現役臨床医の巣鴨OBが母校で語った大学進学の心構え

巣鴨中学校・巣鴨高等学校
毎年、難関国公立大学・難関私立大学をはじめ、医学部への合格者を多く輩出してきた巣鴨中学校・巣鴨高等学校(以下、巣鴨)。進学校として名高い巣鴨が提供するのは、受験だけでなく社会で活かせる人間力を育む教育。今回は、現役で臨床医師として活躍する巣鴨OBに、母校で過ごした6年間を振り返っていただきます。後半では、医学部進学を志す在校生3名が登場し、巣鴨OBに気になる質問をぶつける様子をお届けします。

母校で過ごした6年間

東京医科大学で耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野の主任教授として勤務する塚原清彰先生に、巣鴨での学びをうかがいました。

塚原清彰先生

プロフィール画像

・1992年 巣鴨学園高校卒業後、同年東京医科大学入学
・1998年 東京医科大学卒業卒業
・現在、東京医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野で主任教授として勤務
・専門領域は、頭頸部腫瘍(ロボット手術、拡大手術、光免疫療法、免疫薬物療法、化学療法)
・剣道錬士6段、合気道6段

巣鴨での6年間の思い出を教えてください。

塚原先生 巣鴨へ補欠で合格した私は、中学1、2年のときには、常にクラスで下から10番以内にいました。在学6年間で一度も選抜クラスに行ったことはありません。中3、高1辺りも平均点前後を行ったり来たりしている学生でした。そんな私も、高校2、3年のときにはさまざまな先生に支えていただきながら、受験期を乗り越えていきました。

部活動は、スキー班と合気道同好会(現合気道班)に所属し活動していました。特に合気道は、大学進学後にも続けましたし、今でも不思議な縁を感じています。

受験のモチベーションだった合気道

医療の道を志したきっかけを教えてください。

塚原先生 祖父と父が産婦人科開業医でしたので、受験を意識する前から、医師を目指していました。とはいえ、勉強のモチベーションが保てないことも。そんなときに頑張れる理由となっていたのが合気道です。

巣鴨の合気道同好会は、日本合気道協会という流派。当時、医学部で同じ流派の部活があるのは東京医科大学しかありませんでした。実際に大学の試合を見学した際、東京医科大学の学生の皆さんが楽しそうに活動している姿を見て、自分も東京医科大学に行きたいと思うようになりました。

医療の現場を経験した塚原先生が、大切にしている価値観を教えてください。

塚原先生 医学は研究と技術という歴史の上にあります。しかし、古き歴史を大事にしながら、常に新しい治療や技術に取り組まなければ、進化はできません。そのため、ロボット手術、光免疫療法などの新規医療に積極的に取り組み、治療選択肢を増やせるよう日々勉強に励んでいます。そういった新しい取り組みが、次の世代の土台になればと思います。

人生を豊かにする縁の連鎖は巣鴨から始まった

母校で得られた現在にもつながる教訓はありますか?

塚原先生 一つは、出会いに感謝するということです。補欠で巣鴨に入学した私は、たまたま創設2期生として合気道同好会へ入り、それがきっかけで東京医科大学を目指しました。さらに、東京医科大学で始めた合気道部の活動が火木土だったために、月水金で剣道を始め、現在でも週に4~5日剣道の稽古をしています。当時は偶然と感じていても、振り返れば必然と思える出会いの連続です。人生を豊かにするさまざまな縁の連鎖のスタートが巣鴨にあったのだと考えています。

もう一つが、人間の成長には胆力が必要ということです。どんなに素晴らしい手術技術を持っていても、術者の胆力がなければ力を発揮できません。巣鴨で経験した6年間、いわゆる硬教育は、その胆力形成の土台となったと感じています。私は人間の成長には、苦しさへの耐性や我慢も必要だと考えています。本人が堪えられる負荷を見極め、支えてもらいながら強化された胆力は、現在医師として働く上でも確実に生きています。

自分が対応できる技量を増やしていくことが大切

医学部進学を目指す高校2年生のW.A.さん、K.S.さん、K.S.さんがぶつける独自の質問に、巣鴨OBの塚原先生に答えていただきました。

W.A.さん

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高校2年生
目標とする診療科:循環器内科
その理由:父親が循環器内科で、小さいころから間近で見てきたから

K.Sさん

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高校2年生
目標とする診療科:消化器外科
その理由:父親が消化器内科で消化器系へ興味があり、ダヴィンチという医療ロボットを使った外科手術に憧れるから

K.S.さん

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高校2年生
目標とする診療科:救急科
その理由:幅広い分野で診れるため

W.A.さん 医者を始めたばかりの頃は、どんな医者を目指していましたか?

