芝の卒業生が母校を訪問「先輩の話を聴く会」

芝中学校・芝高等学校
卒業生である大学生が母校の芝中学校・芝高等学校(以下、芝)を訪れ、受験の心得や大学生活を語る「先輩の話を聴く会」が今年も実施されました。超難関大学に進学した卒業生は、いったいどのような話を聞かせてくれるのでしょうか。講話の内容とインタビュー取材を通して、芝のロールモデルとなる先輩たちの姿をご紹介します。

先輩の話を聴く会」レポート

「先輩の話を聴く会」は本格的な大学受験勉強に挑み始めるタイミングの高校2年生を対象にしています。芝を卒業した大学生を招聘し、各大学の特色をはじめ、本人が体験してきた受験勉強への取り組み方をふり返るという内容です。1講話が25分、異なる先輩方の計2講話いずれかを生徒が選び、進路に当てはめて今すぐに使える「生きたノウハウ」を得られる貴重な機会になっています。

東大、北大、一橋大、東工大、筑波、早慶といった超難関大学の先輩が母校に集いましたが、インタビュー取材を実施する東京慈恵会医科大学(以下、慈恵)のO先輩をメインに見学させていただき、以下に要旨をまとめました。現役医学部生による貴重なアドバイスです!

①私の受験勉強
高2の冬は、英語は共通テストレベルの文章はしっかりと理解できる状態で、数学は教科書レベルが完成して苦手分野のベクトルを中心にやっていました。物理は概念理解にながい時間をかけ、高3になる前に全範囲の学習は終了していました。化学は全然理解できていなかったので学校の授業で学んで覚えるようにする一方、国語と社会はたまに確認する程度で問題ありませんでした。
高3の4月からは、英語は演習を繰り返し、復習の時は音読していました。数学はひたすら予備校の難しい講座を受けて苦労していました。夏休みには共通テストの過去問5年分、二次試験5年分の過去問を解き、基礎の抜けがないかを確認していました。小論文と面接対策を始めたのは高3の12月ですが、夏休み頃には先生に相談しても良いと思います。

②高2の今やっておくべきこと
現役合格したのは勉強習慣があって基礎を固められていたからです。受験で勝利するのは基礎の土台が盤石だった者です。高3になる前には、物化より先に英数の基礎を仕上げきってください。

③伝えたいこと
成績は1~2か月で結果が出ることはほぼなく、根気強くやり続けられるかどうかが鍵になります。浪人生と違って現役生は入試直前になって伸びることがよくあります。受験勉強の中で辛いときは必ず来るもので、そんな時は一人で抱え込まないでください。いろんな人に助けてもらい、入試までやり抜いたことで人として数段成長できた自覚があります。支えてくれる人への感謝を忘れず、最後まで諦めないでください。

計17人の先輩が高校2年生を激励しました
計17人の先輩が高校2年生を激励しました
先輩方に共通するアドバイスは「先生を頼れ」でした
先輩方に共通するアドバイスは「先生を頼れ」でした

大学での学びや充実した過ごし方を知ってもらいたい

講話を終えたばかりのO先輩から、先輩の話を聴く会の背景についてたくさんお話を聞かせてもらいました。

東京慈恵会医科大学の医学部医学科に進学したO先輩
東京慈恵会医科大学の医学部医学科に進学したO先輩

「先輩の話を聴く会」に参加した理由を教えてください。

O先輩 僕自身が高2の時に講話を聞かせてもらい、医学部受験の参考になりました。しかし、受験勉強を通して知識を得たり人間性の成長につなげられたりした経験を、芝の後輩たちに伝えたいと思ったのが本当の参加理由です。

卒業生だからこそ知っている受験生の問題点をストレートにアドバイスしてくれました
卒業生だからこそ知っている受験生の問題点をストレートにアドバイスしてくれました

芝で過ごした6年間と今の大学生活にはギャップを感じませんか。

O先輩 バスケットボール部の部長としてプレッシャーを感じていた当時、先生方の応援が大きな励みになりました。母校への恩返しをしたいと考えていたので、今回の講話が良い機会になりました。
大学では同じ代の芝の卒業生が僕一人だけなので、今までとはまったく異なる環境で過ごしていますが、いろんな価値観を持っている芝の仲間たちとの交流があったからこそ、大学でも先入観を持たずに接することができるようになりました。これは芝で教わった「共生(ともにいきる)」という言葉そのものだと考えています。医師はすべての仲間と綿密に連携するチーム医療が求められる仕事です。将来もきっと芝で過ごした日々が活かされるはずです。

