を動かし、新しい問いを導き出す、こうした科学者が行うループが身につけば、さまざまな事象で興味・発見につながると考えています。

どのような授業を行われましたか。また生徒たちの反応はいかがでしたか。

玉木先生 中学1年次に「力」の単元で実施した「ストローブリッジを作成する」という授業は手応えを感じました。
三人一組になり、ストローを使って強度の高い橋をみんなで相談しながら作っていきます。授業での学びをもとに、仮説をたて、制作・実行するということがしっかりできた授業でした。
その後のテストでは、レインボーブリッジを題材にして、授業で学習した力の矢印を身近なものに応用できるかを問いました。生徒たちからは、何かしら回答しようという気概が見られました。知らないことでも知っている知識を使って導き出そうとしていたのです。

ストローブリッジ制作の様子
ストローブリッジを組み立てる
制作したストローブリッジに辞書を載せる
辞書を載せて強度を確認
ストローブリッジの強度を確かめる様子
ペットボトルも載せてみる
制作したストローブリッジにペットボトルを乗せた様子
さまざまな方法で強度を確認
完成したストローブリッジ
完成したストローブリッジ

中学2年の1学期では「大気」の単元で、大気が存在することを証明するためにはどんな実験方法があるかを考え、実験結果を発表してもらいました。自分で考えてから授業を受けるのと、ただ授業を受けるのとでは、考える量が格段に違います。

授業を通して、生徒に望むことはなんでしょうか。

玉木先生 考えることを習慣化できるようになってほしいです。日常の中で考える習慣をつけておくことで非日常のときに活かすことができる。そうした経験を積み重ねることで、彼らの成長を促すことができればと考えています。

中3・高2、2か年計画の理科授業を実行中

続いて宮先生にお話をうかがいます。先生は教務部長でもあり、またICT担当としていち早く授業にICTを取り入れてきました。現在は高校2年生を担当しています。

宮先生
「ゲームとなるとやはり生徒の食いつきがすごい!」と宮先生。先生はSTEAM教育も担当。今年、先生が教えた学年から教育実習生として学校に戻ってくる卒業生が多く「それが一番嬉しい」とのこと

先生が実践された教科横断型授業について教えてください。

宮先生 現在受け持っている高校2年生は、中学3年次に私が教えていた生徒たちです。実はその時に、2年に渡る授業ストーリーを設計しており、1年間の空きはありましたが今まさに実行中です。
これは、自分のこだわりになってしまいますが、生徒に全部伝わらなくても、自分の中で一本、筋の通った大きなストーリーを組み立てた授業をしたいという思いからでした。
さらに今はさまざまな教育方法がありますが、私の中では昔から、教科横断的な考え方や取り組みが今後大事な要素になると考えていました。またそのほうが、生徒の学習効果も上がるのではないかという考えもあったのです。

どのような授業を行われたのでしょうか。

宮先生 中3物理のエネルギーの単元では、導入として美術の先生とビデオゲームのリアリティについて語る授業をオンラインで行い、現実の物理現象と仮想世界の物理演算について考察しました。
次に生徒のスマホに加速度センサーアプリをいれてもらって、個人でセンサーを使った実験をしてもらい、力学エネルギーの授業へと発展させ、まとめとして“最恐ジェットコースター”を設計しよう、ということを行いました。

加速度センサーを使った実験
加速度センサーを使った実験
机を傾けて実験
傾斜を利用した加速度センサー実験の様子

中3後半では、さまざまなエネルギーの変換の分野で、アニメキャラクターの戦闘力を数値化する取り組みをしました。また、グループに分かれて「オリジナル発電を考えよう」をテーマに、科学的視点だけでなく、環境やコスト、マーケティングなど社会科学の要素も加えたプロジェクト活動を行いました。最後は、電気自動車は本当にエコなのか、地政学や経済学の観点も含めて考えるという問題提起で締めくくりました。

最恐ジェットコースター3D モデルの実況画面
最恐ジェットコースターは3Dモデル化し最後はゲーム実況風のオンライン授業を実施。生徒たちは自宅からチャット機能を用いてリアクションし、そのコメントをすべてリアルタイムで画面に合成。先生はコメントに返答しながら授業を進行

それが高校2年生までつながるのですね。

宮先生 そこからもっと掘り下げて、電気自動車でも使われる半導体の原材料は何か、どこから産出されるのかといったことを現物や各種データを見ながら考えてもらう授業を行いました。教養としてのサイエンスだけではなく、社会科学、人文科学などの要素も入れながら考えていこうという授業を組み立てています。

とても楽しそうな授業ですが、生徒たちはどんな反応でしたか。

宮先生 別の観点から見ることで自分の知っていたことと違うことが分かるので、まず驚いていますね。
私は、生徒たちにはとにかく思考を止めてほしくないと考えています。そして多様な視点で物事を考えられる人間になってほしい。それには多様な知識や情報源に触れることです。複数分野を学ぶ意義はここにあります。

授業にかける思いをお聞かせください。

宮先生 2か年計画で授業を行うのは初めてですが、これができるのも中高一貫の利点です。同じ内容をもう一度考えてみることで、より考えの深みを増すこともできますし、以前と異なる思考が生まれる機会にもなります。
今年度は高校で新課程の授業がスタートしました。これを期に、これからも物事の本質に近づけるような授業を行っていきたいです。

生徒とともに「種」を育てていく

受験生の皆さん、また保護者へのメッセージをお願いします。

玉木先生 本校は「Only One for Others」をモットーとしています。どう考え、どんなモノの見方をするのか、授業や教員と接する中で学び、自分自身の「Only One」を見つける、私もこの精神を大事にしています。ぜひ本校で自分だけの「Only One」を見つけてください。

宮先生 本校にはいろんなことに取り組めるしかけがたくさんあります。
例えて言うなら、学校という豊かな土壌にいろんな種を私たちが蒔いている。その中から自分に合った種を見つけ、学校やその後の人生で育ててほしい。私たちはその種を育てるお手伝いをしていきたいです。

編集後記

授業の話をお聞きした後、思わず「先生方の授業を受けたいです!」と言ってしまったほど興味深いものでした。
聖学院は理系の生徒ばかりでなく、文系の生徒も多いそうです。そんな生徒たちにも興味・関心を引くような魅力的な授業が展開されていると感じました。ぜひ学校説明会や体験会に足を運んでいただき、学校や先生の雰囲気を体感していただきたいです。

イベント紹介

予約必須。開催時間は各回の申し込みページにてご確認ください。

イベント名 実施日 備考
国際生対象入試説明会 10月14日(土) オンライン型
学校説明会・体験会 10月21日(土) 来校型
校内見学会 11月11日(土) 来校型
学校説明会(イブニング) 11月17日(金) オンライン型
入試対策説明会 11月25日(土) 来校型