塚原先生 当時は、具体的な目指す医者のイメージがあったというよりも、昨日よりも今日、今日よりも明日と、日々自分が成長することを考えていました。

当時は初期研修がなく、医師免許を取得した後すぐに耳鼻咽喉科に入局しました。入局当初、何もできなかったんです。なので、とにかく今日よりも明日と1つずつ積み重ねていって、少しでもできることを増やすことを意識していました。人の役に立つことや、人を笑顔にすることは結果論で、自分が対応できる技量を増やしていくことが大切だと思います。

K.S.さん 医者になって辛かったことや後悔したことはありますか?

塚原先生 自分の未熟さ、無力さを感じたことは数多くあります。現在は主任教授で、頭頚部の手術は4,000件近く経験しましたが、それでもできないことはあります。また、人から見れば成功でも、自分の中で「もっと出血を少なくできた」「傷を目立たないようにできた」と感じることもあります。

とはいえ、人間は満足してしまったらそこで成長が止まってしまいます。今後も無力さを感じることはあるでしょうが、克服しながら成長していかなければいけませんね。

K.S.さん 医学部はかなり忙しいイメージがありますが、実際どうでしたか?

塚原先生 人間は何事にも慣れます。忙しいなりに工夫して遊べるので、心配ないですよ。ただ、エネルギーを多く保てる人は、それだけでかなり有利だと思います。ですので、これから辛いことを経験するかもしれませんが、耐えて胆力を鍛えていってほしいです。

K.S.さん 医者として働くうえで、コミュニケーション力は必要ですか?

塚原先生 1日の大半は話していますから、必要だと思います。例えば、外来では患者さんと話したり、手術室では術前術中と看護師との細かな意思疎通が不可欠です。また、医療安全では起きたことを報告し、再発予防を検討します。基礎研究など一部の先生は細胞を専門的に扱うので、人と話すことは少ないかもしれませんが、臨床だと話すことに慣れる必要があります。

とはいえ、私も最初は口下手でした。経験を積むことで慣れるので安心してください。加えて大切なのは、患者さんに正しい情報を伝えたうえで、相手が選びやすい環境を作ることです。説得するわけではなく、患者さんを思って伝えようとするコミュニケーションが必要だと思います。

勉強の合間の出会いや経験にも目を向けて!

最後に、塚原先生から後輩や受験生の皆さんにメッセージをいただきました。

後輩に向けて、大学進学への心構えや進路選択のアドバイスをお願いします。

塚原先生 受験は、高得点や高偏差値を目指し、難度の高い大学をクリアする偏差値獲得ゲームになる側面があるのは否めません。そして、高得点や高偏差値を獲得することがモチベーションとなる方も少なくないと思います。ですが、それだけだと時に心が疲弊してしまうかもしれません。一方、やりたいことや「この大学のこの学部に行きたい」といった気持ちは、中長期的に心を支えてくれます。ですので、勉強の合間の出会いや経験、情報に広く目を向けてみてほしいなと思います。

未来の巣鴨生への応援メッセージをお願いします。

塚原先生 人生は小説と同じで、未来は分かりません。補欠で入学した巣鴨中学校から、合気道、東京医科大学、剣道、頭頸部外科と不思議な縁で、私はここまで来られました。皆さんにも面白い人生が待っているので、出会いの縁を大切に、今を一生懸命生きてください。

編集後記

塚原先生が話す中で印象的だったのは、度重なる偶然のどれもが、のちの人生に大きく影響を与えてきたこと。それは、何事にも一生懸命に取り組む姿勢が、思いがけない幸運をたぐり寄せるからなのかもしれません。好きなことに本気で取り組む経験は、何事にも代えられない人生の資産。巣鴨なら、そんな有意義な学校生活を送れます。

イベント日程

イベント名 日時
巣鴨祭(文化祭)  2024年9月14日(土)、15日(日)
巣鴨祭(体育祭)  2024年9月17日(火)
高等学校説明会 ※要予約 2024年10月5日(土)
中学校説明会 ※要予約 2024年10月12日(土)