国が認めた「創造性教育」育まれる起業家精神
2016年から開始した創造性教育は、どういう経緯で始まったのでしょうか。
山口副校長
2000年代以降、イノベーションが次々と起きて、世の中が変わってきています。世界中で今求められているのは、誰もが見たことのない、けれど誰もが「こんなものが欲しかった」と言わせるサービスや新商品をチームで創り出すことができる若者です。そうした若者を育てるために、世界中の大学が切磋琢磨して学びを変えています。
企業は世界中で展開しているので、日本企業も世界で求人し、日本の大学から採用しなくても成り立ちます。これに対し、2010年代から日本の大学教育が変わり始め、2021年に私たちの国の大学入試も先進国で一般的な入試の形へ変わりました。
本校が「創造性教育」を始めたのは、新しい世界の流れに対して、学校の教育を通して世界で成功するためのチャンスを掴んでほしいと思ったからです。よって、この教育が目指すところは、世界で活躍できる若者を育てることです。
具体的に、どのような学びなのですか。
山口副校長
創造性教育は中学から高校にかけて行われ、高校2年次の事業化実習が集大成となります。チーム15人で出資して、シリコンバレー生まれのデザイン思考を使い、独創的な商品を企画し、製造、販売、マーケティング、国際展開を行います。ルールは自分たちの手で作ること。そしてチームの中でマネジメント、マーケティング、生産、財務の役割を明確にすること。9月の学園祭への出店、そしてハワイ修学旅行でハワイ大学でのチャリティーバザーを主催し、決算を行い、株主総会で会社を解散するまでを学年全員で行います。
昨年のハワイ大学チャリティーバザーでは、現地の教育基金に日本円にして約25万円寄付できるまでに教育プログラムが成長しています。
各学年ではどのような学びを積み重ねていくのでしょうか。
山口副校長 高校2年次で実践するプログラムに向けて、中学1年次から、街づくり、ロボットづくり、独創的な研究活動、そして商品企画と、年次を追って力を育んでいきます。これらの経験をもとに、高校3年次には、どのような人生を歩みたいか、教員と一緒に考え、キャリアビジョンやキャリア計画を立て、一緒に挑戦し、入試対策を練ります。このように、創造性教育は全校で行なう必修プログラムです。これが新世代のキャリア教育として、令和4年度に文部科学大臣表彰を受賞しました。
キャリア教育優良学校として国から評価されたことについて、山口副校長のお考えをお聞かせください。
山口副校長 本校の教育は、実社会でイノベーションを起こして、どんどん新しい価値と仕事をつくれる若者を育てることを目指しています。これがキャリア教育という分野で有効であると認められたことで、大きな喜びを感じるとともに、日本の教育がもっとイノベーティブな若者を育てることに加速してくれたら嬉しいと思っています。
飛躍した大学入試の実績
大学入試改革元年の2021年、瀧野川女子では総合型選抜で前年比4倍の合格実績を出しました。近年、合格者の9割以上が総合型選抜、学校推薦型選抜で進学。さらに生徒の8割が年内に合格を手にしています。
貴校のキャリア教育と、向上する大学合格実績の関係について、お考えをお聞かせください。
山口副校長 先にも述べたように、2010年代から大学の教育が変わり、大学でもイノベーションできる学生を育てています。2021年から入試の質的な変化があり、面接を重視する総合的な評価に変わりました。決まった分野の決まった範囲の筆記試験だけで合格者を選定するような選抜は、もはや私立大学の定員の4割程度しかありません。多くは企業の採用試験のような、面接主体の総合評価に変わっています。そして、大学が欲しい学生像と私たちの学校が育てた生徒が一致したことで、大学入試改革初年度に総合型選抜で前年比4倍の実績を記録しました。この変化は国際的に見ても、進むことはあっても戻ることはありません。
生徒は在学中、創造性教育の学びを通してどのように成長していきますか。
山口副校長
自分が何をやりたいか、何を追求していきたいかが大切であることをまず学びます。そして自分が好きで挑戦したい、一生取り組んでも悔いはないという分野をそれぞれ見つけていきます。そのうえで、どうやったら世の中の人の欲しいものと自分のやりたいことを結びつけられるのか、仕事として両立させる方法を探ります。
一人でできることは限られていますが、仲間と取り組むことで、より大きな成果を得られることを学びます。チームでイノベーションを起こす力を養うために存在するのが、各教科の授業です。
授業の特徴を教えてください。
山口副校長 本校の教育は、先端ICTの力でかつての2〜3倍の進度で行われます。早く終わった分、指導要領の枠を超えた、大学以降で学びたい内容をゼミ制度を使って深く学びます。このような学びができていることは、大学の先生から見たら喜ばしいことと評価いただいています。好きなことに思い切り挑戦しようという私たちの考えが教育の根幹となっているのです。
中高受験生とその保護者へのメッセージをお願いします。
山口副校長 イノベーションは何か特別な天才が引き起こすものではなく、好きなことに思い切り挑戦していく人々が引き起こすものです。これほど面白いものはありません。ぜひ本校で好きなことに思い切り挑戦しましょう。世界をもっと良くしていくイノベーションの集まりに、あなたも加わりましょう。
編集後記
国が認めた学びにより、生徒は好きなことを見つけ、やりたいことに邁進できる進路を実現しています。次回はそうした生徒を送り出した先生方にインタビュー。生徒の成長や、“やりたいことを思いっきりやる”進路指導に迫ります。
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