親の学び場「聖塾(ひじりらぼ)」
大学時代に学んだことを伝えながら、生徒の学力向上を実感できる授業をしたくて教員になったという石飛先生が先導し、親の学び場となる「聖塾(ひじりらぼ)」が4年前に始まりました。以来、わが子の育て方にとどまらず、教育現場の変化や大学入試の未来に関心を持つ保護者を対象とした講座として、数多くの参加者を集めるようになりました。
聖塾開設の経緯をお聞かせください。
石飛先生:本校は若い教員が多く、近年は学校・保護者間のコミュニケーション方法に悩む様子が見られるようになりました。それは、日本社会でも世代間ギャップが生まれ始めたからに他ならず、同時に保護者心理も変わりつつあると考えていました。当然ながら、思春期に入ったわが子とどう接したら良いのか、そしてどう育てていくべきなのかを思いあぐねる保護者がおり、従来のように「本校は安心して過ごせる環境」と伝えるだけでは不十分なのではないかと感じるようになりました。
石飛先生:保護者には3つのタイプがあり、①会社の中間管理職のようにわが子を細かく指導するタイプ、②もう中学生だからと放任することで両者の心理的なズレが大きくなるタイプ、③友だち感覚で接することで親子の境界線があいまいになるタイプに分かれています。
このように、さまざまな保護者がいらっしゃいますが、その考えをおろそかにすることはできません。一方で、私学は知識を授けるだけでなく人生を導く役割を担うようになり、若い教員であっても教育のプロフェッショナルとして伝えるべきことがあります。そこで、私が代弁者となって両者の意見をすり合わせつつ、子育てについて考える会として聖塾が発足しました。結果として、互いに異なる視点から子育てを見つめ直し、教育の現状や指導現場の工夫に高い関心を持っていただくことにつながりました。
どのような講義が行われているのでしょうか。
石飛先生:年に5回開催しており、教育制度の変遷に沿った最新の話題を取り上げるようにしています。少子化の行く末や学問の細分化から大学入試の変更点に至るまで、そのテーマはさまざまです。参加いただいた方々からアンケートを取っていますが、「高校の新カリキュラム(探究など)を知らなかった」「学ぶ意欲を持たせたい」「最新の大学受験方法を知った」など、回答内容は多岐にわたっています。
保護者の生の声として、アンケート結果が気になります。
石飛先生:社会の縮図である学校に集う生徒の多様性や、思春期を迎えたわが子の変化に目を向けていなかったという声がありました。昔と違って、高校後半から反抗期が始まるような時代ですから、教員間の情報共有や統一された視点によって見守る体制を整えていること、さらには子離れするタイミングなどをお伝えしています。また、高校のカリキュラムが変わることへの不安が大きいという声も多く集まりました。日本が目指している教育の在り方や、シラバスだけでは分かりづらい学習意図を丁寧に説明することで、皆さまにはご納得いただいています。聖塾の講義を通して、保護者だけでなく教員側にも、本来あるべき教育の姿を再認識する機会にしてもらいたいと願っています。