学校で養蜂!?生徒たちが取り組む「みつばちプロジェクト」

聖学院中学校・高等学校
聖学院中学校・高等学校(以下、聖学院)では探究型学習の一環として2016年より、生徒有志によって「みつばちプロジェクト」と称し、学校内で養蜂を行っています。さらにジャムや飲料製品も製造。2020年には合同会社「And18's」を設立しネットや店舗でも販売しています。プロジェクトの中心となって活動する2名の生徒と同プロジェクト顧問の相澤睦先生にお話をうかがいました。

新商品も続々と開発!生徒主体のプロジェクト

お話をうかがったのは高校1年生GICクラス(Global Innovation Class)の中島悠陽(はるあき)さんと、高校2年生普通科アドバンストクラスの黒羽遙太(ようた)さん。中島さんはAnd18’sの副社長、黒羽さんは養蜂部長という役職にも就いています。

始めにみつばちプロジェクトの活動内容について、中島さん、黒羽さんから説明していただきました。

2016年4月にスタートし、現在の参加生徒は中学2年生〜高校2年生まで約20名。全員が有志による参加で、メンバーの生徒が友人を勧誘しながら活動しています。

遠心分離機で作業する生徒
採集した蜂蜜を遠心分離機で抽出
遠心分離機から出てくるハチミツ
遠心分離後、ハチミツをろ過し瓶詰めします。ハチミツは非加熱製。衛生環境をしっかり行い製造しています

活動は週2回。巣箱を内検しみつばちの様子やハチミツを採集。多い年では80キロも採れるそうです。さらにSDGs推進の観点からフードロス問題に着目し、規格外・見た目の悪さで廃棄されてしまう果物を使ったジャムなどの商品も開発。生徒主体で生産・加工・販売までチャレンジしています。

傷がついたリンゴを手に説明する生徒
この少しの傷でも廃棄の対象に。こうした果物を使ってジャム作りを行います
青天渋沢はちみつジンジャーエール
生徒発案による新商品の青天渋沢はちみつジンジャーエール。子どもから大人まで親しみやすい味にするために工夫したそうです

最近では8か月かけて開発した「青天渋沢はちみつジンジャーエール」を発売。現在はトマトドレッシングを開発中とのことです。 さらに2023年11月には学生養蜂サミットにおいて、大学生チームも参加する中、全国3位(優秀賞)を受賞するなど、学校内だけにとどまらない活動です。

養蜂サミットポスター会場で賞状を持ちガッツポーズのプロジェクトメンバー
学生養蜂サミットで見事全国3位・優秀賞受賞!

タイの児童養護施設を支援!クラウドファンディングも

同校では1987年からタイ・チェンライへ研修旅行を実施してきており、みつばちプロジェクトのメンバーが現地で養蜂支援を実施してきました(※)。

2023年2月にはクラウドファンディングを活用し、タイ・チェンライの「メーコックファーム」(児童養護施設)の子どもたちを支援。ジンジャーエール、そして無農薬栽培のタイ産ホムトンバナナ(規格外のものを使用)を使ったバナナジャムが寄付の返礼品となりました。

※コロナ禍で2020年以降現地訪問を休止。2022年12月に3年ぶりに復活。

ムトンバナナの写真
規格外となったムトンバナナ。日本ではなじみ薄いですが小ぶりで甘みの強いバナナとのこと
ジャム作りをする生徒たち
家庭科室でバナナジャムづくり

生き物相手のプロジェクトだからこその難しさと大変さ

内険作業中の生徒たち
内検作業中の生徒たち。巣箱は学校の屋上にあります

みつばちプロジェクトに参加することになったきっかけを教えてください。

中島さん 中学3年の4月に参加しました。当初はハチよりも会社(And18’s)の方に興味があったのです。でも参加してみて養蜂の面白さに気づきました。

黒羽さん 僕も中3で参加しました。当時所属していた剣道部の先輩に誘われたのがきっかけでしたが、参加するうちにどんどん養蜂に興味が湧き、今ではみつばちプロジェクトの方が中心です。

