東工大からの講師が中学生を強力にサポート
中2で取り組む「ロボットづくり」の立ち上げ時である2014年から、東京工業大学の大学院生が授業講師を担当しています。2021年から担当している杉原さんから、瀧野川女子で行われている授業のポイントについてお話しいただきました。
どんな工夫を施した授業内容となっていますか。
杉原さん 私自身が長年ロボットに携わってきた経験を活かして、高校生に知識やノウハウを伝えるのが面白そうだと感じたことが始めるきっかけになりました。複雑な機械を使いこなすのではなく、市販されているパーツや工具を用いて、生徒がやりたいアイデアを実現させるための挑戦に重点を置いています。そういう理由で、私が決めつける要素は無く、技術的なサポートや安全に対するアドバイスを提供しています。
教科横断型の要素があるそうですね。
杉原さん ロボットに必要とされる理想的な機能や性能を思い浮かべたら、数学や物理といった勉強で得られた知識が直結するようになります。例えば、物理だったら頑丈で壊れない設計を、そして効率よく動かすだけでも数学を使った計算式が役立ちます。中学生には難しい話ですが、もしも理工系学部に進学することがあったら、「ロボットづくり」に取り組んだ経験を思い出してほしいですね。
生徒にはどのような目標を課していますか。
杉原さん 授業の目標は、機能を備えたロボット制作にこだわってほしいというものですが、技術系科目には好き嫌いといった感性の要素が大きく影響するうえに、たった1年で知識や技術は身につきません。疑問を解消したり、好奇心を満足させたりできるように、生徒自身が調べものをしながら成長してほしいと願っています。
瀧野川の生徒さんから感じるセンスや学習意欲を聞かせてください。
杉原さん 一般的に言われる「大人」にはない発想があり、実際の製品にも通じるコンセプトとクオリティへのこだわりを強く感じます。エネルギッシュな活動家が多く、アドバイスに対しても真摯に聞いてくれる姿勢が印象的です。
理工系学部への進学を希望する生徒にはどのように声をかけていますか。
杉原さん
大学に入学する時点で特技があると良いですね。理工系学部の中でもロボット制作に関しては、出来上がった完成物がその人の評価基準になるので、そこに男女や年齢の違いはありません。どれだけ好きで手を動かし続けているか、そういった心が必要になってきます。
理工系を突き詰めたら、前述したように数学や物理の知識が必須ですし、大学生になっても勉強することばかりです。普段生活している身のまわりにも理工系の要素があふれています。何気なく享受している環境が「ものづくり」から構成されていること、理工系の学びが実生活に直結していることを感じ取って過ごしてください。
アイデアが動き出す!楽しい授業の裏にある奥深さ
情報の授業と連携したプログラミングを用いて、デザインと設計図から大道芸ロボットを作り上げた中3のお二人からもお話しいただきました。
ロボットづくりの授業で印象に残っているエピソードを教えてください。
S.S.さん
初めはタブレットで設計図を書き上げ、次にワイヤーや布を使って原型を作っていきました。どんな外見にしようかと悩みましたが、みんなで考えたキャラクターが動いたら面白いと考えて本気で取り組みました。そして現実に完成させることができました。中1の「理想の街を創ろう」という授業で平面図から建物を組み立てた経験が、今回にも役立ちました。
みんなの意見を設計図に取り入れるため、話し合う機会がたくさんありました。みんなに役割があり、各自が進捗度合いを共有する過程でものづくりの楽しさを再発見できました。
Y.H.さん
絵を描くのが好きで、キャラクターデザインをロボットとして具現化できる授業が嬉しかったです。二体それぞれにいろんな動きがあって、圧縮した空気やモーターを使うなど、動力の特性を理解していないと動作しないことを初めて学べました。
私個人では思いつかないようなアイデアがたくさん出てきたことに驚いたと同時に、周囲の助けを仰ぐといった良い経験になりました。一人きりでは創造力にも限界があり、異なる意見を持つメンバーが集まると違った結果を生むということに気づかされました。
社会貢献に直結する創造性教育
中高一貫コース主任の岩城先生からは、創造性教育・理系授業でこれから目指す方向性についてお話しいただきました。
