慈恵医大で命と向き合う 芝の中高大連携

芝中学校・芝高等学校
芝中学校・芝高等学校(以下、芝)は、2021年に東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)と中高大連携協定を締結。学校独自の学びの場“芝漬ゼミ”では、2023年春に2度目となる慈恵医大との連携ゼミを実施しました。そこで、ゼミに参加した医師の先生方にもご同席いただき、受講した生徒と、最先端の医療現場で行われた学びを振り返っていただきます。

白血病の高校生の実例をもとにグループワーク

ゼミでは、勝部敦史先生から医師としての仕事についてお話があり、その後、白血病患者の実例をもとにしたグループワークを行い、最後には大学病院で医療施設を見学しました。慈恵医大でのゼミに参加し、ともに医師を目指している森絢大くんと藤本開登くんにお話をうかがいます。

芝の生徒と慈恵医大の教授
慈恵医大でのゼミに参加した生徒たち

今回のゼミに参加した理由を教えてください。

森くん 医療の最前線で活躍されている先生方のお話を聞いたり、現場を見たりして将来につながる経験を積みたいと思ったからです。

藤本くん 僕は持病を抱えているので、今回、白血病治療についてグループワークをすると知り、難病について先生方の生の声を聞いてみたいと思いました。また、現場の先生方が医師を志した理由を知りたいと思い、志願しました。

芝の生徒
森絢大くん。「大学病院の施設を見学して、自分もこうした現場で最先端の医療を学びたいと思いました」と語ります
芝の生徒
藤本開登くん。「芝には医師を目指す生徒がたくさんいるので、そうした仲間にもこのゼミを受けてほしい」と語ります

ゼミを受講して学んだことや、印象に残っていることを教えてください。

森くん これから医師になろうとする人に求められる資質は、創造力と対人能力だという勝部先生のお話です。人間がAIより優れているこの能力を、意識して磨いていこうと心に留めました。
グループワークでは、高校生の白血病患者の事例を見て、僕は絶対に骨髄移植を受けるべきだと即決しました。しかし、藤本くんや周りの人の意見を聞いているうちに、自分の判断が正しいのかどうか迷いが生じてきたんです。そして、治療法の選択という大きな決断が医師に求められることを実感しました。

藤本くん 白血病の治療を、薬物療法と骨髄移植のどちらにするか悩みましたが、最終的に、医師の考えや家族の希望より、患者の意志を何より大切にすべきだという結論に達しました。そして、一人の患者を医師や周りの友人、家族などたくさんの方が支えていて、自分自身もそうした支えがあって生かされているんだとゼミを通して知ることができました。

慈恵医大での高大連携
グループワークでは、医師になったつもりで白血病患者の治療法を考えました
慈恵医大での高大連携
グループワークで感じた疑問点を矢野真吾先生に質問する森くん(右端)
慈恵医大を見学する生徒
グループワークの後は、横山洋紀先生の案内で病院の施設を見学
慈恵医大を見学する生徒
治療室や病室を特別に見せてもらいました

高校生から受けた刺激

腫瘍・血液内科の矢野真吾先生、横山洋紀先生、勝部敦史先生に芝漬ゼミで感じたことをうかがいました。矢野先生と横山先生は芝の卒業生です。

慈恵医大での高大連携
芝90回生の横山先生(左)と芝77回生の矢野先生
慈恵医大での高大連携
森くん(右)と藤本くんのグループワークでファシリテーターを務めた勝部先生

矢野先生 腫瘍・血液内科で芝漬ゼミをやると決まったとき、どのような内容にするか悩みました。高校生の白血病患者の事例を取り上げることになりましたが、果たしてこの内容が適しているのかと、一抹の不安を抱いたままゼミに臨みました。しかし、グループワークでは生徒の皆さんが医師になったつもりで一生懸命考え、自分の言葉で意見を発信してくれたので、嬉しい気持ちがこみ上げてきました。医師を目指す高校生と接することは、我々にとっても非常に刺激になります。

横山先生 私が高校生だった頃にも芝漬ゼミのような機会があれば…と羨ましくなりました。職業について悩む時期に、現場の医師と接することで得るものは多いと思います。森くんや藤本くんの感想を聞いて、腫瘍・血液内科とのゼミが役に立ったことが分かり、私も嬉しいです。

勝部先生 医師になると、入試とは違い、答えがない難しい事態に遭遇します。そうしたとき、解決に向けて話し合うことは医学生でも医師になってからも続くことなので、今回のグループワークで少しでも医療の現場を理解してもらえたらいいなと思います。

芝漬ゼミの記事はこちら

編集後記

芝の生徒と慈恵医大の教授
左から矢野先生、森くん、藤本くん、横山先生。「芝の仲間とは今も半年に一度くらい会っています」と横山先生。

医療現場で活躍する先生方が卒業生であることは、医師を目指す生徒にとって大きな励みになることでしょう。母校について、矢野先生は「それぞれの目標を目指す仲間と個性的な先生方に出会えたことが財産です。私は数学が好きで、授業には出ないような難問を解いて先生のところにいくと、『一緒にやろう』と喜んで添削をしてくださいました」と思い出を語っていました。