白血病の高校生の実例をもとにグループワーク
ゼミでは、勝部敦史先生から医師としての仕事についてお話があり、その後、白血病患者の実例をもとにしたグループワークを行い、最後には大学病院で医療施設を見学しました。慈恵医大でのゼミに参加し、ともに医師を目指している森絢大くんと藤本開登くんにお話をうかがいます。
今回のゼミに参加した理由を教えてください。
森くん 医療の最前線で活躍されている先生方のお話を聞いたり、現場を見たりして将来につながる経験を積みたいと思ったからです。
藤本くん 僕は持病を抱えているので、今回、白血病治療についてグループワークをすると知り、難病について先生方の生の声を聞いてみたいと思いました。また、現場の先生方が医師を志した理由を知りたいと思い、志願しました。
ゼミを受講して学んだことや、印象に残っていることを教えてください。
森くん
これから医師になろうとする人に求められる資質は、創造力と対人能力だという勝部先生のお話です。人間がAIより優れているこの能力を、意識して磨いていこうと心に留めました。
グループワークでは、高校生の白血病患者の事例を見て、僕は絶対に骨髄移植を受けるべきだと即決しました。しかし、藤本くんや周りの人の意見を聞いているうちに、自分の判断が正しいのかどうか迷いが生じてきたんです。そして、治療法の選択という大きな決断が医師に求められることを実感しました。
藤本くん 白血病の治療を、薬物療法と骨髄移植のどちらにするか悩みましたが、最終的に、医師の考えや家族の希望より、患者の意志を何より大切にすべきだという結論に達しました。そして、一人の患者を医師や周りの友人、家族などたくさんの方が支えていて、自分自身もそうした支えがあって生かされているんだとゼミを通して知ることができました。
高校生から受けた刺激
腫瘍・血液内科の矢野真吾先生、横山洋紀先生、勝部敦史先生に芝漬ゼミで感じたことをうかがいました。矢野先生と横山先生は芝の卒業生です。
矢野先生 腫瘍・血液内科で芝漬ゼミをやると決まったとき、どのような内容にするか悩みました。高校生の白血病患者の事例を取り上げることになりましたが、果たしてこの内容が適しているのかと、一抹の不安を抱いたままゼミに臨みました。しかし、グループワークでは生徒の皆さんが医師になったつもりで一生懸命考え、自分の言葉で意見を発信してくれたので、嬉しい気持ちがこみ上げてきました。医師を目指す高校生と接することは、我々にとっても非常に刺激になります。
横山先生 私が高校生だった頃にも芝漬ゼミのような機会があれば…と羨ましくなりました。職業について悩む時期に、現場の医師と接することで得るものは多いと思います。森くんや藤本くんの感想を聞いて、腫瘍・血液内科とのゼミが役に立ったことが分かり、私も嬉しいです。
勝部先生 医師になると、入試とは違い、答えがない難しい事態に遭遇します。そうしたとき、解決に向けて話し合うことは医学生でも医師になってからも続くことなので、今回のグループワークで少しでも医療の現場を理解してもらえたらいいなと思います。
編集後記
医療現場で活躍する先生方が卒業生であることは、医師を目指す生徒にとって大きな励みになることでしょう。母校について、矢野先生は「それぞれの目標を目指す仲間と個性的な先生方に出会えたことが財産です。私は数学が好きで、授業には出ないような難問を解いて先生のところにいくと、『一緒にやろう』と喜んで添削をしてくださいました」と思い出を語っていました。