養蜂で一番大変なことはなんですか。

黒羽さん 夏場の内検です。炎天下の中、ハチに刺されないように防護服を着て1時間くらい作業しているので結構つらい作業ですね。

中島さん やはり生き物を相手にしていることだと思います。学校閉鎖で1週間ほど内検できないときがあったのですが、ハチが少なくなっていました。やはりちゃんと見ていないといけないと実感しました。

作った商品が売れることがやりがいに

活動していく中でうれしかったことはありますか。

黒羽さん 初めて作ったジャムを記念祭で販売したときです。自分が作った製品を直接販売し、それが売れたときはとてもうれしかったです。

中島さん 商品を買っていただいたお客様から「おいしかった」と直接感想を聞けることが何よりの喜びです。

プロジェクトに参加してから変わったと思うことはありますか。

黒羽さん もともと発表することが苦手だったのですが、プロジェクトの説明などを説明する機会が多く慣れてきたこともあり、嫌という気持ちがなくなりました。
また最初は「ハチに刺されるかも」と思いながらでしたが、今では自分が採集したハチミツが売れるたびに、夏の暑い中でもやってきて良かったな、とやりがいを感じるようになっています。

フリップを使って説明する黒羽さん
フリップを使って説明する黒羽さん。会社では養蜂部長としてメンバーを指導する立場です

中島さん 何事にもチャレンジする力が鍛えられたと思います。僕も最初は「刺されるリスクを負ってまで何でやるの?」という気持ちがあったのですが、新商品開発の際、相澤先生から「やってみればいいじゃないか」と言われ、実際行動すると楽しかったです。また「おいしかった」「プレゼン上手だね」と言われると成果を実感でき、どんどんやる気につながっています。

中島さんの画像
SDGsプロジェクト、起業ゼミにも参加している中島さん。日本文化の振興と貧困問題を解決したいという夢があるそうです

社会に目を向けた活動を。みつばちプロジェクトへの思い

相澤先生にもお話をうかがいました。先生の担当教科は理科(生物)。プロジェクト以外にも、貧困vs起業ゼミ、進路指導部をご担当され、さらにAnd18’sの代表も務められています。

これまでの活動についてどのように評価されていますか。

相澤先生 当初から内輪で小さく行うのではなく、社会に目を向けた活動にしていけたらと思っていました。そうした中、生徒たちがいろいろ取り組み、その活動が評価につながっていると感じています。

合同会社を設立された理由はなんでしょうか。

相澤先生 活動する中で、さまざまな取引先ができます。そのため、たとえ高校生であっても社会人として、取引相手として認めてくれるようにしたほうがよいと考えました。実際、名刺を持って挨拶すると取引先として、我々が行おうとすることを真剣に受け止めてくれるのです。
また会社組織にすると、生徒たちそれぞれ役職に就きます。そのことで責任も生まれ、プロジェクトに対しても真剣勝負となるのです。

ハチミツやジャムが並んだ商品写真
製造されたハチミツやジャムは文化祭でも販売され、即完するほどの人気商品

今後生徒たちにはどのように成長していってほしいとお考えですか。

相澤先生 この活動はあくまでも有志によるもので、日々の勉強や部活動もあるので継続していくのは難しい部分もあると思います。でもみんなの力を少しずつ合わせていきながら、活動していってほしいと考えています。
そしてプロジェクトを通して、自分が動くことで社会が動く、そういうことを実感し今後の自身の活動につなげてほしいです。

最後に、受験生および受験生保護者へメッセージをお願いします。

相澤先生 本校では座って学ぶというより、探究活動をする時間が多くあります。男の子にはそうした活動的な体験が合っているでしょう。またタイの海外研修も復活しました。ぜひ本校での活動を通して、自身の将来を見つけてほしいと思います。

編集後記

中島さんとは最初のご挨拶で名刺交換をしたのですが、“さすが副社長”と思える雰囲気でした。
2023年の夏は猛暑の影響もあり、採蜜量が著しく減少したとのこと。生き物を相手にする難しさを感じたそうです。養蜂を通して大切なことを学ぶ生徒たち、そんな生徒を信頼している先生との相互信頼が築けていると感じました。

イベント紹介

イベント名 日時 備考
2025年度入試学校説明会・体験会 2024年3月2日(土) 来校型