卒業して分かった芝の良さを教えてもらえますか。

O先輩 芝は自由にやらせてもらえる部分が多いので、やりたいことがあったら、とことんやれる6年間になります。どんな人でも自分だけの居場所ができる点も芝らしい長所です。この学校を「芝温泉」と言い表す言葉があって、その意味は包み込むように温かい雰囲気の中で、自分らしく過ごせる環境を表現した例えです。たとえ今は面白いことが見当たらなくても、6年間かけてのんびり探していけるのが芝の良いところなんですよ。

日本医科大学医学部医学科の先輩は「英語を疎かにすると落ちる」と断言していました
日本医科大学医学部医学科の先輩は「英語を疎かにすると落ちる」と断言していました

難関大学に受かるための秘訣はありますか。

O先輩 英語の勉強だけはスタートラインがみんな一緒なので、早く得意になってしまえば差を付けることができます。学校から与えられた課題をしっかりこなせば、大学受験でもきっと活かすことになるので基礎を大切にしてください。

卒業生の体験を後輩に継承する芝オリジナルの文化

恩師である上條唯志先生と高校2年生のY.N.くんがホームルームを終えて合流。さっそくO先輩の講話に対する感想を話してもらいました。

先生と先輩に挟まれて緊張気味の高校2年生Y.N.くん
先生と先輩に挟まれて緊張気味の高校2年生Y.N.くん
O先輩の卒業学年にはクラス担任として精神的な支えになってくれた上條唯志先生
O先輩の卒業学年にはクラス担任として精神的な支えになってくれた上條唯志先生

上條先生の声から、先輩の話を聴く会の開催目的をご説明ください。

上條先生 これから受験に立ち向かう高校2年生にとって、身近な先輩の話は何よりも説得力があるので協力をお願いしました。教員では答えられないような一歩踏み込んだアドバイスこそ、私たちが求めていたものです。また、昨年まで担任していたO君たち卒業生が母校に戻ってきてくれる姿を見て、教員としてとても嬉しい気持ちでした。近い将来、講話を聞いた本人も後輩に未来のバトンを手渡す役割を担ってくれるように期待しています。

先輩の講話から学んだことや感想を聞かせてください。

Y.N.くん 受験の厳しさを実際に体験してきた先輩から、成功談だけでなく失敗体験も聞けたのが参考になりました。僕は国立大学の医学部医学科を目指していますが、合格を勝ち取るにはメンタルの状態が大事だと教えていただいたので、先生の助けを借りつつ乗り越えていきたいです。また、大学生活のイメージが変わり、勉強以外の活動も楽しいことが分かりました。医師を目指す過程でいろんな体験をしていきたいと考えています。

東京科学大学(旧東工大)らしい凝ったスライドを用意してくれた先輩の講話
東京科学大学(旧東工大)らしい凝ったスライドを用意してくれた先輩の講話風景

O先輩に関するエピソードを覚えていらっしゃいますか。

上條先生 真面目すぎて悩みを抱えこむ傾向があり、志望校が揺れていた時期もありました。そこから立ち直れたのは、仲間との絆があったからだと考えています。それは球技大会のような学校行事からも育まれました。日常生活に満足している生徒は逆境に強いと感じます。彼に関しては、志望校に合格した際に教員みんなで喜んだことをよく覚えています。

東京大学の先輩いわく「目標は高く」持って頑張りましょうとのことでした
東京大学の先輩いわく「目標は高く」持って頑張りましょうとのことでした

未来の新入生に向けたメッセージをお願いします。

上條先生 私たち教員はもちろんのこと、保護者の皆さんも学校とのつながりを強く感じられるのが芝の良さです。それは先輩と後輩のつながりと同様に、目には見えずとも感じ取れる文化のようなものです。中学受験を無事に乗り切って入学できたら、芝の一員として学校の温かさを実感してみてください。

編集後記

母校に集まった先輩たちの進学先を見て、「芝は物凄い進学校なんだ」と改めて思い返した次第です。もはや東大は当たり前、むしろ枠が小さい医学部医学科への進学者数に驚かされます。原則自由な指導方針、他校を圧倒する進学実績、共生の精神を根底にした男子校教育……。唯一無二の学び舎として確立している芝の今後から目が離せません。