中学生のうちから取り組む理系授業の学習目標を教えてください。
岩城先生
学びそのものに興味を持ってもらうことが大前提ですが、その入り口となるような経験をしてもらうのが一番だと考えています。自由な発想をカタチにする面白さを楽しみつつ、日常生活の中にある物事から新しい価値を見出す点が理系教育の醍醐味であり、本校が掲げる創造性教育の根幹とも言えます。
個々の授業ではグループワークの機会を設け、いつもの仲間から幅広い視野と多様な視点を学ぶことを重視しています。なぜなら、社会人として活躍する際にはチームの一員としての役割を担うことになるからです。中3の「中学課程修了研究」はキャリアに関連する取り組みであり、校内外でのアンケートやインタビューを行うなど、1年間かけて研究した発表内容が、本人自身の適性を見出したり将来の進路選択につながったりすることになります。
今後の理工系学習はどのように発展していくのでしょうか。
岩城先生
杉原さんのように、本当に自分の手でものづくりをしている人と連携した教育は、教員同士の話し合いだけでは思いつかないような新しい技術の導入や、生徒たちの意欲向上に直結するアイデアをもたらしてくれる点で大変助けられています。
2014年から中学生を中心に行ってきたロボット作りを、今年から高1年の独自設置科目「情報基礎」でも行うようになりました。さらに本校独自のゼミでは、ロボティクス、ものづくりの発展的なプログラムが計画されています。
また、中1から高2まで、情報プログラムが時間割の中に存在していることが本校の強みですが、数学や理科の教員も研究者出身が複数名おり、授業そのものがとてもユニークな取り組みで行っています。本校の情報・理工系プログラムはこうした背景もあり、ただ問題を解く従来型の授業ではなく、大学以降、実社会での本物の学問のように、チームでの学術的な議論に重きを置いています。実際に手を動かす実験や実証的なプログラムを多く設けていて、建築や土木への進学者も輩出しており、これからの実社会や大学が求めている、チームで実社会で活躍できる理工系女子を育てています。
文系から建築に進路変更した卒業生もいますが、理数系が得意な人はもちろん、「ものを作ってみたい」「挑戦したい」人はぜひ一緒に勉強しましょう。実社会と大学では、女性の理工系出身者やエンジニアが本当に求められています。それだけおもしろい仕事がたくさん待っていますので、ぜひ来て欲しいと思います。高2の「事業家実習」など、創造性と起業家精神を育むプログラムと組み合わさって、卒業生が広く活躍することを願っています。
この記事を読んでいる皆さんへのメッセージをお願いいたします。
岩城先生 本校では関心を持った物事に対して全力で楽しんでいる生徒たちの姿がいたる所で見られます。とりわけ、中学生はそういった素直さを持った年頃であるだけでなく、自分の「得意」を伸ばせる環境に恵まれています。ぜひとも本校まで足をお運びいただき、生徒たちがチャレンジ精神を発揮している様子をご覧になってください。
編集後記
現代の技術科は「材料と加工」「生物育成」「エネルギー変換」「情報」の4つに分かれています。公立校では科学技術科を設置する場合を除いて任意の科目となっており、瀧野川では独自設置科目としての創造性教育を実施しています。大学の総合型選抜入試に相性が良い教育内容として注目を集めることが予想されます。今後の躍進にご期待ください。
イベント情報
イベント名 | 日時 |
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授業体験(小学5~6年生) | 2024年9月7日(土) 13:30~15:30 |
デッサン教室(小学4~6年生) | 2024年9月7日(土) 13:30~16:30 |
あかつき祭(小学1~6年生) | 2024年9月21日(土)・22日(日) 10:00~16:00 |
学校説明会(小学3~6年生) | 2024年10月12日(土) 13:30~16:00 |
入試チャレンジ(小学5~6年生) | 2024年10月12日(土) 13:30~16:00 |
入試チャレンジ解説会(小学5~6年生) | 2024年10月19日(土) 13:30~16:00 |